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水中都市~フールシアの溺愛~ *リーンの過去編です*
迎え
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そろそろ、ココを離れなくてはいけないな。
ヒイロが迎えに来たのだ。
貯水槽の完成まで、時間はかかる。
最後まで居るわけにはいかない。
そんな事を思いながら、集落の住民との貯水槽計画を進めていた。
そこへ、いつもより早くフールシアが、慌てた様子でやって来た。
誰か、水中都市へ連絡したんだ…。
まあ、この集落の守護神だから、伝達が行ったんだろうけど…。
「貴様か!リーンを拐ったのは!」
隣に座っていたヒイロが、フールシアの姿を見て怒鳴り、ヒイロの腕の中に引き寄せられた。
ぎゅっと抱き締める力が強くて痛い…。
フールシアはこちらに近付いて来て、ヒイロを見下ろす。
これって…ちょっとヤバイ状況だよな…。
竜人のフールシアと、獣人のヒイロが争ったら、この集落ぐらい、簡単に吹き飛ぶ…。
リーンはヒイロの腕から抜け出し、ヒイロを見上げる。
「…正確には、人魚に拐われたんどけど…」
リーンが、そう言うと、フールシアが背後から腰を掴んでフールシアの腕の中に連れていかれた。
「おい!こら!離せ!」
その状況を見て、怪訝な顔をしたヒイロが質問してくる。
「…どういう事なんだ」
リーンはため息をつき、集まっていた住民に席を外してもらうように言い、集落の集会所には三人だけが残った。
「…。」
フールシアは腕の中から離してくれない…。
「…海藻の臭いはそいつか?」
ヒイロがフールシアをジロリと睨み付ける。
獣人だから、臭いには敏感で直ぐにバレている。
「…うん。『魔力の交合』をした…」
「ここへ来るとき、『杭の枝』がたくさん有ったから、まさかとは、思ったが…」
「…。」
「こいつを連れていくつもりか!」
フールシアがリーンを抱きしめる力を入れる。
「ちょっと痛いって!離せ!」
力は緩められたが、離してくれない…。
「当たり前だ!俺はリーンを迎えに来たんだからな!」
やっぱりそうだよな…。
「連れていかせない」
フールシアはヒイロを睨み付ける。
「だから、私は海の領域では、生きれないのを分かってるだろ!それに、ココに居るなんて言ってないぞ!」
「…。」
フールシアは困惑した顔でリーンを見下ろす。
腕の力が少し抜けたので、慌ててフールシアの腕の中から逃げ出し、ヒイロの側に来る。
「リーン。お前、またやったのか?」
ヒイロが警戒心をといて、あきれ顔でリーンを見る。
「何が?」
「…。それより、リーンは連れて帰る。『杭の枝』全部使っただろ?補充しないと不安だろうし…」
「そうだね。ココには使える枝が無いから、作れない…」
二人の親しげな様子を見ていたフールシアが口を開いた。
「…そいつは、何者だ」
リーンとヒイロは顔を見合わせる。
「…家族だよ。私の帰る場所」
ヒイロは嬉しそうに、リーンをぎゅっと抱き締める。
「俺の兄弟だよな~」
「だから、痛いって!」
ヒイロは兄のような者だ。
森の聖域から出れるようになった頃、面倒をかけて、助けてもらって、いつも側で見守ってくれている。
「…俺から離れるのか…」
「だから、何度も言っているけど、海の領域では生きれないんだって!」
この陸地がギリギリラインだ。
それに、私の生きる場所は、森の中…。
「今日はここに泊まるが、明日には連れて帰るぞ。せいぜい別れを惜しむんだな」
ヒイロがそう言うと、フールシアが近付いてきて、リーンを抱え上げ、集会所の外へと向かっていく。
「ちょっと降ろせよ!まだ、話し合いの途中だって!」
「こっちは俺に任せろ」
そう言ってヒイロは手を振る。
えっ!助けてくれないの!
「ヒイロ!」
ヒイロが迎えに来たのだ。
貯水槽の完成まで、時間はかかる。
最後まで居るわけにはいかない。
そんな事を思いながら、集落の住民との貯水槽計画を進めていた。
そこへ、いつもより早くフールシアが、慌てた様子でやって来た。
誰か、水中都市へ連絡したんだ…。
まあ、この集落の守護神だから、伝達が行ったんだろうけど…。
「貴様か!リーンを拐ったのは!」
隣に座っていたヒイロが、フールシアの姿を見て怒鳴り、ヒイロの腕の中に引き寄せられた。
ぎゅっと抱き締める力が強くて痛い…。
フールシアはこちらに近付いて来て、ヒイロを見下ろす。
これって…ちょっとヤバイ状況だよな…。
竜人のフールシアと、獣人のヒイロが争ったら、この集落ぐらい、簡単に吹き飛ぶ…。
リーンはヒイロの腕から抜け出し、ヒイロを見上げる。
「…正確には、人魚に拐われたんどけど…」
リーンが、そう言うと、フールシアが背後から腰を掴んでフールシアの腕の中に連れていかれた。
「おい!こら!離せ!」
その状況を見て、怪訝な顔をしたヒイロが質問してくる。
「…どういう事なんだ」
リーンはため息をつき、集まっていた住民に席を外してもらうように言い、集落の集会所には三人だけが残った。
「…。」
フールシアは腕の中から離してくれない…。
「…海藻の臭いはそいつか?」
ヒイロがフールシアをジロリと睨み付ける。
獣人だから、臭いには敏感で直ぐにバレている。
「…うん。『魔力の交合』をした…」
「ここへ来るとき、『杭の枝』がたくさん有ったから、まさかとは、思ったが…」
「…。」
「こいつを連れていくつもりか!」
フールシアがリーンを抱きしめる力を入れる。
「ちょっと痛いって!離せ!」
力は緩められたが、離してくれない…。
「当たり前だ!俺はリーンを迎えに来たんだからな!」
やっぱりそうだよな…。
「連れていかせない」
フールシアはヒイロを睨み付ける。
「だから、私は海の領域では、生きれないのを分かってるだろ!それに、ココに居るなんて言ってないぞ!」
「…。」
フールシアは困惑した顔でリーンを見下ろす。
腕の力が少し抜けたので、慌ててフールシアの腕の中から逃げ出し、ヒイロの側に来る。
「リーン。お前、またやったのか?」
ヒイロが警戒心をといて、あきれ顔でリーンを見る。
「何が?」
「…。それより、リーンは連れて帰る。『杭の枝』全部使っただろ?補充しないと不安だろうし…」
「そうだね。ココには使える枝が無いから、作れない…」
二人の親しげな様子を見ていたフールシアが口を開いた。
「…そいつは、何者だ」
リーンとヒイロは顔を見合わせる。
「…家族だよ。私の帰る場所」
ヒイロは嬉しそうに、リーンをぎゅっと抱き締める。
「俺の兄弟だよな~」
「だから、痛いって!」
ヒイロは兄のような者だ。
森の聖域から出れるようになった頃、面倒をかけて、助けてもらって、いつも側で見守ってくれている。
「…俺から離れるのか…」
「だから、何度も言っているけど、海の領域では生きれないんだって!」
この陸地がギリギリラインだ。
それに、私の生きる場所は、森の中…。
「今日はここに泊まるが、明日には連れて帰るぞ。せいぜい別れを惜しむんだな」
ヒイロがそう言うと、フールシアが近付いてきて、リーンを抱え上げ、集会所の外へと向かっていく。
「ちょっと降ろせよ!まだ、話し合いの途中だって!」
「こっちは俺に任せろ」
そう言ってヒイロは手を振る。
えっ!助けてくれないの!
「ヒイロ!」
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