神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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緑の館

森の湖 3 ~葛藤~

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 リーンと一緒に、湖の中心まで泳ぐと、リーンは手を空中に付きだし、小さな魔方陣を作り出した。
「『空の石』」
 空気がぐるぐるとうねり、手のひらに集まって収縮するし、透明な小さな石が現れた。
「そうやって、作ったんだ…」
 やはり見たこともない、不思議な魔法を使う…。
「…何人かは作れるようになるよ」
 リーンはそう言って、『空の石』を口に含み湖の中へと潜ったので、ルークも後に続いて潜った。
 
 湖底まで潜ると、リーンが手を握ってきたので、驚いて振り向くと、リーンの漆黒の髪が水に揺れ、左耳の耳飾りがキラキラと輝く…。
『触れている時だけ、思っている事が魔力で声として伝わる…。何か話してみて…』
『…綺麗だな…』
 ルークは頬を染め、リーンを見つめる。
 まるで、おとぎ話の水霊すいれいが、現実に姿を現したようで、幻想的でドキリとする。
 リーンはクスリと笑い、湖底を見回した。
『そうだね。…街に近くて、これだけ澄んだ湖は、なかなか無いよ…』
『…。』
 湖底の事ではない…!
 リーンが…まあ、いい…。
 ルークは一瞬顔を歪め、湖を見渡す。
『何?』
『何でもない…』
 きっと何を言っても伝わらないだろう…。
 周りから、どんな風に見えているかなんて、気にしないみたいだから…。
 リーンはルークと手を繋いだまま、湖底を少し歩いた。
 触れると魔力が伝わると、言っていたが、もう、大丈夫なのだろうか?
 湖底は幻想的で綺麗な風景を見せてくれる。
 水草や魚、湖底に沈んだままの倒木…。
 時折光が射し込み、水中の柔らかな美しさを照す。
 透明度が高いから、ココまで綺麗に見えるのだろう…。
 リーンが指を差して、見る様に伝えてくる。
『あそこに、ブクブクと泡が出てるの見える?』
 不思議と、その一帯だけだが、湖底から気泡が出ている。 
『ああ、あれは?』
『水が涌き出ている場所だよ』
 ルークは驚いて、リーンを振り返った。
『この湖が綺麗なのは、湧き水が有るから…。参考までに知っておいて。ココに浄化槽を付ければ、飲み水が確保できる。…最終手段だから…使うことが無いように祈るけど…』
 こんな所に湧き水…。
『…。』
『そろそろ湖から出よう…』
 リーンに腕を引っ張り上げ、水面を目指した。
 
 岸辺に戻り、湖から出ると、どっと重力が身体にかかり、浅瀬に寝転がり、空を見上げて荒い息をしていた。
「かなり…体力を…消耗するな…」
「そうだね。水圧が身体にかかるから、最初は短時間の方がいいよ…」
 ルークはゆっくりと身体をおこし、隣に座るリーンを見た。
 濡れた漆黒の髪から水滴がポタリポタリと落ち、ほぼ裸体の濡れた色白い綺麗な身体…。
 忘れていた欲情がたげてくる。
 …自分がどう見られるかを気にしなさすぎで、無頓着だ。
「…リーンは」
 ルークが顔を近付けると、リーンの視線が反らされ、なんとなくムッとして、手を伸ばし両頬を掴まえて上を向かせ、リーンの森の緑色をした瞳と視線をわせる。
「ルーク…?」
「…リーンは…無防備すぎる…」
 そう言って、顔を近付け、唇を触れさせた。
 柔らかくて、しっとりとした唇…。
 唇を一度離し、嫌がってない事を確認すると、今度は吸い付くように口の中に舌を入れた。
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