先読み~あなたが一緒じゃなければ眠れない~⦅完結⦆

ゆう

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番外編

出張 2

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 それから数日は、ハズキさんは出張の話しは聞かなかった。
 いつから出掛けるのか、いつ頃戻る予定なのか…。
 まだ、決定はしていないのだろう…。
 そう思っていた。


「明日からキュメント国へ行くことになったらか…」
 週の半ばになって、急に言われた。
 それも、その日の仕事が終わって、夜にハズキさんの部屋を訪れた時にだ。
「…急に…なんだね…」
 アヤトが戸惑いながら言うと。
「本当はもっと早く来いって言われてるんだけど、段取りがなかなか付かなくて…」
 何の段取りだ…?
 アヤトが首を傾げると、ハズキは得意そうに微笑んで言う。
「約束通り、サクラを説得したから」
「はぁ?」
「ずっとは無理だけど、アヤトもキュメント国に来れるよ」
「えっ?」
 ハズキの説明を聞くところによると、金曜日の夕食の片付けが終わったら、屋敷の小型飛行船に乗ってキュメント国へ入国。
 手続きなどの許可はとってあるそうだ。
 ハズキさんが行く施設の近くの、小型飛行船を所有している屋敷の離発着所に着陸させてもらって、ソコから魔動車に乗って施設へ…。
 夜には着くから、翌日土曜日、一日はソコに泊まって、日曜日の昼には再び、小型飛行船に乗って屋敷に戻る…と言う、強行な移動。
 …まぁ、日曜日、早めに帰れば、翌日の朝食と弁当の下準備は出きるが…。
「無茶すぎない?」
「アヤトはね、乗り物に乗っているだけで僕の所に連れてきてもらえるから、心配ないよ」
 …そう言う問題か…?
「小型飛行船はラバードの運転だよ」
 ラバードは、部署は違うがハズキさんと一緒の連合軍に所属している、この屋敷の住人の一人だ。
 緊急時の小型飛行船を運転している人だが…。
「日程を調整してもらったら問題なし!その方が安心できるでしょう」
「まぁ…」
 てか、ラバードの日程を変更してもらった…?
「どうせ土曜日の夕食は、皆、半分外食だし、休んでも問題ないでしょう」
 あま、それはそうだが…。
「金曜日の夜に、土曜日の朝の分は準備してね。土曜日の昼過ぎには、パン屋さんがお惣菜パンを持ってきてくれるから後は大丈夫!」
「はぁ?」
 いつの間に、パン屋さんにお惣菜パンを頼んだんだ…?
「配達を頼んじゃった」
 ハズキはニコニコと笑う。
「その日はカズが休みだから、受け取ってくれるって」
「…。」
 えっと…土曜日の夜と日曜日の朝は、お惣菜パンでしのげと…。
「スープ系だけ、多めに作っといてあげて。保温鍋に入れて置いてあれば、好きなだけ茶碗に入れて食べてもらえば良いから」
「…。」
 えっと…もしかして、この数日、その段取りをしていた…?
「ねっ、大丈夫でしょ」
 ハズキはニコニコと笑う。
 その労力…サクラさんは、別の事に使って欲しいと思っているだろうな…。
 サクラさんが頭を抱える様子が目に浮かぶ…。
 それだけお膳立てされて、行かないって選択は無いよな…。
 アヤトは小さくため息をついた。
 回りを巻き込みすぎだって…。
「しばらく会えないし、明日の朝一番に飛ぶから、ちょっとだけしよう」
 そう言ってハズキがアヤトの身体を抱え上げ、シャワールームへと連れ込まれた。
「…金曜日の夜、向こうで待ってるから」
 そう言ってハズキはアヤトに口付けてきた。



 目が覚めると、ベットの隣にハズキさんは居なかった。
 温もりだけが残っている。
 ぼんやりと見上げると、珍しく連合軍の制服を着たハズキさんが、アヤトの事を見下ろしいた。
「今日は僕の方が早かったね」
 そう言ってハズキが微笑む。
 今、何時だろう…。
「朝一で飛ぶから、そろそろ行くね」
 ハズキはそう言って身体を屈め、アヤトに口付けしてきた。
 軽く触れるだけの優しい口付け…。
「向こうで待ってるから」
 そう言って、ハズキは部屋を出ていった。

 ぼんやりとしていたアヤトの思考が回りだし、今の状況を理解して、真っ赤になってベットに沈む。
 ハズキさんの制服姿!久しぶり!
 いつもと違って、カッコいい…。
 アヤトは一人、み悶えていた。


 朝食が終わり、後片付けをしながら、アヤトはふと思う。
 …金曜日に、土曜日の朝食と数人のお弁当の準備…。
 買い出しは…。
 えっと…僕って、キュメント国の施設に、突然お邪魔する事になったんだから…何か手土産持って行った方が良いよね…。
 必要ない…?
 う~ん、分かんないから、後でラバードに聞いてみよう…。
 あっ、ラバードには、連れていってくれるお礼に、ミートパイでも作ろうか…。
 うん…。
 小型飛行船を離発着させてもらえるお宅にも、何か持って行った方が良い…?
 んんっ…?
 週末までに、しなくてはいけない僕の仕事が増えてる…?
 アヤトは頭を押さえながら、週末の段取りを考え始めた。



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