神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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人魚の泉~水上集落~

決意

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 リーンが早朝、挨拶も無しに、出ていこうとした。
 アオが、もしかしたら…。と、見張りを準備していたから、気付いただけで、一人で出ていこうと、していた事にショックだった。
 屋敷から、姿が見えなくなるまで、見送って、リーンが滞在していた部屋に向かった。
 未練がましい…。
 そんなことを思いながら、部屋の扉を開けた。
 微かにリーンの残り香がする…。
 部屋の中に入り、テーブルの上に、ルークの『魔法剣』が、置かれたままになっているのを見て、目を見開いた。
「…あいつ!」
 リーンに預けると、言ったのだ!
 また、来てもらう為の、かせになるように…。
 もう、ココへは戻ってこないつもりか!
「どうしました?」
 後から部屋に入ってきたアオが、不思議そうに声をかけてくる。
 そして、ルークが何を見て、固まっているのかに気が付き、ため息をついた。
「…もう、ココへは、来ないつもりでしょうか…」
 ルークはテーブルの上に置かれた『魔法石』の入ったビンと、何か書かれている紙束に気が付き、用紙を一枚手に取り、驚いた。
「…いつの間に…」
 そこには、森の中にある薬草の位置と効能、扱い方が書かれていた。
 それが、一枚だけでない…。
 森にある果実や、生き物のこと。
 滞在中に、見つけたモノが書かれている…。
 アオもそれを目にし、驚いていた。
「…。」
 …手放したくない…。
 ふと、獣人の言葉を思い出す。
『人族は面倒めんどうだな。短命なのに時間の無駄使いをしている…。本能のままに動けば良いのに…』
 そう、獣人に比べて人族は短命なのだ。
 アオの話を聞く限り、リーンも長い時間を生きている…。
「…。」
『せいぜい残された時間を無駄に使うんだな…』
 残された時間…。
 獣人にとっては、人族の時間が短く、またたく間の出来事なのかもしれない…。
 …それは、リーンにとっても…。
「…カズキは今、何処にいる?」
「…使いに出ています。明日には帰って来る予定です」
 ルークは思考を巡らせた。が、それより先に、アオが答えをくれた。
「馬車を運転できる、ガーディならいますよ」
 ルークは振り向いてアオを見る。
「いつでも、出かけれるようカズキが準備しておいてくれてます。食料はまだ、積んで無いですけど…」
 そう言って、アオは微笑んだ。
「リーンの行き先…森では無いだろ?」
「たぶん。…宿り木のミーネ様なら、知っているかも知れませんね。…答えてくれるか、分からないですけど…」
 ルークは直ぐさま、アオと共に、宿り木ミーネのもとへ向かった。
 向かうと中、アオはルークにささいた。
「やっと、いつものルーク様に戻りましたね」
「…そんなに違ったか?」
「ええ。リーンが来てからソワソワして、初恋している少年のようでした。…こんなこと言うと怒られそうですが、初々しくて、見ていて楽しかったですよ」
「…。」
 …初恋…。
 …そうなのかもしれない…。
 この、どうしたら良いか分からない、色んなものが渦巻いた、この感情をソウ、呼ぶのなら…。
 そうこう言っている内に、宿り木ミーネのもとへたどり着いた。
「俺には貴方の姿も見えないし、声も聞こえない。だが、リーンの行き先を知っていたら教えてほしい!」
 ルークはそう、語りかけた。
「…。」
「…知ってどうするのか?と、聞いています」
 アオが、通訳してくれる。
「…追いかけて、付いていく!」
 本能のままに…。
 今、手を離したら、二度と会えない気がした。
「『人魚の泉』へ向かうそうです。」
「『フールシア』か…」
「ありがとう。宿り木ミーネ」
 ルークとアオは宿り木のもとから屋敷に向かった。
「…リーンさんは市場へ向かった。と、言うことは、昼過ぎまでの時間はあります。フールシアへ向かう街道で、待ち伏せをしましょう」
「なぜ、昼過ぎと言える…」
 ルークは疑問を投げかける。
「一食でも、荷物を減らすと思います。なので、市場で食事をしてから、出発すると推測しました」
「そうだな。いくら保管機能があっても、人前では使わないだろうから…」
 ルークとアオは、旅の準備を始めるために屋敷に戻った。


 ルークの気分は晴れ晴れとしていた。
 とどまれないならば、付いていけば良い…。
 いつも仲間達と旅するみたいに…。
 …たとえ、短い時間でも、リーンと一緒にいて、ココを帰る場所の一つと、認めさせれば良い…。


 
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