神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
上 下
24 / 462
天水球

オケの谷 1 *

しおりを挟む
 リーンはルークを連れて、オケの谷へ飛んだ。
 小雨は降り続き、辺りは一面濡れて足場が悪くなっている。
 断崖絶壁の上から見下ろす谷に、大量の茶色い水が流れ込んで、ゴーッと、物凄い音を立てていた。
 一緒に来たルークが目を見開き驚いている。
「いつもは、緩やかにしか流れていない!浅瀬まで濁流に浸かっているぞ!」
 追いかけてきたジェスが姿を現し、同様に目を見開いて驚いて、震えていた。
 どこまで、水量を減らせるか…。
 リーンは持ってきた魔法石を一粒取り出し、魔方陣を発動させる。
「『フィールド転開てんかい』」
 リーンの足元に複雑な文字の書かれた魔方陣が浮かび上がり、光を放つ。
「『天水球てんすいきゅう』!」
 魔法石を持つ手を空に掲げ、空に放つ。
 すると、魔法石を中心に透明の丸い球が現れ、谷から濁った水が竜巻の様に立ち上がり、中に吸い込まれていく。
 ルークとジェスは茫然とその様子を見ていた。
「どれだけ時間を稼げるか分からないが…」
 リーンにそう言われ、二人はハッとして、自分達のやることを思い出す。
 ジェスはカズキに連絡を取り、現在位置を伝え、『水球』を作れるようになった者達を、こっちに連れてくるよう説明している。
 そして、ここへたどり着くための足場を確認するため、森中へ入っていった。
 ルークは崖下に取り残された人がいないか覗き込んで確認している。
 谷に流れ込む水は変わらず、濁流となって下流に流れていく。
 きっと、ココだけでない!
 他の場所でも、同時に雨水が流れ込んでいるはず。
 きっと一番大きい流れだから、『風使い』がココを選んだ。
 一つ目の『天水球』が閉じようとしていた。
「ルーク!天水球を籠の中に入れてくれ!軌道修正まで出来ない!」
 リーンはそう叫び、足元に小さな魔方陣を出し、つたかごを作り出す。
 ルークがリーンに近付くと、閉じた『天水球』がゆっくりと降りてくる。
 それは濁流と同じ濁った土色で、中で渦巻いているのが見えるくらいだ。
 それを両手で受け止め、そっとかごの中に入れた。
「『天水球てんすいきゅう』!」
 リーンは再び、魔法石で透明の丸い球を作り出し、濁流の水を吸い込み始めた。
 いくつまで作れる!

 二つ目の『天水球』が閉じ初め、リーンは落ちてくる天水球を受け止めようと、空を見ていたルークを見る。
「フィールド内から、出ないで欲しい…」
 リーンのその声に空を見上げたまま、チラリとこっちを向く。
「ルークの魔力を使う…だから…つっっ…」
 リーンは頬を染めなから小声で呟く。
「…口付けろ…。魔力の…道を作る…」
 ルークは驚きでリーンを凝視し、『天水球』を持ち損ねそうになり、慌てて受け止める。
 そして、それを持ってリーンの側の籠の中にいれると、ルークは苦笑いし、リーンを見下ろした。
「…昨日のことで…嫌われたのかと…思っていた…」
 今、そんなことを言っている場合ではない!
 だけど、ルークが側にいる、この動悸も止まらない…。
「…私は動けない。…魔力も…足りない…だから…」
 頬を染め視線を反らすリーンの頬がルークに捕まれた。
「んんっっ…」
 唇が触れ、ルークの魔力が流れ込んでくる。
 やっぱり気持ちが良い…。
 非常事態で、こんな風に堪能している場合では無いのに、離しがたい…。
 ゆっくりと唇が離れ、ルークの青い瞳と視線が合う。
「…ありがとう…魔力が繋がった…。まだ、作れる」
 リーンは頬を染め魔法石を取り出し再び透明の丸い球を作り出した。
「『天水球てんすいきゅう』!」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

【R18+BL】ハデな彼に、躾けられた、地味な僕

hosimure
BL
僕、大祇(たいし)永河(えいが)は自分で自覚するほど、地味で平凡だ。 それは容姿にも性格にも表れていた。 なのに…そんな僕を傍に置いているのは、学校で強いカリスマ性を持つ新真(しんま)紗神(さがみ)。 一年前から強制的に同棲までさせて…彼は僕を躾ける。 僕は彼のことが好きだけど、彼のことを本気で思うのならば別れた方が良いんじゃないだろうか? ★BL&R18です。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

処理中です...