神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
48 / 462
人魚の泉~水上集落~

水上集落の絵画

しおりを挟む
 神殿の中に入ると早速、ダレスが真剣な眼差しで質問してきた。
「貴方はリーン様ですね。フールシア様との契約者…」
「…。」
「いつも、お一人で旅をされていると、聞いていたので、一瞬、迷いました。しかし、見間違いない…。その絵姿と同じ…」
 そう言って、ダレスが壁に視線を向けたので、リーンもその視線を追って、壁に掛けられている絵画を見た。
「!!」
 リーンは、目を見開き茫然と見つめてしまう。
「何で…こんなものが…」
 壁に掛けられた巨大な絵には、樹木の木陰で尻尾を水に浸ける竜と、黒髪の青年が薄布を羽織って、丸まって眠っている姿が、描かれていた。
 目を閉じているが、漆黒の髪がバラけて、耳元の金色の耳飾りがハッキリと見える。
 問題なのは、それが、竜人族のフールシアの本体である、竜の姿に寄りかかって、眠っている姿なのだ。
「…それは貴方だと、認めますね?…リーン様」
「…。」
 驚きで、返事が出来なかった。
 いつだ!
 …アイツが竜の姿を見せたのは、一番最初の時だけ…。
 水中都市から脱出して、地上の無人島にたどり着いたとき、海から追いかけて来たフールシアが、竜の姿をしていたので、すごく驚いたのを覚えている。
 だが、こんな風に眠った覚えはない!
 …記憶が…意識が無いだけか…?
「…この絵は、再び貴方がココヘ来たとき、誰でも分かるように、描かれたものです。そして、水中都市への報告も、私達の義務なのです」
 ダレスは淡々と話す。
「フールシアに連絡したのか…」
 戸惑いを隠せなかった。
 ココに居たのはかなり前の事だ。
 だからか疑問に感じても、気付かれないと思っていたのに…。
 こんな風に、描かれているなんて思いもしなかった。
「主様には、貯水槽と土砂崩れの件と共に、ご報告しました。直ぐには動けないそうで、近いうちに連絡が来ます」
「…。」
 湖で練習するアオ達の笑い声が、微かにココまで届き、ダレスはチラリと外を見て尋ねる。
「…彼らは、知らないのですね。貴方が…」
「それ以上、言うな」
 …昔の事とはいえ、ルークには、知られたくない。
「…神殿に隣接する部屋は貴方が暮らしていた時のままです。ご自由にお使い下さい」
 ダレスはそう言って、神殿を出て行った。
 リーンは壁に掛けられた絵画を見る。
「…何で、私なんだ…」
 絵画の中で、竜の姿になったフールシアが愛しそうに、眠っている青年の姿を見て、微笑んでいる。
 水中都市から脱走したからか、面白そうに、私の嫌がる事ばかりして、笑っていたくせに、何で意識のない時は、優しく微笑む!
 リーンは隣接する隣の部屋の戸を開けると、巨大なベッドとシンプルなテーブル、ソファーがあった。
 以前と変わらぬまま、清潔に整えられている。
 …いつ来ても使えるように…集落の住民が管理してくれているのだろう…。
 リーンはベッドに座り、コロンと横になる。
 塩の香りと…波の音が眠りを誘う…。
 …リーンは目を閉じ、フールシアの契約…アイツの我儘わがままを思い出していた。


 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...