神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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人魚の泉~海の魔法石~

ルークの憂い 1

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 ルークは、自分がカザンナ王国の第三王子であることをあかし、協力することを伝え、設備や貯水槽の現状把握の為に、北の貯水槽の方へ、獣人族に案内してもらい現場へ向かった。
 本来なら、身分など証す必要は無いのだが、部外者が突然、協力すると言っても信用されない。
 ならばいっそう伝えて、協力体制に持っていった方が受け入れていれてもらえやすい。
 交流のない水上集落は海の領域と呼ばれる、水中都市の管轄だ。
 昨日の夜、四人で話した同じことを、魚人のダレスにも話した。
 兄であるカザンナ王国の第一王子が、整備などを担当しているので、状況把握の報告書と共に、連絡すれば対策をたててくれるかもしれない。
 ただ問題は、この集落の管轄が、水中都市のエリア内と言うことで、カザンナ王国としては、直ぐに手出し出来ず、許可が必要になってくる。と、話した。
 ダレスは、整備についてはあるじ様におうかがいを経ててみると言って、現場への視察の許可は出た。
 国の問題になってしまうが、閉鎖的な水中都市との交流の一欠片ひとかけらにでもなればいいとも思っていた。
 湖の辺りでは、リーンが説明しながら、アオと魚人達と共に『水球』から、少しずつ水を出す練習に明け暮れている。
 それを横目に、北の貯水槽のあった場所を目指した。

 流れてしまった北の貯水槽は、とても古い造りだった。
 たぶん、簡単な屋根付きの小屋だったのだろう。
 折れた柱と屋根がかろうじて残っている。
 聞けば、約二十年ほど前に作られて、整備や掃除などをしながら、使い続けていたそうだ。
 獣人達は、流された貯水槽を川下から抱えてきて、もとあった場所に置き、川から流れてくる水を引き込んで来て、貯水槽を洗い始めた。
「…。」
 かなり旧式だ。
 貯水槽を固定する場所も、杭や石などで固定されているが、不安定すぎる。
 ガーディを見ると、同じように思ったのか頷いた。
「聞いていいか。南の貯水槽もこれと同じような状態なのか?」
「…ココよりは後に作ったから、もう少し大きい建物の中に貯水槽を入れ、水を引き込んでいる」
 この感じでは、ある程度、道を整備して、場所を調査し、物資を運び、貯水槽の強化をして方がいいだろう。
 また大雨が降れば、同じように流れてしまう。
 南の貯水槽も確認した方がよさそうだ。

 一旦、集落に戻り、昼食を食べ、南の貯水槽へ向かった。
 建物の側には土の壁がて来ていて、周辺に足跡がたくさんあり、昨日の惨状があちこちに残っていた。
 こっちの建物は、まだ丈夫そうだが、それでも旧式の貯水槽で、年期が入っていた。
「こっちは、土砂を取り除くか、このまま土砂を利用して壁を作るかだな…」
「そうですね。少し補強して、魔法で壁にしてしまった方が土砂を取り除かなくてもいいし、物資をココまで運ばなくてもいいですからね…」
「兄上に相談だな」
 ルークはガーディと現場の建物のサイズを計り、その周辺の大体の状況を記録した。
 正式には、許可が出てから本職の方達が調査するだろう。
 ある程度の状態がわかり、集落に戻るとリーンの姿が見えなかった。
「アオ。リーンは?」
 『水球』から少しずつ水が出せるようになったアオは、水人に塩作りを教えてもらい、水人の子供達と競争して遊んでいた。
「水上集落の方にダレスさんと一緒に行きましたよ。ダレスさんは先に地上集落の方に戻ってますが…」
「…。」
 ルークは水上集落の方を見る。
 勝手に集落に入るわけにはいかない。
 ココは海の領域。
「夕食の時間になっても戻ってこなかったら、口実が出来て、迎えに行けますよ」
 アオはそう言って微笑む。
「…そうだな」
 リーンの事も心配だが、今、見てきた事の調査、報告書を作成しなくてはいけない。
 馬車の中に、折り畳みのテーブルを出し、ガーディと書類製作にあたった。
 昨日までの天気が嘘のように晴れていて、外にテーブルを出したいが、風で書類が飛ばされるのを覚悟しなくてはいけない。
 湖の側は突然、突風が吹く…。
 せっかく書いた書類を水で塗らしたくない…。
 
 書類をまとめ、辺りを見回すと、日は少し傾いていて、アオがいつもより早く夕食の準備に取りかかっていた。
 まだ、リーンは戻ってこない。
 ルークが馬車から降りて、背筋を伸ばしていると、アオがこちらに気付き、視線を向けてくる。
「そろそろ夕食の時間だから、リーンを迎えに行ってきてください」
 アオが鍋を掻き回しながら、ルークに言った。
 だから、早く夕食の準備を始めたのか…。
 夕食を口実に迎えに行く為に。
「…迎えに行ってくる」
 ルークは地上集落の方に向かって歩き出した。

 

 
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