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天水球
オケの谷 2
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リーンは頬を染め魔法石を取り出し再び透明の丸い球を作り出した。
「『天水球』!」
「くっ…!」
ルークが一瞬、よろめいた。
リーンは申し訳なさそうに、ルークを見る。
魔力の消費に慣れていないから、衝撃も大きいのかもしれない。
「…魔力を使うたび、その衝撃が襲ってくる…」
「かまわない!俺に魔力が有る証拠だろう!」
ルークは嬉しそうにリーンを見る。
「俺は嬉しいんだ。魔法が使えなくても、誰かの役にたてることが!」
「…。」
リーンはルークから視線を反らし、空を見上げた。
…この純粋さに、…真っ直ぐさに、心がざわめく。
再び『天水球』が閉じ初め、ルークはそれを受け止めようとフィールド内を移動した。
それを何回か繰り返し、リーンの苦しそうな荒い息が、聞こえ出した。
「ルーク様!」
迎えに行っていたジェスがアオ達にと戻ってきて、リーンとルークの状態を見て、青ざめた。
「急げ!『水球』『天水球』で、水量を少しでも減らせ!」
ルークが叫ぶと彼らは、覚えたての魔法を躊躇いもなく使う。
「いい勉強になりますよ…」
ジェスは苦しそうに苦笑いし、『天水球』を作り出している。
「俺が作ると巨大な玉にしかならないぜ…」
アオは悔しそうに、巨大な『水球』作り出す。
他の訓練生達も、できる限りの『水球』を作り水を吸い上げていた。
そこへ、カズキが追い付いてきて、オケの谷の状態を見て、目を丸くする。
「…ルーク様。集落は水かさが増して、限界まで来てました。住民は高台へ上り、避難はもうすぐ終わるはずです。街の方も水量が増えているので、河川付近と、低地には避難勧告が出されました」
カズキは冷静に、報告をする。
「カズキはアオ達の作る『水球』を留めておくことが出きるか!」
アオは圧縮がまだ上手く出来ないから、巨大な『水球』、水の塊になっている。
「向こうの木の有る所に網を作ります。どこで耐えれるかは分かりませんが、準備をします」
そう言って、カズキは森の中に入っていった。
「アオ!ある程度の大きさになったら、カズキの元へ運べ!流されないように固定する!」
「もう限界です!カズキの所に行きます!」
アオは巨大な『水球』を持ち上げ、森の方に抱えていく。
リーンは雨と汗を拭いながら、そろそろ身体が震え、限界を感じていた。
ルークから魔力をもらっているとはいえ、体力にも限界がある。
九個目の『天水球』を閉じ終えて、十個目の『天水球』を発動した時、力が抜け膝をついた。
「リーン!」
ルークがリーンの身体を支え、リーンは空に向かって手を上げ耐えていた。
「…コレが…最後だ。…ココから…離れて…高台へ…上がるんだ…」
「ジェス!」
ルークは籠に入った九個の『天水球』をフィールドの外にだし、持って行くように言う。
「高台に上がれ!リーンが『天水球』を作り終えたら、俺達を上に移動させろ!」
ジェスは自分の『天水球』を作り終えて、籠を受けとる。
「分かりました」
神妙な顔つきでリーンを見て、ジェスは周りに指示を出す。
「魔法を閉じて高台に上がれ!」
次々と魔法を閉じて、森のカズキのもとへ運んでいき、そのまま、上へと登って行く。
ルークはリーンの身体を支えながら、仲間達の様子を確認する。
そして、側にいた全員が避難したのを確認すると、リーンの手に触れる。
「もう、皆、上に避難した。止めても大丈夫だ」
その声に、『天水球』に吸い込まれる水が止まり、小さく圧縮していき、リーンの手元に降りてきた。
力が抜け、崩れ落ちるリーンの身体を支えながら、『天水球』を手に取り、リーンを抱き締めた。
その瞬間、ジェスの『移動』で、その場から姿を消した。
少し上の高台では、雨と汗で、ずぶ濡れになったルークの仲間達と、座り込んで立てないルーク、目を閉じて横たわるリーンがいた。
いつの間にか小雨は止み、雲の隙間から時折日差しが指しこんていた。
そして、さっきまでいた崖上に、鉄砲水が襲いかかっていて、その様子を見て青ざめていた。
上流での水量調節は、ここまでで、終わった…。
「『天水球』!」
「くっ…!」
ルークが一瞬、よろめいた。
リーンは申し訳なさそうに、ルークを見る。
魔力の消費に慣れていないから、衝撃も大きいのかもしれない。
「…魔力を使うたび、その衝撃が襲ってくる…」
「かまわない!俺に魔力が有る証拠だろう!」
ルークは嬉しそうにリーンを見る。
「俺は嬉しいんだ。魔法が使えなくても、誰かの役にたてることが!」
「…。」
リーンはルークから視線を反らし、空を見上げた。
…この純粋さに、…真っ直ぐさに、心がざわめく。
再び『天水球』が閉じ初め、ルークはそれを受け止めようとフィールド内を移動した。
それを何回か繰り返し、リーンの苦しそうな荒い息が、聞こえ出した。
「ルーク様!」
迎えに行っていたジェスがアオ達にと戻ってきて、リーンとルークの状態を見て、青ざめた。
「急げ!『水球』『天水球』で、水量を少しでも減らせ!」
ルークが叫ぶと彼らは、覚えたての魔法を躊躇いもなく使う。
「いい勉強になりますよ…」
ジェスは苦しそうに苦笑いし、『天水球』を作り出している。
「俺が作ると巨大な玉にしかならないぜ…」
アオは悔しそうに、巨大な『水球』作り出す。
他の訓練生達も、できる限りの『水球』を作り水を吸い上げていた。
そこへ、カズキが追い付いてきて、オケの谷の状態を見て、目を丸くする。
「…ルーク様。集落は水かさが増して、限界まで来てました。住民は高台へ上り、避難はもうすぐ終わるはずです。街の方も水量が増えているので、河川付近と、低地には避難勧告が出されました」
カズキは冷静に、報告をする。
「カズキはアオ達の作る『水球』を留めておくことが出きるか!」
アオは圧縮がまだ上手く出来ないから、巨大な『水球』、水の塊になっている。
「向こうの木の有る所に網を作ります。どこで耐えれるかは分かりませんが、準備をします」
そう言って、カズキは森の中に入っていった。
「アオ!ある程度の大きさになったら、カズキの元へ運べ!流されないように固定する!」
「もう限界です!カズキの所に行きます!」
アオは巨大な『水球』を持ち上げ、森の方に抱えていく。
リーンは雨と汗を拭いながら、そろそろ身体が震え、限界を感じていた。
ルークから魔力をもらっているとはいえ、体力にも限界がある。
九個目の『天水球』を閉じ終えて、十個目の『天水球』を発動した時、力が抜け膝をついた。
「リーン!」
ルークがリーンの身体を支え、リーンは空に向かって手を上げ耐えていた。
「…コレが…最後だ。…ココから…離れて…高台へ…上がるんだ…」
「ジェス!」
ルークは籠に入った九個の『天水球』をフィールドの外にだし、持って行くように言う。
「高台に上がれ!リーンが『天水球』を作り終えたら、俺達を上に移動させろ!」
ジェスは自分の『天水球』を作り終えて、籠を受けとる。
「分かりました」
神妙な顔つきでリーンを見て、ジェスは周りに指示を出す。
「魔法を閉じて高台に上がれ!」
次々と魔法を閉じて、森のカズキのもとへ運んでいき、そのまま、上へと登って行く。
ルークはリーンの身体を支えながら、仲間達の様子を確認する。
そして、側にいた全員が避難したのを確認すると、リーンの手に触れる。
「もう、皆、上に避難した。止めても大丈夫だ」
その声に、『天水球』に吸い込まれる水が止まり、小さく圧縮していき、リーンの手元に降りてきた。
力が抜け、崩れ落ちるリーンの身体を支えながら、『天水球』を手に取り、リーンを抱き締めた。
その瞬間、ジェスの『移動』で、その場から姿を消した。
少し上の高台では、雨と汗で、ずぶ濡れになったルークの仲間達と、座り込んで立てないルーク、目を閉じて横たわるリーンがいた。
いつの間にか小雨は止み、雲の隙間から時折日差しが指しこんていた。
そして、さっきまでいた崖上に、鉄砲水が襲いかかっていて、その様子を見て青ざめていた。
上流での水量調節は、ここまでで、終わった…。
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