25 / 462
天水球
オケの谷 2
しおりを挟む
リーンは頬を染め魔法石を取り出し再び透明の丸い球を作り出した。
「『天水球』!」
「くっ…!」
ルークが一瞬、よろめいた。
リーンは申し訳なさそうに、ルークを見る。
魔力の消費に慣れていないから、衝撃も大きいのかもしれない。
「…魔力を使うたび、その衝撃が襲ってくる…」
「かまわない!俺に魔力が有る証拠だろう!」
ルークは嬉しそうにリーンを見る。
「俺は嬉しいんだ。魔法が使えなくても、誰かの役にたてることが!」
「…。」
リーンはルークから視線を反らし、空を見上げた。
…この純粋さに、…真っ直ぐさに、心がざわめく。
再び『天水球』が閉じ初め、ルークはそれを受け止めようとフィールド内を移動した。
それを何回か繰り返し、リーンの苦しそうな荒い息が、聞こえ出した。
「ルーク様!」
迎えに行っていたジェスがアオ達にと戻ってきて、リーンとルークの状態を見て、青ざめた。
「急げ!『水球』『天水球』で、水量を少しでも減らせ!」
ルークが叫ぶと彼らは、覚えたての魔法を躊躇いもなく使う。
「いい勉強になりますよ…」
ジェスは苦しそうに苦笑いし、『天水球』を作り出している。
「俺が作ると巨大な玉にしかならないぜ…」
アオは悔しそうに、巨大な『水球』作り出す。
他の訓練生達も、できる限りの『水球』を作り水を吸い上げていた。
そこへ、カズキが追い付いてきて、オケの谷の状態を見て、目を丸くする。
「…ルーク様。集落は水かさが増して、限界まで来てました。住民は高台へ上り、避難はもうすぐ終わるはずです。街の方も水量が増えているので、河川付近と、低地には避難勧告が出されました」
カズキは冷静に、報告をする。
「カズキはアオ達の作る『水球』を留めておくことが出きるか!」
アオは圧縮がまだ上手く出来ないから、巨大な『水球』、水の塊になっている。
「向こうの木の有る所に網を作ります。どこで耐えれるかは分かりませんが、準備をします」
そう言って、カズキは森の中に入っていった。
「アオ!ある程度の大きさになったら、カズキの元へ運べ!流されないように固定する!」
「もう限界です!カズキの所に行きます!」
アオは巨大な『水球』を持ち上げ、森の方に抱えていく。
リーンは雨と汗を拭いながら、そろそろ身体が震え、限界を感じていた。
ルークから魔力をもらっているとはいえ、体力にも限界がある。
九個目の『天水球』を閉じ終えて、十個目の『天水球』を発動した時、力が抜け膝をついた。
「リーン!」
ルークがリーンの身体を支え、リーンは空に向かって手を上げ耐えていた。
「…コレが…最後だ。…ココから…離れて…高台へ…上がるんだ…」
「ジェス!」
ルークは籠に入った九個の『天水球』をフィールドの外にだし、持って行くように言う。
「高台に上がれ!リーンが『天水球』を作り終えたら、俺達を上に移動させろ!」
ジェスは自分の『天水球』を作り終えて、籠を受けとる。
「分かりました」
神妙な顔つきでリーンを見て、ジェスは周りに指示を出す。
「魔法を閉じて高台に上がれ!」
次々と魔法を閉じて、森のカズキのもとへ運んでいき、そのまま、上へと登って行く。
ルークはリーンの身体を支えながら、仲間達の様子を確認する。
そして、側にいた全員が避難したのを確認すると、リーンの手に触れる。
「もう、皆、上に避難した。止めても大丈夫だ」
その声に、『天水球』に吸い込まれる水が止まり、小さく圧縮していき、リーンの手元に降りてきた。
力が抜け、崩れ落ちるリーンの身体を支えながら、『天水球』を手に取り、リーンを抱き締めた。
その瞬間、ジェスの『移動』で、その場から姿を消した。
少し上の高台では、雨と汗で、ずぶ濡れになったルークの仲間達と、座り込んで立てないルーク、目を閉じて横たわるリーンがいた。
いつの間にか小雨は止み、雲の隙間から時折日差しが指しこんていた。
そして、さっきまでいた崖上に、鉄砲水が襲いかかっていて、その様子を見て青ざめていた。
上流での水量調節は、ここまでで、終わった…。
「『天水球』!」
「くっ…!」
ルークが一瞬、よろめいた。
リーンは申し訳なさそうに、ルークを見る。
魔力の消費に慣れていないから、衝撃も大きいのかもしれない。
「…魔力を使うたび、その衝撃が襲ってくる…」
「かまわない!俺に魔力が有る証拠だろう!」
ルークは嬉しそうにリーンを見る。
「俺は嬉しいんだ。魔法が使えなくても、誰かの役にたてることが!」
「…。」
リーンはルークから視線を反らし、空を見上げた。
…この純粋さに、…真っ直ぐさに、心がざわめく。
再び『天水球』が閉じ初め、ルークはそれを受け止めようとフィールド内を移動した。
それを何回か繰り返し、リーンの苦しそうな荒い息が、聞こえ出した。
「ルーク様!」
迎えに行っていたジェスがアオ達にと戻ってきて、リーンとルークの状態を見て、青ざめた。
「急げ!『水球』『天水球』で、水量を少しでも減らせ!」
ルークが叫ぶと彼らは、覚えたての魔法を躊躇いもなく使う。
「いい勉強になりますよ…」
ジェスは苦しそうに苦笑いし、『天水球』を作り出している。
「俺が作ると巨大な玉にしかならないぜ…」
アオは悔しそうに、巨大な『水球』作り出す。
他の訓練生達も、できる限りの『水球』を作り水を吸い上げていた。
そこへ、カズキが追い付いてきて、オケの谷の状態を見て、目を丸くする。
「…ルーク様。集落は水かさが増して、限界まで来てました。住民は高台へ上り、避難はもうすぐ終わるはずです。街の方も水量が増えているので、河川付近と、低地には避難勧告が出されました」
カズキは冷静に、報告をする。
「カズキはアオ達の作る『水球』を留めておくことが出きるか!」
アオは圧縮がまだ上手く出来ないから、巨大な『水球』、水の塊になっている。
「向こうの木の有る所に網を作ります。どこで耐えれるかは分かりませんが、準備をします」
そう言って、カズキは森の中に入っていった。
「アオ!ある程度の大きさになったら、カズキの元へ運べ!流されないように固定する!」
「もう限界です!カズキの所に行きます!」
アオは巨大な『水球』を持ち上げ、森の方に抱えていく。
リーンは雨と汗を拭いながら、そろそろ身体が震え、限界を感じていた。
ルークから魔力をもらっているとはいえ、体力にも限界がある。
九個目の『天水球』を閉じ終えて、十個目の『天水球』を発動した時、力が抜け膝をついた。
「リーン!」
ルークがリーンの身体を支え、リーンは空に向かって手を上げ耐えていた。
「…コレが…最後だ。…ココから…離れて…高台へ…上がるんだ…」
「ジェス!」
ルークは籠に入った九個の『天水球』をフィールドの外にだし、持って行くように言う。
「高台に上がれ!リーンが『天水球』を作り終えたら、俺達を上に移動させろ!」
ジェスは自分の『天水球』を作り終えて、籠を受けとる。
「分かりました」
神妙な顔つきでリーンを見て、ジェスは周りに指示を出す。
「魔法を閉じて高台に上がれ!」
次々と魔法を閉じて、森のカズキのもとへ運んでいき、そのまま、上へと登って行く。
ルークはリーンの身体を支えながら、仲間達の様子を確認する。
そして、側にいた全員が避難したのを確認すると、リーンの手に触れる。
「もう、皆、上に避難した。止めても大丈夫だ」
その声に、『天水球』に吸い込まれる水が止まり、小さく圧縮していき、リーンの手元に降りてきた。
力が抜け、崩れ落ちるリーンの身体を支えながら、『天水球』を手に取り、リーンを抱き締めた。
その瞬間、ジェスの『移動』で、その場から姿を消した。
少し上の高台では、雨と汗で、ずぶ濡れになったルークの仲間達と、座り込んで立てないルーク、目を閉じて横たわるリーンがいた。
いつの間にか小雨は止み、雲の隙間から時折日差しが指しこんていた。
そして、さっきまでいた崖上に、鉄砲水が襲いかかっていて、その様子を見て青ざめていた。
上流での水量調節は、ここまでで、終わった…。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

けものとこいにおちまして
ゆきたな
BL
医者の父と大学教授の母と言うエリートの家に生まれつつも親の期待に応えられず、彼女にまでふられたカナタは目を覚ましたら洞窟の中で二匹の狼に挟まれていた。状況が全然わからないカナタに狼がただの狼ではなく人狼であると明かす。異世界で出会った人狼の兄弟。兄のガルフはカナタを自分のものにしたいと行動に出るが、カナタは近付くことに戸惑い…。ガルフと弟のルウと一緒にいたいと奔走する異種族ファミリー系BLストーリー。
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる