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人魚の泉~水上集落~
街道 2
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ルークに手首を捕まれ、馬車まで来ると、馬車を操る御者のガーディが、ペコリと頭を下げる。
そして、馬車の中にはアオが静かに座っていた。
「…。」
今朝、別れを告げたことを思い出し、頬が赤くなる。
二人が馬車に乗り、座席に座ると、ガタガタと音がして、馬車が動き出した。
「『魔法剣』を置いていくとは思わなかった…」
ルークがムッとした表情で、横に座るリーンを睨む。
「…大きくて、収納出来ないんだよ…」
リーンが気まずそうに、言い訳をする。
「だったら、『わかった』などと、返事するな!……初めから、置いていくつもりだったのか?」
「うっ…。収納出来ないかも…とは、思った。」
リーンは縮こまり、ルークを見る。
もともと、薬草や衣類などを収納するための『物質保管庫』だ。
短剣ぐらいは入っても、長剣は収納出来る筈がなかった。
「…それは、置いていくつもりだったって、事だな!」
リーンはふて腐れて、言う。
「…私が…『魔法剣』を持っている必要ないだろ。…また、この間の武器庫に納めて置けば良いのに…」
「…リーンとの、繋がりが欲しかった…」
ルークが苦笑いして、寂しそうに言う。
ズキリとリーンの胸を打つ…。
…ダメだ。
…感情の起伏が激しすぎて、気持ちが付いていけなくなる。
「…置いてかれた『魔法剣』を見たとき、もう、ココへは来ないつもりなのかと…」
そのつもりだった…。
だけど…。
「ミーネには、また来ると…約束した…」
だが、ルーク達には約束できない。
「…分かってる。時間の流れが違うことは…。だけど!…この街に来た時くらい、寄ってくれ…」
ルークは苦しそうに、そう言う。
そんな、悲しそうな顔をさせたくはない…けれど…。
「…約束は…出来ない…」
「…約束でなくていい。…俺の…お願いだ…」
ルークは引き下がらす、リーンの手を握って来て、必死に頼み込んでくる。
握られた手から、暖かな温もりを感じて、ドキドキと鼓動が鳴り出し、頬が熱くなり、冷静な判断が出来なくなってしまいそう…。
魔力がある程度回復したので、直接触れても、もう魔力は勝手に流れて来なくなった。
変わりに、体温がじわりと染み込んでくる…。
「…。」
リーンが沈黙していると、アオが聞こえるように、囁く。
「…そこは、『はい』と、返事してください。ルーク様が、へこんでしまいます…」
「おい、こら、アオ!」
ルークは顔を赤くして、狼狽え、アオを睨み付ける。
…約束は出来ないが、ふらりと寄るくらいなら、気持ちが楽だ。
「…わかった。…王都に来た時は、訪ねていく…」
リーンがポソリと言う。
…屋敷にいるとは限らないのだ。
今回のように、出かけているかもしれない…。
「ありがとう。…リーン」
そう言って、笑顔を向けてくるルークが眩しかった。
握られた手から、鼓動が伝わらないか、心配するくらい動悸が激しくなり、どうしたら良いのかわからなかった。
なぜルークの言動や笑顔に、こんなにも動揺して、狼狽えるのか。
…こんなことは初めてで、リーンは戸惑うしかなかった。
そして、馬車の中にはアオが静かに座っていた。
「…。」
今朝、別れを告げたことを思い出し、頬が赤くなる。
二人が馬車に乗り、座席に座ると、ガタガタと音がして、馬車が動き出した。
「『魔法剣』を置いていくとは思わなかった…」
ルークがムッとした表情で、横に座るリーンを睨む。
「…大きくて、収納出来ないんだよ…」
リーンが気まずそうに、言い訳をする。
「だったら、『わかった』などと、返事するな!……初めから、置いていくつもりだったのか?」
「うっ…。収納出来ないかも…とは、思った。」
リーンは縮こまり、ルークを見る。
もともと、薬草や衣類などを収納するための『物質保管庫』だ。
短剣ぐらいは入っても、長剣は収納出来る筈がなかった。
「…それは、置いていくつもりだったって、事だな!」
リーンはふて腐れて、言う。
「…私が…『魔法剣』を持っている必要ないだろ。…また、この間の武器庫に納めて置けば良いのに…」
「…リーンとの、繋がりが欲しかった…」
ルークが苦笑いして、寂しそうに言う。
ズキリとリーンの胸を打つ…。
…ダメだ。
…感情の起伏が激しすぎて、気持ちが付いていけなくなる。
「…置いてかれた『魔法剣』を見たとき、もう、ココへは来ないつもりなのかと…」
そのつもりだった…。
だけど…。
「ミーネには、また来ると…約束した…」
だが、ルーク達には約束できない。
「…分かってる。時間の流れが違うことは…。だけど!…この街に来た時くらい、寄ってくれ…」
ルークは苦しそうに、そう言う。
そんな、悲しそうな顔をさせたくはない…けれど…。
「…約束は…出来ない…」
「…約束でなくていい。…俺の…お願いだ…」
ルークは引き下がらす、リーンの手を握って来て、必死に頼み込んでくる。
握られた手から、暖かな温もりを感じて、ドキドキと鼓動が鳴り出し、頬が熱くなり、冷静な判断が出来なくなってしまいそう…。
魔力がある程度回復したので、直接触れても、もう魔力は勝手に流れて来なくなった。
変わりに、体温がじわりと染み込んでくる…。
「…。」
リーンが沈黙していると、アオが聞こえるように、囁く。
「…そこは、『はい』と、返事してください。ルーク様が、へこんでしまいます…」
「おい、こら、アオ!」
ルークは顔を赤くして、狼狽え、アオを睨み付ける。
…約束は出来ないが、ふらりと寄るくらいなら、気持ちが楽だ。
「…わかった。…王都に来た時は、訪ねていく…」
リーンがポソリと言う。
…屋敷にいるとは限らないのだ。
今回のように、出かけているかもしれない…。
「ありがとう。…リーン」
そう言って、笑顔を向けてくるルークが眩しかった。
握られた手から、鼓動が伝わらないか、心配するくらい動悸が激しくなり、どうしたら良いのかわからなかった。
なぜルークの言動や笑顔に、こんなにも動揺して、狼狽えるのか。
…こんなことは初めてで、リーンは戸惑うしかなかった。
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