神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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水中都市~フールシアの溺愛~ *リーンの過去編です*

魚人族の水泡

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 気が付くと、洞窟のような所で、下半身だけが水に浸かり、打ち上げられたかのように、身体を横たえていた。
 ゲホゲホ…っと、むせ返り、呼吸を整える。
 少し水を…海水を飲んでしまったみたいだ。
 リーンは身体を起こし、水から上がる。
 身体が重い…。
 水中に長時間、居たから仕方がない…。
 服が無いので心許こころもとないが…。
「『水霊』!『風霊』!」
 リーンが声をかけるが反応がない。
 いつもの森の領域とは違う…。
 チャポンと水音がして、水場を見ると、水面から人魚達が顔を覗かせていた。
「…どこへ連れていこうと言うんだ!」
 人魚は答えない。
 もしかして、逃げないように見張っているのか?
 リーンは諦め、ゴツゴツとした洞窟の奥へと進む。が、岩の壁が有るだけで、出口はない。
 だが息が出きるのだから、どこかに隙間が有るはず…。
 この形状から言うと、水の浸食によって削られできた、地上に近いところに有る洞窟だろう。
 そんなことを思って洞窟内部を歩いていると、背後で、ザバンと、大きな水音がして振り向いた。
 今度は魚人が水中から現れた。
 青銀の髪に、ヒレの耳。手や身体に鱗が少し見え、ズボンを履いた筋肉質の魚人の男だ。
 魚人が近付いてきて、手に持っている丸い透明な物に入っていた物を、差し出してくる。
 羽織る物のようなので、それを受け取り丈の長いローブを羽織った。
 何も着てないよりは、少し落ち着く。
「『水泡すいほう』」
 行きなりかよ!
「ちょっと!」
 リーンの戸惑いなど無視され、透明な球体に包まれる。
 球体の壁は弾力性があり少し柔らかい。
 魚人はリーンを包んだ巨大な透明の球体を転がして、人魚のいる水中に浮かせた。
 中にいたリーンはバランスを崩し、中で座り込む。
「つっ…!」
 水中で待っていた人魚達は、二人で球体の両脇を持ち、水中に潜った。
 どこへ連れて行くきだ!
 さっきの魚人の男も潜ってきて、人魚達を誘導するように、前を泳ぐ。
 薄暗い水中洞窟の中を進み、前方に微かに光が見えてきた。
 その光の中に入り、眩しくて目を細める。
 目が順応し、辺りを見回して驚いた。
 水中に有る都市だ!
 巨大な透明の膜に覆われて、中に幾つものいろんな建物が見える。
 周りを魚達が泳ぎ、本で見た、ワカメや珊瑚、海藻などが辺りを埋め尽くしている。
 …ココは海底なのだ…。
 振り向くと岩場に巨大な穴があり、そこから出てきたのだろう…。
 と、言うことは、あの湖と、この海底に有る水中都市は繋がっていると言うこと…。
 背筋がゾワリとする。
 …森から離れすぎている。
 力が抜けていく…。
 この中の空気が少なくなってきたのか、身体に力が入らない…。
 身体を横たえ、もう、成り行きを見ているしか出来なかった。
 人魚達は、水中都市の下の方に入り込み、中への入口に向かっているのだろうか。
 水面が近くで揺れている…。
 魚人が先に水面に出て、人魚も水面に顔を出し、球体で包まれたリーンを水面に引き上げた。
 どうやら溜め池のような、出入口みたいだ。
「…。」
 中は空気が有るのか、リーンを包んでいた透明の球体が、上部から消えていった。
 かろうじて、意識は有るが、身体が動かない…。
 …ココは地上に比べて、空気が薄い…。
 何とか保っていた意識が、遠退いていく…。
 さっきの魚人と、誰かが何か話しているが、内容が耳に入ってこない…。
 もう、…目の前が…暗い…。
 …リーンは恐怖を感じ、脳裏に仲の良い、獣人族の顔が浮かんだ。
 …助…けて……ヒ…イ…ロ…。
 リーンは再び意識を失ってしまった。


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