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旅の始まり
膝枕
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木の下で眠っていた漆黒の髪の青年リーンに、魔力が有ると教えられ、知らない魔法を教えてもらう変わりに、魔力が回復するまで、俺達の住む屋敷に来てもらうことになった。
夕食を食べ暗くなる前に、カザナの街に向かったアオとカズキが、馬車に乗って戻ってきた。
明日の朝には再びカザナに向かう事が出来る。
リーンの話を聞きたかったが、夕食を食べ、直ぐに寝入ってしまった。
まだ気だるそうだったので、眠る事で回復するのなら仕方ない。
その夜は、交代で火の番をして仮眠を取り、朝を向かえた。
まだ眠るリーンをそっとして置いて、夜営のテントを片付け馬車に乗せ、朝食の準備をしていると、匂いに誘われてか、リーンが目を覚めした。
「おはよう。軽く朝食、食べたら出発するから」
「…おはよう…」
朝が弱いのか、まだ、ぼんやりとしているリーンが、保護欲をそそって…かわいい…。
…んっ?…かわいいってなんだ?
「ルーク様。」
ガーディがスープを入れた容器を差し出して来たので、それを受け取る。
「ありがとう」
「リーンも、どうぞ。…ここに置きますね」
まだ、ぼんやりしているリーンの手元が怪しいので、地面に食器が置かれた。
「…ありがとう…」
総勢六人になったが、食事は静かなもので、食器の音と食べる音だけが響いていた。
食事を終え、手早く片付けると馬車に乗り込んだ。
カズキは馬車を操るため前に。
馬車の内部は長期滞在様になっているため、左右に長い柔らかい椅子があり、この中が収納庫となっていて、特に狭い分けではないから余裕で座ることが出来る。
夜営テントの柱や軽いものは、屋根内の左右や下に収納されている為、少し天井までの高さは低いが、座っての移動になるので余り気にはならない。
馬車の奥にルークが座り、リーン、ジェスと座る。
反対側に少し荷物が乗せられていて、アオ、ガーディと座った。
移動中の話は『守護の実』の、話しになった。
リーンの話しによると、昔、森の中で休憩に眠ったら、捕まって、死にそうな目に遭ったらしく、一人で眠る時に守ってくれる『守護の実』を作ったそうだ。
『木霊』と『地霊』をミックスして、作ってそうで、…この辺からは俺にはわからない。
『木霊』を使うことの出来るカズキは興味深々で、馬車を運転しながら色々と質問していた。
安全に運転してくれよ、と、思いながら、話を聞いていると、今すぐにでも言われた事をやってみたくて、ウズウズするカズキがいた。
「…安全に帰ることが先だぞ!」
「…はい…。」
少し落胆した様子を見ていたリーンが、滞在中に教えるからと、約束まで取り付けていた。
ふと静かになり、左隣を見ると、リーンはウトウトと眠りかけていた。
危ないな…と、思っていると、ガタガタと馬車が揺れる振動と共に、こちらに寄りかかって、もぞもぞと動き、そのまま眠ってしまった。
さらりとした髪がルークの肩にかかる。
「…。」
四人は顔を見合せる。
「眠ったのか?」
「ルーク様、変わりましょうか?」
斜め向かいに座っていたガーディが声をかけてくる。
「構わない。…いっそ、横に寝かせるか?」
ルークは身体を少しずらし、膝の上にリーンの頭を乗せれるように馬車の奥に動く。
そして、ゆっくりと膝の上に横に寝させると、もぞもぞと動いて、そのまま寝息をたてて眠りについた。
「ルーク様…」
ガーディが諦めた様にため息をつく。
「気に入られたんですね。膝枕までするなんて…」
…俺は、気を許したのだろうか?
…昨日、手を降り離された時は、驚き、ショックだった。
「…寄りかかって来たって事は、直接触れなければ大丈夫みたいだな。…触れると…俺の魔力が流れ込むらしいしから…」
良く分からないが、布越しだと魔力は余り流れ込まないのだろうか?
向かいに座るアオが、じっとリーンの寝顔を見ていて、おもむろに立ち上がり、リーンの髪に触れ、金色の耳飾りに触れる。
「…眠っていると、俺達と同世代に見えるが、知識や魔法、魔力の使い方が、かなりの経験者としか思えない」
アオが、リーンに付いてる耳飾りが気になるようで、何度も触れている。
「森と木とか言っていたから、『木霊』系の使い手かもしれないですね」
静かに静観していたジェスが、困惑しながら隣で眠るリーンを見る。
「…『風霊』が…、どこへ連れていくんだ!と、騒いでいるんですけど…。カザナの森のお屋敷と、言っておけばいいですよね?」
「ああ、本当の事だし…てか、…『風霊』?」
「…はい。」
三人は顔を見合せる。
前で馬車を運転するカズキが、それを聞いて笑う。
「それでですね。さっきから視界が悪くて…『風霊』が、行く手を阻んでいるんですね」
「…。」
カズキは少し考えて、ジェスに言った。
「…カザナのミーネ様の所にお連れすると、伝えて下さい。それで分かるはずです」
そんな話をしていると、視界が戻り、ジェスが遮っていた風も収まった。
「…。」
「…リーンは…何者なんだ…?」
ルークが、ボソりと呟く。
とんでもない人を拾ったのかもしれなかった。
夕食を食べ暗くなる前に、カザナの街に向かったアオとカズキが、馬車に乗って戻ってきた。
明日の朝には再びカザナに向かう事が出来る。
リーンの話を聞きたかったが、夕食を食べ、直ぐに寝入ってしまった。
まだ気だるそうだったので、眠る事で回復するのなら仕方ない。
その夜は、交代で火の番をして仮眠を取り、朝を向かえた。
まだ眠るリーンをそっとして置いて、夜営のテントを片付け馬車に乗せ、朝食の準備をしていると、匂いに誘われてか、リーンが目を覚めした。
「おはよう。軽く朝食、食べたら出発するから」
「…おはよう…」
朝が弱いのか、まだ、ぼんやりとしているリーンが、保護欲をそそって…かわいい…。
…んっ?…かわいいってなんだ?
「ルーク様。」
ガーディがスープを入れた容器を差し出して来たので、それを受け取る。
「ありがとう」
「リーンも、どうぞ。…ここに置きますね」
まだ、ぼんやりしているリーンの手元が怪しいので、地面に食器が置かれた。
「…ありがとう…」
総勢六人になったが、食事は静かなもので、食器の音と食べる音だけが響いていた。
食事を終え、手早く片付けると馬車に乗り込んだ。
カズキは馬車を操るため前に。
馬車の内部は長期滞在様になっているため、左右に長い柔らかい椅子があり、この中が収納庫となっていて、特に狭い分けではないから余裕で座ることが出来る。
夜営テントの柱や軽いものは、屋根内の左右や下に収納されている為、少し天井までの高さは低いが、座っての移動になるので余り気にはならない。
馬車の奥にルークが座り、リーン、ジェスと座る。
反対側に少し荷物が乗せられていて、アオ、ガーディと座った。
移動中の話は『守護の実』の、話しになった。
リーンの話しによると、昔、森の中で休憩に眠ったら、捕まって、死にそうな目に遭ったらしく、一人で眠る時に守ってくれる『守護の実』を作ったそうだ。
『木霊』と『地霊』をミックスして、作ってそうで、…この辺からは俺にはわからない。
『木霊』を使うことの出来るカズキは興味深々で、馬車を運転しながら色々と質問していた。
安全に運転してくれよ、と、思いながら、話を聞いていると、今すぐにでも言われた事をやってみたくて、ウズウズするカズキがいた。
「…安全に帰ることが先だぞ!」
「…はい…。」
少し落胆した様子を見ていたリーンが、滞在中に教えるからと、約束まで取り付けていた。
ふと静かになり、左隣を見ると、リーンはウトウトと眠りかけていた。
危ないな…と、思っていると、ガタガタと馬車が揺れる振動と共に、こちらに寄りかかって、もぞもぞと動き、そのまま眠ってしまった。
さらりとした髪がルークの肩にかかる。
「…。」
四人は顔を見合せる。
「眠ったのか?」
「ルーク様、変わりましょうか?」
斜め向かいに座っていたガーディが声をかけてくる。
「構わない。…いっそ、横に寝かせるか?」
ルークは身体を少しずらし、膝の上にリーンの頭を乗せれるように馬車の奥に動く。
そして、ゆっくりと膝の上に横に寝させると、もぞもぞと動いて、そのまま寝息をたてて眠りについた。
「ルーク様…」
ガーディが諦めた様にため息をつく。
「気に入られたんですね。膝枕までするなんて…」
…俺は、気を許したのだろうか?
…昨日、手を降り離された時は、驚き、ショックだった。
「…寄りかかって来たって事は、直接触れなければ大丈夫みたいだな。…触れると…俺の魔力が流れ込むらしいしから…」
良く分からないが、布越しだと魔力は余り流れ込まないのだろうか?
向かいに座るアオが、じっとリーンの寝顔を見ていて、おもむろに立ち上がり、リーンの髪に触れ、金色の耳飾りに触れる。
「…眠っていると、俺達と同世代に見えるが、知識や魔法、魔力の使い方が、かなりの経験者としか思えない」
アオが、リーンに付いてる耳飾りが気になるようで、何度も触れている。
「森と木とか言っていたから、『木霊』系の使い手かもしれないですね」
静かに静観していたジェスが、困惑しながら隣で眠るリーンを見る。
「…『風霊』が…、どこへ連れていくんだ!と、騒いでいるんですけど…。カザナの森のお屋敷と、言っておけばいいですよね?」
「ああ、本当の事だし…てか、…『風霊』?」
「…はい。」
三人は顔を見合せる。
前で馬車を運転するカズキが、それを聞いて笑う。
「それでですね。さっきから視界が悪くて…『風霊』が、行く手を阻んでいるんですね」
「…。」
カズキは少し考えて、ジェスに言った。
「…カザナのミーネ様の所にお連れすると、伝えて下さい。それで分かるはずです」
そんな話をしていると、視界が戻り、ジェスが遮っていた風も収まった。
「…。」
「…リーンは…何者なんだ…?」
ルークが、ボソりと呟く。
とんでもない人を拾ったのかもしれなかった。
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