神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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天水球

浄化

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 日が陰り始めた頃、リーンが身体を休めて、寄りかかっている宿り木の元に、ルークとアオ、カズキが、疲れた顔をしてやって来た。
 彼らの様子からして、この地域、地区の関係者で、管理している側のため、集落や川の復旧作業に、奔走していたのだろう。
 屋敷に戻って来て、そのままココに来た感じの様子だ。
「身体は大丈夫なのか?」
 ルークも始めての魔力の欠落で身体が辛いはすなのに、こちらを心配して不安そうに近付いてくる。
「ああ、生活魔法くらいは使えるほど、回復はした」
 そう言って微笑む。
「アオとカズキには『天水球』の事を、説明しておこうと思って、呼んだんだ」
 リーンは寄りかかっていた宿り木から身体を離し、籠に入った『天水球』を一つ手に取る。
「『天水球』はこのままでは、安定しない。特に魔法を掛けた者が側にいないと、破裂するときがある。だから、光のコーティングを施して…」
 リーンは手にした『天水球』の周りに光の膜を作る。
「浄化させる。…ミーネ…」
 リーンが呼ぶと、ミーネは姿を現す。
「コレを浄化して、もらえるだろうか?」
『時間はかかりますが、大丈夫ですよ』
 ミーネは微笑む。
 リーンはアオとカズキを見て、
「彼らが必要になった時、授けてください」
『分かりました』
 ミーネは視線を彼らに向ける。
 リーンがコーティングした『天水球』を宿り木の根元に置くと、地中にすーっと吸い込まれていった。
 リーンは再びコーティングしては、地中に呑み込ませていき、全てが終わると、ミーネは微笑んで姿を消した。
「ココに『天水球』は眠った。…水不足で困った時、ミーネにお願いすれば、浄化されたモノを渡してくれる。それを、本来流れる筈だったオケの谷に、もしくはその上流に入れて下さい。本来流れる筈だった水を流す分には影響無いですから…」
 そこまで説明して、リーンは再び宿り木に寄りかかり、苦笑いした。
「今のだけで、疲れるなんて…」
「…リーン」
 ルークはリーンに近付いて、リーンの身体を抱き上げた。
「…ちょっ、ちょっと!」
 驚くリーンを横目に、ルークは無表情で屋敷に向かって歩き出した。
「…また、無理をする…。もっと自分の身体を大切にしてくれ…」
「…。」
「そうですよ。リーンさん。…いつも魔力を使いすぎです!」
 アオは、そう言って、ルークの後を追う。
「ルーク様の心配症が酷くなるので、ほどほどにしてください」
 カズキもそう言って、後を追ってくる。
「…。」
 リーンはなにも言えなくなり、頬を赤く染めて、ルークの腕の中に顔を埋めた。
 



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