神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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水中都市~フールシアの溺愛~ *リーンの過去編です*

水上の嵐

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 ふと、何かの気配に意識が浮上し、目が覚めた。
 ゆっくりと目を開けると、見たことのない木の天井があった。
「…。」
 …どこだ…ココは。
 私は何をして…。
 ぼんやりとしていると、誰かが顔を覗き込み、唇に弾力のあるものが触れた。
 …誰だ?
 そのまま、口の中に動くものが侵入してきて、舌が絡まる。
「んっっ…。」
 息が出来なくなるくらい中を掻き回され、飲み込めない唾液が口から溢れ、息絶え絶えに覚醒し、力の入らない手で相手を押し返す。
「…んっ…はな…れ…んっ…ろ…」
 口からゆっくりと離れ唾液が糸を引く。
「はぁ…はぁ…」
 金色の目と視線が合う。
 …竜人のフールシアだ…。
 そうだ、あの無人島で魔力が尽きて、動けなくなったんだ…。
 だけど、ココは…風を感じる…『風霊』達がいる…。
「…もう、目が覚めないかと…」
 フールシアは手を伸ばし、リーンの頬に触れ撫でる。
「…言った…だろ。…私は…森でしか…生きられない」
「…だったらココに住め」
 フールシアは変な事を言ってきた。
 何を言っているのだ?
「…私にも、…帰る…場所が…ある」
「…。」
 沈黙を破るように、リーンのお腹が鳴った。
「…食事を用意させよう」
 そう言って、フールシアは部屋を出ていった。

 フールシアの様子が変だった。
 人の身体をもてあそび、快楽と苦痛に耐える姿を見て笑っていた、あの男とは違って見えた。
 毎日、夕方に姿を現し、フールシア自ら私に食事を与え、身体を拭い、添い寝していくのだ。
 絶対おかしい…。
 そんなことを思いながらも、リーンの身体は徐々に回復し、自分で歩けるようになった頃、湖を嵐が襲った。
「こちらに避難を!」
 水上集落にいたリーンは、獣人に抱えられ、陸地集落の集会所へ避難した。
 壁に寄りかかりながら、集会所に避難している水人族、獣人族、人族と、いろんな種族が寄り添っている様子を見ていた。
 これだけ種族が違うもの同士が、一ヶ所に集まって暮らしているのは、なかなか無い。
 どこでも、これくらい仲良く暮らしてくれれば良いのに…。
 そんなことを思いながら、強くなった風と雨を感じた。
 強い風と、叩きつけるような雨が集落を襲った。
 時折、ゴーッとすごい音と共に集会所は揺れ、子供達は震え親にしがみついていた。
 外の様子を見に行っていた獣人が、ずぶ濡れになって戻ってきた。
「沢の水場が壊された!」
「木々がなぎ倒されてる!下手すると、あの一帯、土砂崩れが起こるぞ!」
 そんな叫び声が集会所の中で響き、怯える子供達。
 そこへ、簡単な服を羽織ったフールシアがやって来た。
 …水上の部屋に水竜の姿でやって来て、人の姿になっても裸のままいたので、せめてズボンと上着を着るように言ったのが、何とか役に立っている。
 いくらこの集落の守り神として崇められていても、裸で人前をうろうろしてはダメだろう…。
 それにしても、この嵐の中を、泳いで来たのか?
 リーンの顔を見るとホッとして、微笑み近付いて来た。
 やっぱり、おかしい…。
 だが、それより魔力回復だ。
 嵐が収まった時、本来の私の役目を果たすためには、魔力が足りなさすぎる。
 不本意だか、水竜であるフールシアが一番魔力を持っている。
 今までに出会った誰よりも、強い魔力。
「…私に魔力をよこせ!」
 フールシアは、それがどういった意味か分からず、一瞬固まり、理解して微笑み、壁に寄りかかっていたリーンを抱き上げた。
「…あるじ様…」
「…大丈夫だ」
 フールシアは荒れ狂う嵐の中、水上集落の部屋に向かった。
 回りに防御の壁を作っているのか、風も雨も二人を避けて地上に降りそそいていた。
 部屋に入り、ベットに寝かされると、フールシアは服を脱ぎ捨て、リーンの上に覆い被さった。
「俺を受け入れてくれるのか」
「私に魔力をよこせと言ったんだ!…段階的にやれよ…枯渇している身体には、いっぺんには無理だ!」
 フールシアは嬉しそうにリーンに口付けた。
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