神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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人魚の泉~水上集落~

水上集落の絵画

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 神殿の中に入ると早速、ダレスが真剣な眼差しで質問してきた。
「貴方はリーン様ですね。フールシア様との契約者…」
「…。」
「いつも、お一人で旅をされていると、聞いていたので、一瞬、迷いました。しかし、見間違いない…。その絵姿と同じ…」
 そう言って、ダレスが壁に視線を向けたので、リーンもその視線を追って、壁に掛けられている絵画を見た。
「!!」
 リーンは、目を見開き茫然と見つめてしまう。
「何で…こんなものが…」
 壁に掛けられた巨大な絵には、樹木の木陰で尻尾を水に浸ける竜と、黒髪の青年が薄布を羽織って、丸まって眠っている姿が、描かれていた。
 目を閉じているが、漆黒の髪がバラけて、耳元の金色の耳飾りがハッキリと見える。
 問題なのは、それが、竜人族のフールシアの本体である、竜の姿に寄りかかって、眠っている姿なのだ。
「…それは貴方だと、認めますね?…リーン様」
「…。」
 驚きで、返事が出来なかった。
 いつだ!
 …アイツが竜の姿を見せたのは、一番最初の時だけ…。
 水中都市から脱出して、地上の無人島にたどり着いたとき、海から追いかけて来たフールシアが、竜の姿をしていたので、すごく驚いたのを覚えている。
 だが、こんな風に眠った覚えはない!
 …記憶が…意識が無いだけか…?
「…この絵は、再び貴方がココヘ来たとき、誰でも分かるように、描かれたものです。そして、水中都市への報告も、私達の義務なのです」
 ダレスは淡々と話す。
「フールシアに連絡したのか…」
 戸惑いを隠せなかった。
 ココに居たのはかなり前の事だ。
 だからか疑問に感じても、気付かれないと思っていたのに…。
 こんな風に、描かれているなんて思いもしなかった。
「主様には、貯水槽と土砂崩れの件と共に、ご報告しました。直ぐには動けないそうで、近いうちに連絡が来ます」
「…。」
 湖で練習するアオ達の笑い声が、微かにココまで届き、ダレスはチラリと外を見て尋ねる。
「…彼らは、知らないのですね。貴方が…」
「それ以上、言うな」
 …昔の事とはいえ、ルークには、知られたくない。
「…神殿に隣接する部屋は貴方が暮らしていた時のままです。ご自由にお使い下さい」
 ダレスはそう言って、神殿を出て行った。
 リーンは壁に掛けられた絵画を見る。
「…何で、私なんだ…」
 絵画の中で、竜の姿になったフールシアが愛しそうに、眠っている青年の姿を見て、微笑んでいる。
 水中都市から脱走したからか、面白そうに、私の嫌がる事ばかりして、笑っていたくせに、何で意識のない時は、優しく微笑む!
 リーンは隣接する隣の部屋の戸を開けると、巨大なベッドとシンプルなテーブル、ソファーがあった。
 以前と変わらぬまま、清潔に整えられている。
 …いつ来ても使えるように…集落の住民が管理してくれているのだろう…。
 リーンはベッドに座り、コロンと横になる。
 塩の香りと…波の音が眠りを誘う…。
 …リーンは目を閉じ、フールシアの契約…アイツの我儘わがままを思い出していた。


 
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