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水中都市~フールシアの溺愛~ *リーンの過去編です*
渡りの『風使い』
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何とか、地上に出ることは出来たが、ココからが問題だ。
ココがどういった場所なのか、確認しなくてはいけない。
火山の噴火口の様な、出口の周りは、木々で囲まれていた。
そこから外を眺めると低い木々や草が覆い繁っていて、すぐ前は、波打ち際だった。
「…。」
リーンは草を踏みしめ、少し下り、海に出ると、全体がどうなっているのか確認するため、波打ち際を歩き出した。
出てきた穴のある場所と海までの間には、低い木々があり、丘のように少し高くなっているが、後は何もない…。
しばらく歩いて、あっという間に一周まわってしまい、元の場所に戻ってきていた。
…ココは無人島だ。
それも、海の真ん中にあり、見渡しても島影は見えない。
答えてくれないだろうが、取り敢えず呼んでみた。
「『風霊』『水霊』」
…やはり、返事はない。
まだ、海の領域だからか…、だったら…。
「…渡りの『風使い』いないのか?」
リーンは空に向かって声をかけた。
渡りの『風使い』は、陸地だけでなく、海の領域にも風を送っている。
ただ、陸地から離れすぎていると、リーンを知っている彼らにさえ、声が届かない。
しばらくすると『風使い』が、姿を現した。
「呼んだ?」
薄い水色のふわりとした髪を揺らし、リーンの周囲に『風使い』が風を送る。
「よかった。誰も気付いてくれないかと思った…」
リーンはホッとして、微笑んだ。
「ココ…遠い…。海の領域…魔力…弱い…」
弱々しく話す『風使い』に手を触れさせ、少しの魔力を送る。
「ごめんね。…私がいた陸地に荷物が置いたままなんだ。取ってこれないだろうから、近くの洞窟か『宿り木』の所に持っていって欲しいんだけど、出きるかな」
あのまま、残っている事を祈る。
カバンの中には貴重な魔法石や、魔法を掛けた魔道具などが入っているので、無くすわけにはいかない。
「…行けば…分かる…」
よかった…。
「カバンの中にある魔法石を使えば良いから、お願い」
普通、『風使い』が、物体を移動する事は無理だ。
だが、魔法石の力を借りると、一時的だが触れる事が出きるようになる。
その分、魔力も使うのだが…。
「…リーンは…どうする…」
『風使い』は、不安そうにリーンに触れてくる。
「私は…」
リーンがそう言いかけたとき、海からザバーンと、勢いよく水飛沫が上がり、海中から何かが飛び出して来た。
深い紺色の…竜…水掻きがあるから水竜だ!
背丈の倍ほどはある巨大な竜は、水を滴らせながら、海からゆっくりと歩いて来る。
何でこんな所に水竜が来る!
『風使い』は怯えてリーンにしがみつく。
水竜は身体を震わせ水気を震い落とすと、じろりと金色の瞳でこちらを睨み付け、近付いてきた。
「…。」
海から上がり、波打ち際まで来ると、水竜の姿が小さくなって、人の姿に変わった。
「!?」
水底を思い出すような長い紺色の髪を水滴で濡らし、金色の目をしたフールシアだった。
「なぜ部屋を出た!」
怒りに満ちた声だった。
「…『風使い』…行って…」
震える『風使い』を外へ逃がすと、フールシアはリーンの腕を掴んできた。
「つっ…」
…強く握りすぎだ!
「…私は森の中でしか息が出来ない!ココでは動けなくなる!」
リーンは半分諦めて、ため息を付いた。
海の領域で、水竜から逃げられるわけがない。
フールシアに抱き抱えられ、木々のある無人島の出口の穴の方に連れていかれた。
そこには、木々に隠れて小さな木で出来た小屋があり、扉も何もない、雨を凌ぐだけの建物があった。
その小屋に入ると、リーンは床に下ろされ、フールシアにのし掛かられる。
「逃げる気が無くなるくらい、抱いてやる!」
「つっ…!」
…移動でかなりの魔力を使った。
私はどこまで、耐えれるだろうか…。
リーンは意識を失い、目が覚めると、再び挑まれて、意識を飛ばす。
間に水や食事を口移しで食べさせられ、また、挑まれて、意識を飛ばす…。
その繰り返しだった。
だから、どれだけの時間が過ぎ去ったのか、わからない…。
そろそろ、限界に来ている。
…魔力が…尽きる…。
ココがどういった場所なのか、確認しなくてはいけない。
火山の噴火口の様な、出口の周りは、木々で囲まれていた。
そこから外を眺めると低い木々や草が覆い繁っていて、すぐ前は、波打ち際だった。
「…。」
リーンは草を踏みしめ、少し下り、海に出ると、全体がどうなっているのか確認するため、波打ち際を歩き出した。
出てきた穴のある場所と海までの間には、低い木々があり、丘のように少し高くなっているが、後は何もない…。
しばらく歩いて、あっという間に一周まわってしまい、元の場所に戻ってきていた。
…ココは無人島だ。
それも、海の真ん中にあり、見渡しても島影は見えない。
答えてくれないだろうが、取り敢えず呼んでみた。
「『風霊』『水霊』」
…やはり、返事はない。
まだ、海の領域だからか…、だったら…。
「…渡りの『風使い』いないのか?」
リーンは空に向かって声をかけた。
渡りの『風使い』は、陸地だけでなく、海の領域にも風を送っている。
ただ、陸地から離れすぎていると、リーンを知っている彼らにさえ、声が届かない。
しばらくすると『風使い』が、姿を現した。
「呼んだ?」
薄い水色のふわりとした髪を揺らし、リーンの周囲に『風使い』が風を送る。
「よかった。誰も気付いてくれないかと思った…」
リーンはホッとして、微笑んだ。
「ココ…遠い…。海の領域…魔力…弱い…」
弱々しく話す『風使い』に手を触れさせ、少しの魔力を送る。
「ごめんね。…私がいた陸地に荷物が置いたままなんだ。取ってこれないだろうから、近くの洞窟か『宿り木』の所に持っていって欲しいんだけど、出きるかな」
あのまま、残っている事を祈る。
カバンの中には貴重な魔法石や、魔法を掛けた魔道具などが入っているので、無くすわけにはいかない。
「…行けば…分かる…」
よかった…。
「カバンの中にある魔法石を使えば良いから、お願い」
普通、『風使い』が、物体を移動する事は無理だ。
だが、魔法石の力を借りると、一時的だが触れる事が出きるようになる。
その分、魔力も使うのだが…。
「…リーンは…どうする…」
『風使い』は、不安そうにリーンに触れてくる。
「私は…」
リーンがそう言いかけたとき、海からザバーンと、勢いよく水飛沫が上がり、海中から何かが飛び出して来た。
深い紺色の…竜…水掻きがあるから水竜だ!
背丈の倍ほどはある巨大な竜は、水を滴らせながら、海からゆっくりと歩いて来る。
何でこんな所に水竜が来る!
『風使い』は怯えてリーンにしがみつく。
水竜は身体を震わせ水気を震い落とすと、じろりと金色の瞳でこちらを睨み付け、近付いてきた。
「…。」
海から上がり、波打ち際まで来ると、水竜の姿が小さくなって、人の姿に変わった。
「!?」
水底を思い出すような長い紺色の髪を水滴で濡らし、金色の目をしたフールシアだった。
「なぜ部屋を出た!」
怒りに満ちた声だった。
「…『風使い』…行って…」
震える『風使い』を外へ逃がすと、フールシアはリーンの腕を掴んできた。
「つっ…」
…強く握りすぎだ!
「…私は森の中でしか息が出来ない!ココでは動けなくなる!」
リーンは半分諦めて、ため息を付いた。
海の領域で、水竜から逃げられるわけがない。
フールシアに抱き抱えられ、木々のある無人島の出口の穴の方に連れていかれた。
そこには、木々に隠れて小さな木で出来た小屋があり、扉も何もない、雨を凌ぐだけの建物があった。
その小屋に入ると、リーンは床に下ろされ、フールシアにのし掛かられる。
「逃げる気が無くなるくらい、抱いてやる!」
「つっ…!」
…移動でかなりの魔力を使った。
私はどこまで、耐えれるだろうか…。
リーンは意識を失い、目が覚めると、再び挑まれて、意識を飛ばす。
間に水や食事を口移しで食べさせられ、また、挑まれて、意識を飛ばす…。
その繰り返しだった。
だから、どれだけの時間が過ぎ去ったのか、わからない…。
そろそろ、限界に来ている。
…魔力が…尽きる…。
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