神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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天水球

リーンの動揺

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 リーンが目覚めると、滞在している部屋のベッドの中だった。
「…。」
 魔力も身体も、満たされていた。
 いつでも、旅の続きに、出かけられるくらい…。
 ただ、気力だけが…低迷したまま、浮上してこない…。
 どんな顔してルークと話せば言い…。
 あんな姿を見られて…。
 きっとココまで、連れて来てくれたのもルークだろう…。
「…。」 
 明日には、『天水球』が一個浄化される…はず…。
 それを持って、ココを出よう…。
 どうしたら良いのかわからない、この感情に振り回される前に、ココから離れよう…。
 リーンはそう決意し、再び眠りについた。


 滞在九日目の朝、嵐は突然やって来た。
 珍しく朝食に、屋敷にいるルークの仲間達が全員揃ったのだ。
 洪水の復興作業や後始末の為、各自出払っていて、昨日の夜に戻って来ていたようだ。
 ルークとは、何となく気まずいながらも、視線を合わせないようにして、朝食をたべていた。
 そこへ突然、少し白髪混じりの、体格のいい中年の男がやって来たのだ。
「王子!今回の洪水の件で尽力を尽くしてくれた方は、まだ、いらっしゃるのか!」
 リーンは目を見開き男とルークを見た。
「…!!」
 今!なんて、言った!
 口に入れかけた、サラダを乗せたフォークを下ろした。
「将軍、朝食ぐらい、ゆっくりと食べさせてくれ…」
 ルークはやれやれと、呆れたように言う。
「おお、これは申し訳ない」
 と、言いながら言葉を続ける。
「しかし、報告書に滞在中の協力者だけでは、納得できませんぞ!王子!」
「…。」
 ルークは気まずそうに顔を歪める。
 男は視線を巡らせ、リーンと目が合うと近付いて来て、
「あなたが…」
「ストップ!後で紹介するから…応接室で待ってて下さい」
 ルークが止めると、男はしぶしぶ、出入口に向かって出ていった。
 それを見送り、ルークがこちらを向く。
「すまない…リーンの事をあまり言いたくなかったから、協力者としか、報告しなかった。…それが裏目に出て…、まさか、ココまで来るとは思わなかった…」
「…かまわない…」
 リーンは動揺して、それどころではなかった。
 …王子だと!
 この地域なら、…カザンナ王国…。
 …国に関わるつもりは…一切無い!
 私が関わることで、国同士のバランスが崩れてしまいかねない。と、散々、言われてきたからだ。
 彼らにしても、どっかの高位貴族と騎士団だと思っていたが…。
 …何も、聞かなかった自分も悪い…。
 やはり、『天水球』の浄化が終わったら、ココを離れよう…。
 キリトのおかげで魔力はだいぶん回復したから、大丈夫だ。
 …水人すいじんフールシアの所へ行こう…。
 彼なら、この身体に魔力を満たしてくれる…。


 食事が終わり、応接室にいる将軍に紹介されたが、あまりにも色々と質問されるので、体調があまりよくないと、直ぐに部屋を退室させてもらう。
 アオに付き添われて応接室を出て、無言で歩く。
 聞きたいこと、聞かなくてはいけないこと、色々ありすぎて、混乱しながら、リーンは部屋に戻った。
 部屋に入り、一緒に入ってきたアオの方を向く。
 リーンは、絞り出すような苦しい声で、アオに言った。
「どうして…教えてくれなかった…」
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