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旅の始まり
屋敷
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カタヤの町を横切り、昼過ぎにカザナの街へ入った。
何度か休憩に馬車を止めたのだか、リーンは殆ど眠っていた。
ルークが馬車から降りるとき、リーンの身体を動かした時に少し目を覚ましただけで、ずっと身体を横たえていた。
「…よく眠っているな…。」
時折、寝顔を眺め、リーンの髪を撫でる。
それが自然な感じがして、触り心地が良くて、とても不思議だった。
馬車はカザナの街を横手に、山間に向かう道に反れ、木々に囲まれた、緩やかな登りの道を上がり始めた。
しばらく登ると、リーンはピクリと動き目を覚ました。
「…結界…。これは…ミーネ…」
そう言って、安心したように再び目を閉じる。
「…結界の…境目…分かるんだ…」
アオがリーンの顔を覗き込む。
「やっぱり俺達…とんでもない人を連れてきた?」
ジェスは苦笑いして、リーンを見る。
「弱ってて、これだろ。本来の魔力、どれだけ有るんだよ…」
ガーディは頭をわしわしと掻きながら、リーンを見る。
当の本人は静かに眠っているだけ…。
程なくして山の中腹に有る、森のお屋敷に着いた。
ここには、魔法の訓練所や実験室、剣術を行える施設が隣接している屋敷で、彼らがカザナに滞在するときは、ここを利用している。
訓練生の為の宿舎もあり、いつも賑やかだ。
馬車が屋敷前に着き、体格のいいガーディが眠るリーンを抱き上げ、屋敷の中へ入った。
客室を準備させ、ベッドに寝かせ靴を脱がした。
そして、ふと思う。
「荷物…何も持ってなかったよな…?」
「そう言えば…。持ち物は腰に下げたポーチだけだったような…」
「…。」
一体、どんな旅をしているんだろうか…。
とても不思議で仕方なかった。
馬車に乗せてあった荷物を下ろし、リーンの様子を見に、ルークとカズキが部屋を訪れると、リーンはベッドで身体を起こし、ぼんやりと座っていた。
こちらに気付くと、気まずそうに笑う。
「…ずっと眠ってたんだね…。連れてきてくれて、ありがとう…」
「かまわない。滞在中は、この部屋を使ってくれ。あと、この屋敷の案内をカズキに頼んだから、見て回ってくれ」
屋敷の敷地は広いから、皆、初めは迷う事が多い。
「わかった。…ミーネ。…『宿り木』のミーネはこの近くにいるの?」
…『宿り木』のミーネ。
この屋敷の敷地内を包む結界を作ってくれている、巨大な木に宿る木霊の事。
「後でご案内します。先に食事をしましょう」
カズキはそう言って微笑んだ。
食事のあと、ルークはカズキとリーンと共に、『宿り木』のミーネの元に向かった。
魔法の訓練所を横切り、森の奥へと進んでいく。
すると、突如、巨大な木が姿を現す。
両手を広げたぐらい以上の幅のある太い巨木だ。
「ここで、しばらく眠る」
リーンは巨木を見上げ微笑む。
…もしかして、ここに居る『木霊』達が見えているんだろうか。
「では夕方、迎えに来ますね」
カズキがそう言うと、リーンは木の根本に座り、もたれ掛かって目を閉じた。
木々がザワザワと動き柔らかな風が吹く。
カズキは、目を見開き硬直していた。
…彼らが見えているんだろう…。
「カズキには、見えるのか?」
「…ええ。御神木様が、側に居られます。…小さい子達も…。寝顔を見に来られているみたいです…」
興奮して、声が震えている。
「…これだけ、ハッキリと見えるのは…初めてです」
カズキは感動して身体が震えていた。
…だが、魔力の無い俺には見えない。
「ここでリーンの様子を見ていてくれ。俺達は報告に行く」
カズキは我に返り、返事する。
「分かりました。何かあったら直ぐに連絡します」
そして、ルークはその場を立ち去った。
やはり不思議な人だ…。
その日からリーンは客人として、屋敷に滞在することになり、魔法を教える事になる。
『宿り木』のもとで身体を休め、魔力を回復しながら…。
…まだ、『風霊』は、騒がない。
何度か休憩に馬車を止めたのだか、リーンは殆ど眠っていた。
ルークが馬車から降りるとき、リーンの身体を動かした時に少し目を覚ましただけで、ずっと身体を横たえていた。
「…よく眠っているな…。」
時折、寝顔を眺め、リーンの髪を撫でる。
それが自然な感じがして、触り心地が良くて、とても不思議だった。
馬車はカザナの街を横手に、山間に向かう道に反れ、木々に囲まれた、緩やかな登りの道を上がり始めた。
しばらく登ると、リーンはピクリと動き目を覚ました。
「…結界…。これは…ミーネ…」
そう言って、安心したように再び目を閉じる。
「…結界の…境目…分かるんだ…」
アオがリーンの顔を覗き込む。
「やっぱり俺達…とんでもない人を連れてきた?」
ジェスは苦笑いして、リーンを見る。
「弱ってて、これだろ。本来の魔力、どれだけ有るんだよ…」
ガーディは頭をわしわしと掻きながら、リーンを見る。
当の本人は静かに眠っているだけ…。
程なくして山の中腹に有る、森のお屋敷に着いた。
ここには、魔法の訓練所や実験室、剣術を行える施設が隣接している屋敷で、彼らがカザナに滞在するときは、ここを利用している。
訓練生の為の宿舎もあり、いつも賑やかだ。
馬車が屋敷前に着き、体格のいいガーディが眠るリーンを抱き上げ、屋敷の中へ入った。
客室を準備させ、ベッドに寝かせ靴を脱がした。
そして、ふと思う。
「荷物…何も持ってなかったよな…?」
「そう言えば…。持ち物は腰に下げたポーチだけだったような…」
「…。」
一体、どんな旅をしているんだろうか…。
とても不思議で仕方なかった。
馬車に乗せてあった荷物を下ろし、リーンの様子を見に、ルークとカズキが部屋を訪れると、リーンはベッドで身体を起こし、ぼんやりと座っていた。
こちらに気付くと、気まずそうに笑う。
「…ずっと眠ってたんだね…。連れてきてくれて、ありがとう…」
「かまわない。滞在中は、この部屋を使ってくれ。あと、この屋敷の案内をカズキに頼んだから、見て回ってくれ」
屋敷の敷地は広いから、皆、初めは迷う事が多い。
「わかった。…ミーネ。…『宿り木』のミーネはこの近くにいるの?」
…『宿り木』のミーネ。
この屋敷の敷地内を包む結界を作ってくれている、巨大な木に宿る木霊の事。
「後でご案内します。先に食事をしましょう」
カズキはそう言って微笑んだ。
食事のあと、ルークはカズキとリーンと共に、『宿り木』のミーネの元に向かった。
魔法の訓練所を横切り、森の奥へと進んでいく。
すると、突如、巨大な木が姿を現す。
両手を広げたぐらい以上の幅のある太い巨木だ。
「ここで、しばらく眠る」
リーンは巨木を見上げ微笑む。
…もしかして、ここに居る『木霊』達が見えているんだろうか。
「では夕方、迎えに来ますね」
カズキがそう言うと、リーンは木の根本に座り、もたれ掛かって目を閉じた。
木々がザワザワと動き柔らかな風が吹く。
カズキは、目を見開き硬直していた。
…彼らが見えているんだろう…。
「カズキには、見えるのか?」
「…ええ。御神木様が、側に居られます。…小さい子達も…。寝顔を見に来られているみたいです…」
興奮して、声が震えている。
「…これだけ、ハッキリと見えるのは…初めてです」
カズキは感動して身体が震えていた。
…だが、魔力の無い俺には見えない。
「ここでリーンの様子を見ていてくれ。俺達は報告に行く」
カズキは我に返り、返事する。
「分かりました。何かあったら直ぐに連絡します」
そして、ルークはその場を立ち去った。
やはり不思議な人だ…。
その日からリーンは客人として、屋敷に滞在することになり、魔法を教える事になる。
『宿り木』のもとで身体を休め、魔力を回復しながら…。
…まだ、『風霊』は、騒がない。
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