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天水球
『風使い』
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滞在六日目。
朝から小雨が降っていた。
午後から訓練するため、屋根付きの広場に集まっていた。
彼らの様子を見て、魔法石をまだ使えそうな者たちに、追加で渡そうと、仕分けした魔法石も持ってきていた。
多分、ルークと一緒に居たいあのメンバーは、確実に魔法石を使える。
訓練次第で、大きな魔法も作れるようになるだろう…。
不意に、木々が大きく揺れ、風が身体を包んだ。
…何?『風霊』?
人くらいの大きさの『風霊』、『風使い』が姿をあらわす。
『風使い』は、『風霊』より魔力を多く持ち、人の言葉を話すことも出来る。
時折『風霊』に魔力を与え、一時的にだが、『風使い』の姿になり伝えたいことを話してもらうこともある。
突然の『風使い』の姿に周りが、硬直し、茫然とこちらを見ている。
『風使い』は必死の表情で、リーンに訴えかけた。
「山奥…大雨が止まらない…。オケの谷…水が…流れ込んで…森が流されてしまう…」
恐れていた事が起こってしまった!
この子達は伝える事しか出来ない…。
「伝えてくれて、ありがとう」
『風使い』は微笑み姿を消す。
急がなくてはいけない!
「オケの谷へ行く!洪水が起こる!」
どこまで押さえられる!
「洪水?!」
ルークは蒼白になり、素早く指示を出す。
「オケの谷の下流に集落マミヤがある!避難させろ!」
「はい!」
アオが直ぐに屋敷の方へ駆けていった。
何処かに伝令を伝える為だろう…。
「その下流の街にも、川へ近付かないよう言った方がいい…」
リーンがそう言うと、ルークはクルリと振り向き近付いて来る。
「あの子達が伝えてきたのなら、相当な量の水が流れ込んでるはず…」
確証はないが、もっと、下流まで影響が出てしまうかもしれない…。
ルークはリーンの正面で立ち止まり、こっちをじっと見つめてくる。
「ガーディ、王都へ連絡しろ!河川の状況を確認するように!避難民の誘導を急ぐように!」
「はい!」
ガーディは、一礼して屋敷の方へ走っていく。
ざわつく訓練生の中から青い顔をした、ジェスとカズキがこちらに近付いて来る。
「オケの谷へ、先に行く」
リーンがそう言うと、ルークは真剣な表情で、何故か睨んで言った。
「俺も連れていけ!」
「ルーク様!」
ジェスが慌てて止めるように、声をかけてくる。
ルークは魔法は使えないが、魔力の塊…。
私の魔力だけで、どこまで押さえれるのかわからない…。
ルークから魔力の供給が出来れば、少しでも多くの水を止めれるかもしれない…。
リーンは持ってきていた魔法石のビンを手に取り、ルークに手を伸ばす。
「分かりました。飛びます」
「ジェス!追跡移動で追ってこい!」
ルークがリーンの手を取ると、その場から姿を消した。
慌ててその後を追うように、ジェスも消える…。
残されたカズキは、訓練生に、着替えて出動の準備をするように言い、彼らは慌てて部屋へ戻っていった。
「ジェスの連絡待ちで、追いかけますか…」
カズキは少し離れた所にある馬小屋に向かい、移動用の馬車の準備をし始める。
ルークの周りには、それぞれの役目を持って側に使えている者達がいる。
彼らは、旅する仲間であり、友人であり、有事に対しての側近でもある…。
なので高度な魔法が使え、向上心が強い者達が集っている事を、リーンは知っているはずが無かった…。
朝から小雨が降っていた。
午後から訓練するため、屋根付きの広場に集まっていた。
彼らの様子を見て、魔法石をまだ使えそうな者たちに、追加で渡そうと、仕分けした魔法石も持ってきていた。
多分、ルークと一緒に居たいあのメンバーは、確実に魔法石を使える。
訓練次第で、大きな魔法も作れるようになるだろう…。
不意に、木々が大きく揺れ、風が身体を包んだ。
…何?『風霊』?
人くらいの大きさの『風霊』、『風使い』が姿をあらわす。
『風使い』は、『風霊』より魔力を多く持ち、人の言葉を話すことも出来る。
時折『風霊』に魔力を与え、一時的にだが、『風使い』の姿になり伝えたいことを話してもらうこともある。
突然の『風使い』の姿に周りが、硬直し、茫然とこちらを見ている。
『風使い』は必死の表情で、リーンに訴えかけた。
「山奥…大雨が止まらない…。オケの谷…水が…流れ込んで…森が流されてしまう…」
恐れていた事が起こってしまった!
この子達は伝える事しか出来ない…。
「伝えてくれて、ありがとう」
『風使い』は微笑み姿を消す。
急がなくてはいけない!
「オケの谷へ行く!洪水が起こる!」
どこまで押さえられる!
「洪水?!」
ルークは蒼白になり、素早く指示を出す。
「オケの谷の下流に集落マミヤがある!避難させろ!」
「はい!」
アオが直ぐに屋敷の方へ駆けていった。
何処かに伝令を伝える為だろう…。
「その下流の街にも、川へ近付かないよう言った方がいい…」
リーンがそう言うと、ルークはクルリと振り向き近付いて来る。
「あの子達が伝えてきたのなら、相当な量の水が流れ込んでるはず…」
確証はないが、もっと、下流まで影響が出てしまうかもしれない…。
ルークはリーンの正面で立ち止まり、こっちをじっと見つめてくる。
「ガーディ、王都へ連絡しろ!河川の状況を確認するように!避難民の誘導を急ぐように!」
「はい!」
ガーディは、一礼して屋敷の方へ走っていく。
ざわつく訓練生の中から青い顔をした、ジェスとカズキがこちらに近付いて来る。
「オケの谷へ、先に行く」
リーンがそう言うと、ルークは真剣な表情で、何故か睨んで言った。
「俺も連れていけ!」
「ルーク様!」
ジェスが慌てて止めるように、声をかけてくる。
ルークは魔法は使えないが、魔力の塊…。
私の魔力だけで、どこまで押さえれるのかわからない…。
ルークから魔力の供給が出来れば、少しでも多くの水を止めれるかもしれない…。
リーンは持ってきていた魔法石のビンを手に取り、ルークに手を伸ばす。
「分かりました。飛びます」
「ジェス!追跡移動で追ってこい!」
ルークがリーンの手を取ると、その場から姿を消した。
慌ててその後を追うように、ジェスも消える…。
残されたカズキは、訓練生に、着替えて出動の準備をするように言い、彼らは慌てて部屋へ戻っていった。
「ジェスの連絡待ちで、追いかけますか…」
カズキは少し離れた所にある馬小屋に向かい、移動用の馬車の準備をし始める。
ルークの周りには、それぞれの役目を持って側に使えている者達がいる。
彼らは、旅する仲間であり、友人であり、有事に対しての側近でもある…。
なので高度な魔法が使え、向上心が強い者達が集っている事を、リーンは知っているはずが無かった…。
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