神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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人魚の泉~海の魔法石~

協定

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 地上集落の集会所で、守護神の竜人と、集落のリーダー魚人のダレスと、アオ、ガーディと、五人での話し合いは、すんなりと進んだ。
 リーンはまだ、眠っているらしい…。
 水中都市と、カザンナ王国が、協定を結び、水中都市の管轄で、地上集落の事に関しては、カザンナ王国に一任すると言う話しになった。
 どうも水中都市管轄で、地上集落の管理まで手が行き届かないのと、勝手が違うのとで、困っていたらしい。
 ここぞとばかりに、色々と注文してきた。
 …ここまで大事おおごとになるとは思わなかった。
 こうなってくると、自分ではなく、正式に契約書を交わさなくてはならない…。
 ルークは直ぐに、ガーディに仮の書面を持たせて、伝令として王都に向かわせた。
 竜人のフールシアも、水中都市にある、地上集落の場所や小競り合いの事が分かる書面を、持ってくるように伝令を送った。
 ふと、リーンが目覚めたような気がした。
 チラリとフールシアの方を見ると、軽く頷いたので、やはり、目覚めたみたいだ。
 魔力が無いのに…昨日、リーンの体液…魔力を飲んだからだろうか…。
 それが、どんな行為か思い出して、顔が赤くなるのを感じた。
 今は、思い出すな…。
 決めなくてはいけない事が、たくさんある。
 待っている間に、貯水槽の話しや、ここまでの道路の話し、集落の入り口に検問など、今の生活を維持しながら、出来ることを話し合った。

 話し合いの場にはリーンは、来なかった。
 …来れないと、言うのもあるだろう。
 リーンが、言っていた。
 『国には関わってはいけない。バランスが崩れるから…』
 …関わって、しまったのだけれど…。
 
 それが、フールシアの条件の一つに入っていた。
『リーンを水中都市の名代とする』
 全集落には連絡をするが、突然、カザンナ王国の者が行って、協定を結んだと言っても、信じないだろうし、その点、リーンならば、守護神である竜人族フールシアの契約者なので、信用される。と、言うことだった。
 全集落には、竜本体とリーンの姿絵があるらしく、大丈夫とのことだった。
 どんな絵なのか見てみたい気もするが…。
 リーンの許可なく、そんな話を進めて良いのか迷ったが、それが通行手形になると言われれば、仕方ない事なのだろう。
 それと、もう一つ。
 ルークがもらった、海の魔法石。
 それが、フールシアが、承認した証なのだとか…。
 …やっぱり凄い魔法石なんだよな…。

 粗方あらかた、進む方向性が決まり、今日はお開きになった。


 ルーク達が馬車のあるテントに向かうと、リーンが一人、塩の結晶と、天水球てんすいきゅうを作っていた。
「お帰り」
 リーンは何もなかったかのように微笑んで、二人を迎えた。
「海の魔法石。もらったんだね」
「ああ」
 見せてはいないが、ソレを感じ取れるのだろう…。
 アオが夕食を作りながら、今日、フールシアと話し合った事や、カザンナ王国にガーディを使者として書面を送ったことも話した。
「…水中都市のフールシアの名代なんて、あり得ないよ…」
 リーンは、渋い顔をして、ルークを見る。
「俺に言われてもな…。それが通行手形だと言われてしまえば、ソレ以上何も言えない…」
 ルークは肩をすくめる。
 ここまで話が大きくなるとは思っていなかったから、ルークの扱える範囲内を越えてしまっていた。
 ガーディを使者として送ったから、誰か担当者が数日中にやって来るだろう。
「…後で、フールシアの所に行ってくる」
「…ソレは、明日にしような」
 ルークは慌てて、リーンを引き留めた。
 後でって、夜だぞ!
 昨日みたいなことになったら…。
 思い出して、直ぐ様、打ち消す。
「…わかった…」
 ルークはホッとため息をついて、海の魔法石について、どうしたらいいが相談した。
「承認の証だと言われても、無造作に持ち歩くのも不安だし、失くしそうで…」
「…持ちやすいように…小さくしてもらう」
 リーンはそう言う。
「そんなことしてもらって良いのか?」
 そんな気楽に頼んで良いものなのか?
「この際だよ。いろんな面倒な事をルークに押し付けたんだから、ソレくらいしてもらわないと!」
 何故か納得しかねないようで、リーンはイライラとしていた。
「俺は構わないんだが…。ソレで、水上集落の者達が平穏な生活が出きるなら…。貴重品の塩の結晶も手に入ることだし…」
 塩の結晶の売買も絡んだ取引になって、カザンナ王国にとっても、有益な事柄だが…。
 ルークとしては、引き継ぎをして終わるつもりだったが、水中都市の水上集落の担当に、ならざる終えない…。
 まあ、リーンが一緒に…と、言うのは、嬉しいことだが…。

 カザンナ王国の仕事として、リーンと一緒に旅の続きが出きることが、まだ、一緒にいられることが、正直、嬉しかった。


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