39 / 462
人魚の泉~水上集落~
街道 2
しおりを挟む
ルークに手首を捕まれ、馬車まで来ると、馬車を操る御者のガーディが、ペコリと頭を下げる。
そして、馬車の中にはアオが静かに座っていた。
「…。」
今朝、別れを告げたことを思い出し、頬が赤くなる。
二人が馬車に乗り、座席に座ると、ガタガタと音がして、馬車が動き出した。
「『魔法剣』を置いていくとは思わなかった…」
ルークがムッとした表情で、横に座るリーンを睨む。
「…大きくて、収納出来ないんだよ…」
リーンが気まずそうに、言い訳をする。
「だったら、『わかった』などと、返事するな!……初めから、置いていくつもりだったのか?」
「うっ…。収納出来ないかも…とは、思った。」
リーンは縮こまり、ルークを見る。
もともと、薬草や衣類などを収納するための『物質保管庫』だ。
短剣ぐらいは入っても、長剣は収納出来る筈がなかった。
「…それは、置いていくつもりだったって、事だな!」
リーンはふて腐れて、言う。
「…私が…『魔法剣』を持っている必要ないだろ。…また、この間の武器庫に納めて置けば良いのに…」
「…リーンとの、繋がりが欲しかった…」
ルークが苦笑いして、寂しそうに言う。
ズキリとリーンの胸を打つ…。
…ダメだ。
…感情の起伏が激しすぎて、気持ちが付いていけなくなる。
「…置いてかれた『魔法剣』を見たとき、もう、ココへは来ないつもりなのかと…」
そのつもりだった…。
だけど…。
「ミーネには、また来ると…約束した…」
だが、ルーク達には約束できない。
「…分かってる。時間の流れが違うことは…。だけど!…この街に来た時くらい、寄ってくれ…」
ルークは苦しそうに、そう言う。
そんな、悲しそうな顔をさせたくはない…けれど…。
「…約束は…出来ない…」
「…約束でなくていい。…俺の…お願いだ…」
ルークは引き下がらす、リーンの手を握って来て、必死に頼み込んでくる。
握られた手から、暖かな温もりを感じて、ドキドキと鼓動が鳴り出し、頬が熱くなり、冷静な判断が出来なくなってしまいそう…。
魔力がある程度回復したので、直接触れても、もう魔力は勝手に流れて来なくなった。
変わりに、体温がじわりと染み込んでくる…。
「…。」
リーンが沈黙していると、アオが聞こえるように、囁く。
「…そこは、『はい』と、返事してください。ルーク様が、へこんでしまいます…」
「おい、こら、アオ!」
ルークは顔を赤くして、狼狽え、アオを睨み付ける。
…約束は出来ないが、ふらりと寄るくらいなら、気持ちが楽だ。
「…わかった。…王都に来た時は、訪ねていく…」
リーンがポソリと言う。
…屋敷にいるとは限らないのだ。
今回のように、出かけているかもしれない…。
「ありがとう。…リーン」
そう言って、笑顔を向けてくるルークが眩しかった。
握られた手から、鼓動が伝わらないか、心配するくらい動悸が激しくなり、どうしたら良いのかわからなかった。
なぜルークの言動や笑顔に、こんなにも動揺して、狼狽えるのか。
…こんなことは初めてで、リーンは戸惑うしかなかった。
そして、馬車の中にはアオが静かに座っていた。
「…。」
今朝、別れを告げたことを思い出し、頬が赤くなる。
二人が馬車に乗り、座席に座ると、ガタガタと音がして、馬車が動き出した。
「『魔法剣』を置いていくとは思わなかった…」
ルークがムッとした表情で、横に座るリーンを睨む。
「…大きくて、収納出来ないんだよ…」
リーンが気まずそうに、言い訳をする。
「だったら、『わかった』などと、返事するな!……初めから、置いていくつもりだったのか?」
「うっ…。収納出来ないかも…とは、思った。」
リーンは縮こまり、ルークを見る。
もともと、薬草や衣類などを収納するための『物質保管庫』だ。
短剣ぐらいは入っても、長剣は収納出来る筈がなかった。
「…それは、置いていくつもりだったって、事だな!」
リーンはふて腐れて、言う。
「…私が…『魔法剣』を持っている必要ないだろ。…また、この間の武器庫に納めて置けば良いのに…」
「…リーンとの、繋がりが欲しかった…」
ルークが苦笑いして、寂しそうに言う。
ズキリとリーンの胸を打つ…。
…ダメだ。
…感情の起伏が激しすぎて、気持ちが付いていけなくなる。
「…置いてかれた『魔法剣』を見たとき、もう、ココへは来ないつもりなのかと…」
そのつもりだった…。
だけど…。
「ミーネには、また来ると…約束した…」
だが、ルーク達には約束できない。
「…分かってる。時間の流れが違うことは…。だけど!…この街に来た時くらい、寄ってくれ…」
ルークは苦しそうに、そう言う。
そんな、悲しそうな顔をさせたくはない…けれど…。
「…約束は…出来ない…」
「…約束でなくていい。…俺の…お願いだ…」
ルークは引き下がらす、リーンの手を握って来て、必死に頼み込んでくる。
握られた手から、暖かな温もりを感じて、ドキドキと鼓動が鳴り出し、頬が熱くなり、冷静な判断が出来なくなってしまいそう…。
魔力がある程度回復したので、直接触れても、もう魔力は勝手に流れて来なくなった。
変わりに、体温がじわりと染み込んでくる…。
「…。」
リーンが沈黙していると、アオが聞こえるように、囁く。
「…そこは、『はい』と、返事してください。ルーク様が、へこんでしまいます…」
「おい、こら、アオ!」
ルークは顔を赤くして、狼狽え、アオを睨み付ける。
…約束は出来ないが、ふらりと寄るくらいなら、気持ちが楽だ。
「…わかった。…王都に来た時は、訪ねていく…」
リーンがポソリと言う。
…屋敷にいるとは限らないのだ。
今回のように、出かけているかもしれない…。
「ありがとう。…リーン」
そう言って、笑顔を向けてくるルークが眩しかった。
握られた手から、鼓動が伝わらないか、心配するくらい動悸が激しくなり、どうしたら良いのかわからなかった。
なぜルークの言動や笑顔に、こんなにも動揺して、狼狽えるのか。
…こんなことは初めてで、リーンは戸惑うしかなかった。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる