神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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水中都市~フールシアの溺愛~ *リーンの過去編です*

光の蝶 *

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 気が付くと、リーンは寝台に身体を横たえていた。
 身体は拭われ、ベッドのシーツも変えられていた。
「…つっ」
 身体を起こし、腰に痛みを感じた。
 好き放題ヤリやがって…。
 あの後、男が満足するまで、貪り尽くされたのだ。
 回復魔法がかけられているから、じきに身体のダルさは元に戻ってくる。
 リーンはベッドを降りて、椅子に置かれているローブを羽織、部屋の中を探索した。
 部屋には大きなテーブルと椅子が四脚。
 柔らかい絨毯が敷かれ、身体を横たえられるほど長いソファーが置いてあった。
 大きめの、たぶん外への扉のノブを回すが、鍵が掛かっていて開かない。
 端から順番に部屋を覗いていくと、手洗い場。大きめのシャワールームがあった。
 そして気になった、壁一面の大きくて長いカーテンを開けると、そこには、海底が見える巨大な窓だった。
 色とりどりの魚が泳ぎ、海藻が揺れ、遥か上空に水面が揺れているのがわかる。
 海底とはいえ、日が昇れば光が届くくらいの、あまり深すぎない位置に有りそうだ。
 こんな状況でなければ、海の中を眺めて楽しめるのに…。
「海底…なんだよな…」
 リーンは窓に手を付け、海底を見ていると、ガチャリと音がして、開かなかった扉が開き、魚人ぎょじんの男が入ってきた。
「目が覚めたようだな。食事を用意した」
 そう言って、料理を乗せたワゴンを廊下から押してくる。
 リーンは魚人の方を向き、睨み付けた。
「どう言う状況か、説明してくれ!」
 なぜ、連れてこられて、あの男の相手をしなくては、いけなくなったのか、説明して欲しい!
 魚人の男は、黙々とテーブルに料理を並べ、水差しを置くと、リーンの方を向いた。
「…貴方は、この水中都市のあるじ、フールシア様に献上されたのです。このまま、ココで主をお慰めて頂くことになります」
「はっ?…献上って…勝手に連れてきて、それを強制するのか?」
「…。この部屋はご自由にお使いください」
 そう言って、部屋を出ていこうとする。
「もといた場所に戻せ!」
「私にはその権限はございません」
 そう言って、部屋を出ていった。
「…くそっ…」
 水中都市のあるじ、フールシアに献上だと!
 思い当たるのは、…あの人魚達か…。
 …満月の海で、人魚に出会うと、海底に連れていかれる。
 そんな話しは聞いていた。
 まさか、あの湖が海底と繋がって、いたなんて思いもしない。
 戻ったら、満月は湖に、近付かないよう警告をてしておかないと、人魚に拐われてしまう。
 こうなったら仕方がないので、逃げる算段をしないと…。
 森から離れ過ぎているので、あまり時間がない。
 リーンはとりあえず、出された食事、野菜スープとサラダ、平らなパンをいただき、シャワールームに入った。
 蛇口を捻ると、水が降り注いできて、しばらく待ってもお湯に変わらなかったので、ため息をついた。
「…やっぱり、水だよな…」
 期待はしていなかったが、やはり水しか出てこない。
 魚人が多いみたいだから、お湯は流石に出てこないだろう…。
 身体を拭われていたとはいえ、身体の奥の方を洗い流したかった。
「んっ…っ…」
 ゆっくりと指を射し込み、引き抜くと、ドロリとしたモノが流れ出てきた。
 何度か繰り返し、中を洗う。
 リーンはため息をついて、シャワールームから出ると、タオルで水気を拭った。
「『風霊ふうれい』」
 リーンはいつものように、声をかけるが反応はない。
「…。そうだった…。ココは海の領域…」
 リーンはタオルで濡れた髪を拭いた。
 いつもなら、風霊が風で髪を乾かしてくれる。
 それに、慣れてしまって、つい、声をかけてしまった。
 リーンはローブを羽織、腰に紐を縛ると、ベットに寝転がり考えた。
 どこまで魔法が使える…。
 風霊と水霊は、使えなかった。
 属性系がダメなら、創作系なら使えるだろうか…。
 だったら…。
 リーンは身体を起こし、右手を掲げた。
「『光のちょう』」
 ふわりと、光る蝶々がリーンの手のひらから現れ、部屋の中をヒラヒラと漂った。
 羽を広げると指の長さくらいの、ほのかに光る薄いピンク色の蝶々。
 これなら使えるんだな…。
 ほっとして微笑み、光の蝶をいくつも出した。
「これで内部探索だ」
 光の蝶々は部屋の中をうろうろと羽ばたかせ、時折テーブルや壁に止まったりして、じっとして、しばらくすると、また、ふわふわと飛び回る。
 リーンの作った光の蝶々は独自に動き、部屋の中を舞う。
「扉がひらいたら、隙間から一匹づつ外に出て、出口を探してきてね」
 せめてもの慰めに、蝶々がふわふわとリーンに触れてくる。
 …今の私の癒しだ。
 光の蝶々と戯れていると、戸が開き、散々リーンの身体をむさぼった、あの男がやって来た。
 光の蝶々が離れていき、テーブルや椅子にじっと止まっている。
 男にあごを掴まれ、上を向かされ、金色の目と、リーンの緑色の目が合う。
「壊すのではないかと思ったが、もう動けるのだな。…回復魔法を掛けているのか?」
「もといた場所に戻せ!」 
「お前は俺に献上されたモノだ。簡単に帰すわけにはいかない」
 そう言って、リーンの唇に口付けてくる。
「手加減しなくても良いみたいだな」
 あれで、手加減してたのかよ!
 男はリーンをベットに押し倒し、のし掛かってきた。
「その強い眼差しで睨んでくると、誘っているみたいに、ゾクゾクする」
「変わり者!」
 睨まれて発情するなんて、何考えているんだ!
 男はニヤニヤと笑いながら、ローブの中に手を入れてきて、太ももを撫でてくる。
「つっ…」
 リーンは顔を歪めた。
 触られただけで、身体がゾクゾクする。
 男はリーンの耐える表情を眺めながら、萎えているモノには触れず、楽しそうに内腿を撫でる。
「今日、どんな趣向を楽しもうか」
 意地悪そうな笑みを浮かべてリーンを見つめる。
 リーンがキッと睨み付けると、指の腹で、萎えているモノの付け根から先端へ、なぞられた。
「んっ…っ…」
 リーンは身体の中を走る、ゾクリとしたものに耐える。
 男はそれを見て、微笑んだ。
「たまらないな…」


 
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