神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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人魚の泉~水上集落~

街道 1

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 リーンは街に降りて、フードをかぶり、市場を歩いていた。
 フードをかぶるのは、人混みでは目立つから、かぶるように言われたからだ。
 目立つとは思わないが、人との接触はなるべく避けたいので、かぶるようにした。
 フードをかぶるようになって、以前のように、絡まれることは無くなったので、言われたまま、それを実行している。
 市場は人が、沢山いて、買い物を楽しんでいた。
 リーンも、日持ちするドライフルーツや、ナッツ、堅パンを買い、バックに入れた。
 ココは種類も多く、新鮮な魚介類や、野菜が並んでいる。
 各地から商品が運ばれてくる、街道が整備されていると言うこと。
 それだけ、このカザンナ王国は交易が盛んで、豊かだと言うこと…。
 朝が早かったので、早めの昼食をとり、フールシアへの街道に向かった。
 北の街道の入り口は、広場になっていて、何台もの馬車や荷馬車が止まっていた。
 ここは、王都と山側の町を繋ぐ、中心の街道の為、多くの人が出入りしている。
 いつもはここから、町に向かう馬車に乗る。
 だけど今は、そんな気分ではなかった。
 ぶらぶらと歩き、疲れた気持ちを癒されたかった。
 時間はあるし、歩けば草木や花が揺れ、鳥のさえずりが聞こえ、時折、小動物が顔を覗かせる。
 そんな、のんびりとした時間を過ごしたかった。
 人混みの広場を後にして、街道の端の方を歩く。
 昼間は、馬車の行き来が多いため、邪魔にならないように、なるべく端により、街道の両脇に植えられている木々を眺めなから歩いた。
 …何も考えず…ただ、目的地に向かって…。
 しばらく歩くと、少し道幅の広い場所に馬車が一台止まっていた。
 馬車の向きから言うと、街から山手に向かっている。
 乗り合い馬車でも、荷馬車でもない。
 個人の…貴族や豪商達の、馬車なのだろう…。
 近付くにつれ、なんとなく見覚えがあるように思えた。
 だか、個人の馬車はどこも似たり寄ったり…。
 リーンは気にせず、その馬車を追い越した。
「…。」
 …誰かに呼ばれた気がした。
 気のせいだと…、幻聴が聞こえるのだと…、歩みを止めずに進んで行くと、背後に誰かの気配を感じ、振り向いた。
 そして、リーンは目を見開き、足を止めた。
「…何で…」 
 そこには、ルークが旅装束で追いかけて来たからだ。
「…呼んだのに、先に行くなよ!」
「…。」
 リーンは呆然ぼうぜんとルークを見るしかなかった。
「俺達も、また、旅に出ることにしたんだ。行き先が一緒だから、乗って行けよ」
 何処へ行くか知らない筈なのに、行き先が一緒って…付いてくると、言うことなのか…?
「…どうして…」
 もう、会わないでおこうと決めていたのに、顔を見ただけで、嬉しくて、涙がこぼれそうになる。
 どうしてしまったんだろう…。
 涙腺が壊れてしまったみたいだ…。
「…来いよ」
 リーンはルークに手首を捕まれ、素直に止まっていた馬車へと向かう。
 触れる手が、暖かい…。
 今朝、別れを告げたばかりなのに…。
 悩んでいた色んな事が、吹き飛んでしまうくらい…嬉しかった。


 
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