神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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水中都市~フールシアの溺愛~ *リーンの過去編です*

嵐の後 1

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 目が覚めると、リーンの魔力は満ちていた。
 そして外の風の音も、だいぶん止んでいた。
 リーンはフールシアを起こさないようにベットから降りると、身体を清め、服を着て、テーブルの上に置いてある、獣人に取ってきてもらった、荷物の中からポーチを取り出す。
 ココで目が覚めたとき、獣人の一人が『風使い』の姿を見ることが出来たので、『風使い』に案内してもらって、荷物を取ってきてもらっていたのだ。
 中を確認して、腰につけ、外への扉を開いた。
 外はだいぶ明るくなっていて、風もだいぶ弱まっていた。
 雨も小雨になっていて、時期に上がるだろう。
 だが、ココからが問題だ。
 多く降りすぎた雨は大地を緩ませ、なぎ倒された木は支えることが出来ず、遅れて山を襲う…。
「『風使い』『水使い』力を貸して!」
 リーンの回りに水色のふわりとした髪を揺らしながら、『風使い』が姿を現しリーンの頬に触れる。
 足元の桟橋から、明るい紺色のストレートの髪をした『水使い』が顔を出し、リーンの足に触れる。
 リーンはポーチから魔法石を取り出し、右手で掲げる。
「『水球』!」
 魔法石を中心に透明の膜が出現し、地上集落の、水に浸かった家周辺の水が、竜巻のように立ち上がって吸い込まれていく。
 地上集落の少し低い位置にあった家が、床下浸水して水に浮いているのだ。
 リーンは水上集落から桟橋を渡り、地上集落に降りてくると、集落と山の境目にポーチから取り出した、『杭の枝』を差し、『つたのネット』を張り巡らせる。
 これで、多少の土砂くらいは、塞き止めてくれる。
 水に浸かった家の周囲の水を『水球』に吸い込ませ終わると、一旦閉じて、水辺に転がした。
 身長ほどある『水球』は、濁りのある土色で、中で渦巻いている。
 後の、所々、水没している場所は『水使い』に任せた。
 集落の集会所から様子を伺いながら、住民が出てきたので、リーンは近付いて聞いた。
「沢と樹木が倒れた場所はどこ!」
「…リーン様!」
 わらわらと出てきた住民は驚いていた。
 昨日の夜まで、ほとんど動けなかったのに、魔力に満ちているのが分かるのだろう。
 獣人が驚きを隠さず近付いて来た。
「…山の奥だ。…ただ…道が…」
「大丈夫。この子に…『風使い』に運んでもらうから」
 リーンは肩辺りでふわふわと浮かんでいる『風使い』に触れ、そう言って微笑んだ。
 獣人は頷き、服を脱いで獣体に、狼に姿を変えた。
「『風使い』彼を追って」
 『風使い』はリーンの腰を抱き上げ、リーンは肩に掴まり、ふわりと浮いた状態になる。
 狼の獣人は目を丸くして、凝視し、気を取り直して、山を見ると駆け出した。
 通常『風使い』は触れることは出来ない。
 ただ、魔力を与える事によって、それが可能になり、運んでもらうことが出来るようになるのだ。
 先導する狼を追って山の中を移動していた。
 大地が緩んでいる…。
 樹木が倒れた場所まで来ると、水の流れる音が響いていた。
「近くに川が有るのか?」
 ふわりと『風霊』が近付いて来て、『風使い』と話し始めた。
「川…近くに…有る。水が…増えてる」
「急がないといけないな…」
 リーンは根本からなぎ倒された木の側まで運んでもらい、ポーチから『杭の枝』を取り出して、差した。
 倒れた木の代わりに、ココを支えてもらう応急処置だ。
 『杭の枝』は大地に根をはり、緩んだ土を流れでないように、支えてくれる。
 手持ちの『杭の枝』だけでは足りない…。
 危険性の高い場所だけのつもりが、あちこち有りすぎる!
 『風霊』が近付いて来て、山の上の方を指差す。
「水が…来る」
 『風使い』がそう呟いた。
「上のから水が来ます!高いとこに登って!」
 リーンは狼の獣人に高いとこに登るように言うと、狼は慌てて人の姿に戻り、太めの木によじ登った。
 そして程なく、川の上流から勢いよく水が流れて来て、川を溢れさせ、その周辺の草や樹木を飲み込み、下流へと流れていく。
 ゴーッと音を立てて、その流れは収まりそうにない。
 川から溢れた水は、川から少し離れた、獣人が登った木の下まで、流れて来ていた。
 かなり広範囲に広がっている…。
 リーンは『風使い』に抱えられながら、上空から見ているしか出来なかった。
 こうなってしまうと、手出し出来ない…。

 すると、急に、川の水が手のひらサイズの丸い水滴となって、空中に浮き出し、次々と上空に登り始めた。
 
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