神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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人魚の泉~水上集落~

水上集落 2

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 馬車はカザンナ王国の街道から、水上集落の敷地内に入った。
 敷地内は道の整備があまりしておらず、ガタガタ道で何処かに捕まっていないと、転がりそうだ。
「喋ると…舌を…噛みそう…」
 アオが馬車の座席に、へばり付いてうつ伏せになっている。
「…ここから…歩く…か?…距離は…そんなに…無かった…はず…」
 馬車の柱に捕まって、リーンは相談する。
「…降り…よう…」
 ルークも荷物の入った木箱にしがみ付き、そう促す。
 馬車を一旦止め、荷物が転がらないよう固定し、三人は馬車を降りた。
「まさか、整備されてないなんて思わなかった…」
 ルークは呆然と、続くガタガタ道を眺めた。
「…いつもは歩いて行くから、何も思わなかったけど、これじゃ流通が滞るのも仕方ないな…」
 リーンは改めて、整備された街道のすごさを感じた。
「…どちらかと言うと、閉鎖的な所も有るからね…」
 ガーディには、我慢して馬車で先に集落に向かってもらった。
 歩きにくい道を進んでいくと、急に目の前が開けた場所に出て、集落の全貌が見えた。
 湖の上に、何本もの木の柱で支えられた、平屋の木造の家が何棟もあり、それが木の橋で繋がっている。
 そこから陸地に橋が繋がっていて、少し高台の陸地にも、同じように平屋の木造の家が建ち並んでいた。
 馬車は高台の陸地の側の、広場の様なところで止まっていた。
 ガーディが乗っている馬車に近付くと、顔を覗かせる。
「…集落の方で何か有ったようです。慌ただしく人が行き来しています」
「…。」
 よく見れば、木の橋を走る男達が、慌てて一軒一軒に入って行く。
「ちょっと様子を見てくる」
 リーンは集落に向かって歩き出す。
「俺達も行く。ガーディはココで待っていてくれ」
 ガーディは頷き、ルークとアオも一緒に集落に向かった。

 集落は慌ただしく、何人もの大人達が山に向かって走っていく。
 その様子を心配そうに見る、老人と子供達が、家から顔を覗かせていた。
 リーンは近付き、尋ねた。
「何が、起こっているんですか?」
 子供達は怯えるように、老人にしがみ付き、老人はじろりと見上げてきた。
「…旅の人。直ぐにココを去りなさい。貴方方まで、巻き沿いになる…」
「…何が起こってる!」
 リーンが強めに言い寄ると、老人は嘆きながらボソボソと、呟いた。
「…貯水槽が流された…。もう一つも、いつまで持つか…」
 老人は悲しそうにうつ向く。
 この集落の水源である貯水槽だと! 
「どっちだ!北か南!」
 ココには貯水槽が二つある。
「…北側が…土砂で…流された…」
 それを聞き、すぐさまアオを見る。
「アオ!『天水球』を作れたよね!」
「…まだ、小さいのしか作れないが…」
 アオは頷き苦笑いする。
 それでも、即、戦力になる!
「ルーク。アオと南の貯水槽を守りに行く!」
 ルークは、仕方がないな~と、言う顔をして苦笑いし、リーンに触れた。
「…この間のみたいに、無理するなよ」
「…うん」
 リーンは頷き、触れた温もりから、冷静さを取り戻す。
 地中に流れ込みすぎた水を吸い上げ、崩れないようにするしかない!
 たぶん、水人族の者達もそう思って山に上がっているはず…。
 土砂崩れが起こる前に止める!

 リーンとアオは急いで、南の貯水槽に向かって移動した。
 
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