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水中都市~フールシアの溺愛~ *リーンの過去編です*
竜人族のフールシア 3
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無人島で、彼と過ごし始め、どれだけの時間が経ったのだろうか…。
何も無かった小屋の中は、ベットやテーブル、椅子が増え、床に淡い絨毯まで敷かれていた。
彼の意識が無いうちに、魚人達が荷物を運んで来たのだ。
それ以外にも、食事や部屋の掃除など、フールシアの身の回りをする者が、呼べばすぐにやって来た。
どれだけ身体を繋げても、彼の意志は落ちて来なかった。
日に日に、彼の力が入らなくなり、最後には眠ったまま動かなくなってしまい、焦りと動揺を生んだ。
どこを触っても呻き声すら上げず、身体はグニャリと力無く、されるがままになっていた。
かろうじて、息はしている。
ただ、目覚めないのだ。
「おい!どっかで見てるんだろう!『風使い』!こいつは何故、動かなくなった!」
時折、風の気配を感じていたので、あの時の『風使い』が、いるはず…。
『風使い』は恐る恐る、木々の間から顔を覗かせ答えてきた。
「…森の…魔力が…尽きた。…だから…動けない…」
「森の魔力だと?!」
そう言えば、何か言ってた…。
「…水人族、…水が…無いと…動けない…同じ…」
「…どうすれば、目を覚ます」
…あの、揺るがない緑色の瞳で睨んで欲しかった。
どうかしている…。
『風使い』は、心配そうに薄布を着た彼を見つめ、答えた。
「…森の魔力、…大地の魔力、…吸収すれば…目覚める。…でも、…時間かかる…」
その答えを聞き、フールシアは青年を水泡、透明な球体で包み、竜体に姿を変え、その水泡を手で掴むと、海中に潜った。
陸地だと!森の魔力だと!
唯一、海の領域で、陸地に集落があった。
人魚の泉と呼ばれ、フールシアの名を関した集落で、魚人族と他族の間に生まれ、水中都市へは行くことの出来ない者達が多く住んでいる集落だ。
ただ、そこは海ではなく、海と繋がった陸地の、湖のほとりにあった。
フールシアはソコヘ向かって泳いだ。
陸地に住めば目覚めるのか?
あの集落に、森の魔力が有るのか?
不安に思いながらも唯一の方法として、彼を連れて行くしかなかった。
陸地にある集落の水面に浮上して、水を滴らせ、陸地に上がった。
住民達は竜の姿に驚き、崇め始めた。
『部屋を用意しろ。この者を住まわせる場所だ』
そう言って、眠る青年を竜の手で、そっと抱えた。
魚人達は慌てて集落の獣人達と共に、水上集落の神殿の横にある集会所を改装し始めた。
内部を綺麗に掃除して、中にベットやテーブルなど主だった物を運び込んでいた。
フールシアは湖のほとりの、少し木の影になる場所へ座り、しっぽを湖に浸け、彼を自分にもたれ掛かれるように寝かせた。
『…。』
これだけ移動して、騒いでいてもピクリとも動かない。
時折、呼吸だけは確認したくなるくらいだ。
集落の住民が座り込んでいるフールシアのもとに、何人も崇めに来たり、食事や飲物を捧げにやって来た。
それを食しては、眠る彼を眺めていた。
…漆黒の髪が彼の頬にかかり、耳元の金色の耳飾りがキラリと光った。
両耳に付けられた耳飾りは、外れないよう魔法で止まっているので、彼にとって大切な物なのだろう。
『…。』
フールシアは彼の両足に、魔法で『束縛の鎖』を付けた。
どこからでも、彼のいる場所が把握できるように、他の水人族に取られないように、一種のマーキングを施した。
普段は見えないが、海の領域に入れば、魔法が反応して誰の所有物かが分かるものだ。
…ココまで執着して、『束縛の鎖』まで付けるのは初めてだった。
…早く目覚めろ!
…その強い眼差しで俺を見ろ!
日が傾き始める前に、部屋の用意が出来たと呼びに来たので、フールシアは人の姿に戻り、彼を抱えて水上の部屋へと入っていった。
ずっとココに居るわけにはいかないので、集落の住民に彼の様子を見てもらい、海底へと戻っていった。
毎日、執務が終わると、様子を見に来ているが、一向に目覚めない。
いつになったら目覚めるんだ!
フールシアは今までに無い、不安と苛立ちを覚えた。
何も無かった小屋の中は、ベットやテーブル、椅子が増え、床に淡い絨毯まで敷かれていた。
彼の意識が無いうちに、魚人達が荷物を運んで来たのだ。
それ以外にも、食事や部屋の掃除など、フールシアの身の回りをする者が、呼べばすぐにやって来た。
どれだけ身体を繋げても、彼の意志は落ちて来なかった。
日に日に、彼の力が入らなくなり、最後には眠ったまま動かなくなってしまい、焦りと動揺を生んだ。
どこを触っても呻き声すら上げず、身体はグニャリと力無く、されるがままになっていた。
かろうじて、息はしている。
ただ、目覚めないのだ。
「おい!どっかで見てるんだろう!『風使い』!こいつは何故、動かなくなった!」
時折、風の気配を感じていたので、あの時の『風使い』が、いるはず…。
『風使い』は恐る恐る、木々の間から顔を覗かせ答えてきた。
「…森の…魔力が…尽きた。…だから…動けない…」
「森の魔力だと?!」
そう言えば、何か言ってた…。
「…水人族、…水が…無いと…動けない…同じ…」
「…どうすれば、目を覚ます」
…あの、揺るがない緑色の瞳で睨んで欲しかった。
どうかしている…。
『風使い』は、心配そうに薄布を着た彼を見つめ、答えた。
「…森の魔力、…大地の魔力、…吸収すれば…目覚める。…でも、…時間かかる…」
その答えを聞き、フールシアは青年を水泡、透明な球体で包み、竜体に姿を変え、その水泡を手で掴むと、海中に潜った。
陸地だと!森の魔力だと!
唯一、海の領域で、陸地に集落があった。
人魚の泉と呼ばれ、フールシアの名を関した集落で、魚人族と他族の間に生まれ、水中都市へは行くことの出来ない者達が多く住んでいる集落だ。
ただ、そこは海ではなく、海と繋がった陸地の、湖のほとりにあった。
フールシアはソコヘ向かって泳いだ。
陸地に住めば目覚めるのか?
あの集落に、森の魔力が有るのか?
不安に思いながらも唯一の方法として、彼を連れて行くしかなかった。
陸地にある集落の水面に浮上して、水を滴らせ、陸地に上がった。
住民達は竜の姿に驚き、崇め始めた。
『部屋を用意しろ。この者を住まわせる場所だ』
そう言って、眠る青年を竜の手で、そっと抱えた。
魚人達は慌てて集落の獣人達と共に、水上集落の神殿の横にある集会所を改装し始めた。
内部を綺麗に掃除して、中にベットやテーブルなど主だった物を運び込んでいた。
フールシアは湖のほとりの、少し木の影になる場所へ座り、しっぽを湖に浸け、彼を自分にもたれ掛かれるように寝かせた。
『…。』
これだけ移動して、騒いでいてもピクリとも動かない。
時折、呼吸だけは確認したくなるくらいだ。
集落の住民が座り込んでいるフールシアのもとに、何人も崇めに来たり、食事や飲物を捧げにやって来た。
それを食しては、眠る彼を眺めていた。
…漆黒の髪が彼の頬にかかり、耳元の金色の耳飾りがキラリと光った。
両耳に付けられた耳飾りは、外れないよう魔法で止まっているので、彼にとって大切な物なのだろう。
『…。』
フールシアは彼の両足に、魔法で『束縛の鎖』を付けた。
どこからでも、彼のいる場所が把握できるように、他の水人族に取られないように、一種のマーキングを施した。
普段は見えないが、海の領域に入れば、魔法が反応して誰の所有物かが分かるものだ。
…ココまで執着して、『束縛の鎖』まで付けるのは初めてだった。
…早く目覚めろ!
…その強い眼差しで俺を見ろ!
日が傾き始める前に、部屋の用意が出来たと呼びに来たので、フールシアは人の姿に戻り、彼を抱えて水上の部屋へと入っていった。
ずっとココに居るわけにはいかないので、集落の住民に彼の様子を見てもらい、海底へと戻っていった。
毎日、執務が終わると、様子を見に来ているが、一向に目覚めない。
いつになったら目覚めるんだ!
フールシアは今までに無い、不安と苛立ちを覚えた。
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