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人魚の泉~水上集落~
『水球』のシャワー 1 *
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土砂崩れから貯水槽を回避できた、リーンとアオ、魚人達は、ぬかるんだ山道を降り、集落に向かった。
泥だらけになったが、ホッととして、皆、笑顔だった。
心配そうに帰りを待っていた集落の住民や、ルーク達が出迎えてくれた。
「何とか直撃は回避出来たよ」
リーンはそう言って微笑む。
「心配させやがって…」
ルークがリーンとアオの顔を見てホッとする。
「助かったよ!」
「旅の人のおかげだ!」
集落の住民は喜んで笑顔を向けてくれた。
魚人達は泥を落とすため、湖へと入って行く。
「…。」
人魚の話をしたばかりだが、浅瀬なら大丈夫だろう。
「俺たちも、入って泥だけは落とすか…」
アオは、脱いだ靴を持って、湖入っていく。
靴も、泥だらけだもんな…。
リーンはルークに汚れなかったポーチを渡し、靴を脱いで、浅瀬で泥を落とした。
やはり、塩分濃度が濃すぎるため、ちょっとベッタリとしている。
それでも、泥だらけよりは、ましだろう…。
服や髪に付いた泥を、だいたい落として、浅瀬から上がってくると、ルークとアオがじっと見ていた。
「…?」
「…ヤバイよな…」
「はい。このまま、魚人族の方達の所へはいけませんね…」
二人はぶつぶつと、囁きあっている。
何の話をしているんだ?
「食事をご馳走してくれるのはいいが、あの姿を見せたくない…」
「…とりあえず、濡れた服を着替えれば、まだ、ましかと…」
「そうだな…」
二人は頷きあって、こちらを見る。
「どうしたの?」
「いや、魚人族方達が、食事をどうぞと、言っていてる。濡れたままでは、失礼だから、着替えてから行こう」
ルークは馬車の方にリーンを促す。
まあ、さすがに着替えたい…。
「ルーク様!試作のシャワー、準備できました!」
馬車の方からガーディが声をかけてくる。
さっきから、姿が見えないと思ったら、…試作のシャワー?
「『天水球』から『水球』を取り出せるか?」
「?…出来るけど…」
リーンはルークからポーチを返してもらい、中からさっき作ったばかりの『天水球』を取り出し、『水球』を一つ引き出す。
「ガーディ」
それを!ガーディが受け取り、『水球』の回りに魔方陣を描く。
苦手な炎の魔法…。
それを、馬車の側面に取り付けた幕の上部に乗せる。
てか、いつの間に、馬車の側面に幕を張った、シャワールームを作ったの?
幕の中の足元は、木の板が敷いてあり、頭上に炎の魔方陣をまとった『水球』が、木の枠で引っ掛かっている…。
「『水球』から少しずつ、水を流せば、立派なシャワーだ。ちなみに、炎の魔方陣のおかげで、お湯が出る」
「…。」
なんかすごい物、作ってるんだけど…。
「リーン、お先にどうぞ。『水球』の出しぐわいは、自分でやってください。まだ、俺は、うまく調整出来なくて…」
アオは、苦笑いして、『水球』を見上げる。
「とりあえず、身体を洗わせてもらうよ…」
リーンは幕のなかに入り、幕を閉め、濡れた服を脱ぎ出す。
ベッタリとして身体に張り付き、脱ぎにくい…。
脱いだ服を、中にあるカゴに入れ、『水球』から少しずつ、お湯を落とした。
ほんのりと、湯気が上がり、暖かい。
「…気持ちいかも」
リーンは、髪と身体を洗い、べっとり感が無くなって、お湯を止めた。
「…水量の調整が難しいね」
そう言うと、幕の隙間からタオルが差し出された。
「ありがとう」
リーンは、受け取り、髪と身体を拭いてから、ふと思う。
…着替え…準備してない…。
幕が少し開けられ、ルークがリーンの持っていた斜めがけのバックを差し出す。
「…着替え!入っているんだろ…」
「…ありがとう…」
そう言って、受け取ったとき、隙間からルークと目があってしまった。
かぁっと、なぜか頬に赤身が刺し、狼狽えてしまう。
ルークは無言で幕に顔を近付け、一歩中に入ってきて、リーンの唇に触れ、出ていった。
…不意打ちに、ドキドキしている…。
…それが、嫌ではないから、困ってしまうのだ…。
泥だらけになったが、ホッととして、皆、笑顔だった。
心配そうに帰りを待っていた集落の住民や、ルーク達が出迎えてくれた。
「何とか直撃は回避出来たよ」
リーンはそう言って微笑む。
「心配させやがって…」
ルークがリーンとアオの顔を見てホッとする。
「助かったよ!」
「旅の人のおかげだ!」
集落の住民は喜んで笑顔を向けてくれた。
魚人達は泥を落とすため、湖へと入って行く。
「…。」
人魚の話をしたばかりだが、浅瀬なら大丈夫だろう。
「俺たちも、入って泥だけは落とすか…」
アオは、脱いだ靴を持って、湖入っていく。
靴も、泥だらけだもんな…。
リーンはルークに汚れなかったポーチを渡し、靴を脱いで、浅瀬で泥を落とした。
やはり、塩分濃度が濃すぎるため、ちょっとベッタリとしている。
それでも、泥だらけよりは、ましだろう…。
服や髪に付いた泥を、だいたい落として、浅瀬から上がってくると、ルークとアオがじっと見ていた。
「…?」
「…ヤバイよな…」
「はい。このまま、魚人族の方達の所へはいけませんね…」
二人はぶつぶつと、囁きあっている。
何の話をしているんだ?
「食事をご馳走してくれるのはいいが、あの姿を見せたくない…」
「…とりあえず、濡れた服を着替えれば、まだ、ましかと…」
「そうだな…」
二人は頷きあって、こちらを見る。
「どうしたの?」
「いや、魚人族方達が、食事をどうぞと、言っていてる。濡れたままでは、失礼だから、着替えてから行こう」
ルークは馬車の方にリーンを促す。
まあ、さすがに着替えたい…。
「ルーク様!試作のシャワー、準備できました!」
馬車の方からガーディが声をかけてくる。
さっきから、姿が見えないと思ったら、…試作のシャワー?
「『天水球』から『水球』を取り出せるか?」
「?…出来るけど…」
リーンはルークからポーチを返してもらい、中からさっき作ったばかりの『天水球』を取り出し、『水球』を一つ引き出す。
「ガーディ」
それを!ガーディが受け取り、『水球』の回りに魔方陣を描く。
苦手な炎の魔法…。
それを、馬車の側面に取り付けた幕の上部に乗せる。
てか、いつの間に、馬車の側面に幕を張った、シャワールームを作ったの?
幕の中の足元は、木の板が敷いてあり、頭上に炎の魔方陣をまとった『水球』が、木の枠で引っ掛かっている…。
「『水球』から少しずつ、水を流せば、立派なシャワーだ。ちなみに、炎の魔方陣のおかげで、お湯が出る」
「…。」
なんかすごい物、作ってるんだけど…。
「リーン、お先にどうぞ。『水球』の出しぐわいは、自分でやってください。まだ、俺は、うまく調整出来なくて…」
アオは、苦笑いして、『水球』を見上げる。
「とりあえず、身体を洗わせてもらうよ…」
リーンは幕のなかに入り、幕を閉め、濡れた服を脱ぎ出す。
ベッタリとして身体に張り付き、脱ぎにくい…。
脱いだ服を、中にあるカゴに入れ、『水球』から少しずつ、お湯を落とした。
ほんのりと、湯気が上がり、暖かい。
「…気持ちいかも」
リーンは、髪と身体を洗い、べっとり感が無くなって、お湯を止めた。
「…水量の調整が難しいね」
そう言うと、幕の隙間からタオルが差し出された。
「ありがとう」
リーンは、受け取り、髪と身体を拭いてから、ふと思う。
…着替え…準備してない…。
幕が少し開けられ、ルークがリーンの持っていた斜めがけのバックを差し出す。
「…着替え!入っているんだろ…」
「…ありがとう…」
そう言って、受け取ったとき、隙間からルークと目があってしまった。
かぁっと、なぜか頬に赤身が刺し、狼狽えてしまう。
ルークは無言で幕に顔を近付け、一歩中に入ってきて、リーンの唇に触れ、出ていった。
…不意打ちに、ドキドキしている…。
…それが、嫌ではないから、困ってしまうのだ…。
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