神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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人魚の泉~海の魔法石~

ルークの憂い 2

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 ルークはリーンを迎えに、地上集落に向かった。
 リーンを迎えに来たのだと住民に伝えると、しばらく待たされダレスがやってきた。
「こちらへ」
 そう言って、水上集落の桟橋に向かって歩き出し、ルークは後をついて行った。
 陸地から桟橋を渡り始めると、ダレスが突然、尋ねてきた。
「あなた様方はリーン様の事について、どれくらい知っておられるのですか」
 何が言いたいのだろう…。
「カザンナ王国の第三王子様ですので、あるじ様も悪いようには、なさらないと思いますが…」
「何が言いたいんだ?」
「…リーン様は、あるじ様に溺愛できあいされています。執着と言いますか…本当は手放したくないのですが、海の領域では生きれないので、渋々陸地に帰すのだと聞いています。ですから、陸地でリーン様の側に誰かが居ると言うことが、あるじ様の逆鱗に触れないか心配で…」
「だから、離れろと?」
「そうは言っておりません。あなた方の様子を見ていて、あなた様なら、危ういバランスを保てるのかと思い、お話ししているのです。…以前、あるじ様は執着のあまり、リーン様を殺してしまいそうになったとか…ですから、そうならないよう、お話ししているのです」
「…。」
「あなた様なら、あるじ様を止められると…」
 ダレスはどちらも守りたいのだと…言っている。
「俺には、守護神である水竜を止めれる力などない…」
 止めることの出きるような、力は無い。
「…それだけの保有魔力が有れば、対等だと思いますが…」
 ルークは足を止める。
「やはり、俺には魔力が有るのだな。それも、水竜と対等になるくらい…」
 リーンに言われた事を、ダレスも言うと言うことは、本当に魔力があるのだと、疑心暗鬼になっていた不安に、光が指す。
「…気付いてない…と言うか、使えないのですか?」
 ダレスが不思議そうに尋ねて来る。
「…リーンが言うには、封じられているらしい…」
「…でしたら、『魔女の森』シラミノの魔女王の元に行かれると。彼女は解読と構築が得意な筈。どんなものが封じられているのか見てくれますよ。…ただ、少し厄介な場所ですから、たどり着けるかは、不安ですが…」
 そんな話をしているうちに、水上集落の中でも一番大きい建物の前にたどり着いた。
 そしてダレスは、その建物の横に有る扉を示した。
「主様とリーン様の事をよろしくお願いいたします」
 そう言って、ダレスはもと来た桟橋を戻っていった。
 ルークは一呼吸おいて、部屋の戸を開けた。
 そこには、巨大なベッドとシンプルなテーブル、ソファーがあり、ベッドの上でリーンは身体を横たえていて、部屋に設置された『光玉』が、部屋の中を照らしていた。
 連日の疲れもあるのだろう。
 ぐっすりと眠っている寝顔は少し幼く、可愛いと感じることに抵抗が無くなってしまった。
 屋敷を出ていったリーンを追いかけると決めた時から、自分を偽ることを止めた。
 こんな寝顔を見ていると、愛しくて可愛い人なのだと、改めて思う。
「…リーン」
 ルークが声を掛けると、リーンはハッとして目を開けた。
「…。」
 まだ、ぼんやりとしているリーンの顔を覗き込む。
「リーン。まだ、寝ぼけているのか?」
 ルークはベッドに横たえているリーンの頬に触れた。
 …暖かい。
「…起きたよ…」
 リーンは身体を起こし、ベッドから降りた。
「疲れてたのかも…いつの間にか眠ってしまったみたいだ…」
「もう、夕食の時間だ。」 
「…うん」
 リーンはルークと一緒に部屋の外に向かう。
 …少し顔色が悪い。
「それにしても、この部屋、集落のどの家よりも、大きくてしっかりしているな…」
 ルークは部屋の中を見回す。
 水上集落の中で、一番大きい建物だよな…。
「…そうだね。この部屋の隣は、守り神である竜人族のフールシアを崇める神殿だから…」
「…。」
 守護神のフールシアの神殿…。
 ルークは何か言いかったが、何も言わず、部屋を出た。
 外に出ると、日は陰り、薄暗くなっていた。
「でも、どうしてココにいると、分かったんだ?」
 桟橋を渡りながらリーンは尋ねて来た。
「魚人のダレスが、多分、この部屋にいると言っていた」
「そうか…」
 二人は水上集落の桟橋を渡り、テントのある馬車まで戻って、夕食にした。
 夕食時、何があったのか話さないが、リーンは半分くらい上の空だった。
 
 そんなこともあり、今日は早めに就寝することにして、各自テントの中へ入った。
 ルークはどうしても気になって、リーンのテントの入口を開け、中に入った。
 身体を横たえていたリーンは驚いた顔でルークを凝視する。
「…なっ…」
「しぃ~っ」
 ルークは口に指を当てて、テントの幕を閉める。
 一人用のテントたが、ほとんどの荷物を馬車に乗せてあるので、ギリギリ二人が横になれる。
 ルークはリーンの隣に横になると、リーンの頬に触れた。
「何か、考え事してるだろ。…俺達に言えない事なんだろうけど…」
「…。」
 リーンは何も答えない。
「一緒いるときぐらい、頼って、甘えてくれると嬉しいんだが…」
 そう言ってルークは苦笑いをする。
 すると、リーンはルークの胸に顔を埋めてきた。
 ルークはリーンを引き寄せ、身体を密着させる。
 …暖かい。
 何か悩んでいるか、わからないが、まだ、言えないことなのだろう。
 ルークは引き寄せた手で、リーンの髪を撫でる。
 …このさわり心地のいい髪。
 いつまででも撫でていたい。
 リーンはそのままルークの温もりに包まれて、眠りについた。

 しばらくすると、そっとテントを覗きにアオとガーディが、顔を出した。
「…眠ったんですか…」
「ああ。」
「…なんか、思い詰めてるみたいだったけど…」
 アオが心配そうに、覗きこむ。
「話したくないこともあるさ…。いつか、話してくれると嬉しいな…」
 そう言って、ルークは微笑んでリーンの髪を撫でた。
 アオとガーディは、ため息をついて顔を見合わせた。
「おやすみなさい。ルーク様」
「おやすみ…」
 テントの幕を下ろした。
 

 
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