15 / 38
日常
爆風
しおりを挟む
翌日、朝食が終わり、後片付けをしていると、ハズキが声をかけてきた。
「昨日言ってた、家庭菜園をする場所、決まったからね」
「…。」
「来週には、畑用の土を持ってきてくれるって」
ハズキはニコニコと笑って言う。
来週って…。
段取り早すぎ…。
「でね、場所を見てもらいたいんだ」
アヤトはタメ息をついて、食器を片付けるのを止めた。
『終わったら』と言うと、ずっとココで片付けるアヤトを待っているのが目に見えたからだ。
「分かった」
アヤトはエプロンを外し、調理場から食堂へと出て、ハズキと一緒に外に向かった。
屋敷の敷地内の広い庭は、所々に木々が生えているだけで、特に何もない。
かつては綺麗に整備され、この屋敷の庭園にでもなっていただろう、な残りの道は存在するが、本当に何もなかった。
枯れた木々や生け垣は、有るだけで寂しく思えたので、住人の手をかりて、少しずつ撤去していったからでもある。
そして、ちょうど屋敷の側面、ハズキ達の部屋がある前に来ると、地面に木で引っ掻いたような後が付いていた。
「この辺」
ハズキはニコニコとしながら言う。
「僕の部屋の真横だし、木の影にもならないし、日当たりは良好だと思うよ」
「…。」
確かに側に植えてある木からは、少し離れているので、影にはならない。
特に何もない、平坦な場所だ。
「水はね、今度、ライガが休みの時に、水道管をこっちにも付けてくれるって。水撒きしたり、手を洗ったりするのに必要でしょう」
「…うん」
と、言うことは、蛇口を付けて、排水溝も考えなくてはいけない。
大仕事になりそうだ。
今度、甘いものを準備しておこう。
ハズキと二人でココに植えるものは何が良いかと話していると、大きな地響きのような音が響いてきて、暴風のような風が吹き荒れ屋敷を揺らした。
なっ何?!
アヤトは風に飛ばされないように身を構え、それと同時に暖かいハズキの腕に包まれた。
こんな時だけど、ドキドキする…。
風が治まり、ハズキがアヤトからは離れ、少し寂しいな…と、思いながらも、さっきの音は何の音なのかと、辺りを見回すが、何も起こった様子はない…。
「上だよ…」
ハズキにそう言われて空を見上げると、遠くの方で煙をあげて落下してくる物体がいくつも見えた。
あれは何…?
アヤトとハズキは呆然と空を見上げていた。
「ハズキ。何が起こった!」
その声に振り向くと、カイトが二階の部屋から身を乗り出し聞いてくる。
ハズキが上空を指差し言う。
「…飛行船が…爆発した…」
飛行船…。
カイトは空を見上げ、呆然と見ていて、何かを思い出したように悪態を付いて、部屋に戻った。
どうしたんだろう…。
いつも冷静なカイトさんが、落ち着きなかった。
…もしかして、飛行船に誰か知ってる人が乗っていたのか?
「緊急召集がかかるかも知れない」
ハズキがポソリと言う。
緊急召集は、連合軍で何か起こった場合、人手不足を補うため休暇中でも連絡が来て、連合軍に向かわなくてはならない…。
アヤトがココで働きだして、今までに緊急招集は数回だ。
一年に一回程度。
それだけ何事もなく、平穏な日々が続いていると言うこと…。
しばらくすると庭の奥に有る、小型飛行船の格納庫に向かうカイトの姿が見えた。
やっぱり招集がかかったのだろう…。
アヤトがハズキをチラリと見ると、先ほどのニコニコした表情とは違い、真剣な心配そうな顔をして、格納庫に向かうカイトの背中を見ていた。
…忘れてしまいそうになるけれど、ハズキさんも、連合軍の一員なんだよね…。
いつか、ハズキさんにも招集がかかって、連合軍に行かなくてはいけない日が来るのかも知れない…。
そう思うと、胸がズキズキした。
いつも屋敷にいるハズキさんがいない…。
そんな日は来て欲しくないと思ってしまった。
「昨日言ってた、家庭菜園をする場所、決まったからね」
「…。」
「来週には、畑用の土を持ってきてくれるって」
ハズキはニコニコと笑って言う。
来週って…。
段取り早すぎ…。
「でね、場所を見てもらいたいんだ」
アヤトはタメ息をついて、食器を片付けるのを止めた。
『終わったら』と言うと、ずっとココで片付けるアヤトを待っているのが目に見えたからだ。
「分かった」
アヤトはエプロンを外し、調理場から食堂へと出て、ハズキと一緒に外に向かった。
屋敷の敷地内の広い庭は、所々に木々が生えているだけで、特に何もない。
かつては綺麗に整備され、この屋敷の庭園にでもなっていただろう、な残りの道は存在するが、本当に何もなかった。
枯れた木々や生け垣は、有るだけで寂しく思えたので、住人の手をかりて、少しずつ撤去していったからでもある。
そして、ちょうど屋敷の側面、ハズキ達の部屋がある前に来ると、地面に木で引っ掻いたような後が付いていた。
「この辺」
ハズキはニコニコとしながら言う。
「僕の部屋の真横だし、木の影にもならないし、日当たりは良好だと思うよ」
「…。」
確かに側に植えてある木からは、少し離れているので、影にはならない。
特に何もない、平坦な場所だ。
「水はね、今度、ライガが休みの時に、水道管をこっちにも付けてくれるって。水撒きしたり、手を洗ったりするのに必要でしょう」
「…うん」
と、言うことは、蛇口を付けて、排水溝も考えなくてはいけない。
大仕事になりそうだ。
今度、甘いものを準備しておこう。
ハズキと二人でココに植えるものは何が良いかと話していると、大きな地響きのような音が響いてきて、暴風のような風が吹き荒れ屋敷を揺らした。
なっ何?!
アヤトは風に飛ばされないように身を構え、それと同時に暖かいハズキの腕に包まれた。
こんな時だけど、ドキドキする…。
風が治まり、ハズキがアヤトからは離れ、少し寂しいな…と、思いながらも、さっきの音は何の音なのかと、辺りを見回すが、何も起こった様子はない…。
「上だよ…」
ハズキにそう言われて空を見上げると、遠くの方で煙をあげて落下してくる物体がいくつも見えた。
あれは何…?
アヤトとハズキは呆然と空を見上げていた。
「ハズキ。何が起こった!」
その声に振り向くと、カイトが二階の部屋から身を乗り出し聞いてくる。
ハズキが上空を指差し言う。
「…飛行船が…爆発した…」
飛行船…。
カイトは空を見上げ、呆然と見ていて、何かを思い出したように悪態を付いて、部屋に戻った。
どうしたんだろう…。
いつも冷静なカイトさんが、落ち着きなかった。
…もしかして、飛行船に誰か知ってる人が乗っていたのか?
「緊急召集がかかるかも知れない」
ハズキがポソリと言う。
緊急召集は、連合軍で何か起こった場合、人手不足を補うため休暇中でも連絡が来て、連合軍に向かわなくてはならない…。
アヤトがココで働きだして、今までに緊急招集は数回だ。
一年に一回程度。
それだけ何事もなく、平穏な日々が続いていると言うこと…。
しばらくすると庭の奥に有る、小型飛行船の格納庫に向かうカイトの姿が見えた。
やっぱり招集がかかったのだろう…。
アヤトがハズキをチラリと見ると、先ほどのニコニコした表情とは違い、真剣な心配そうな顔をして、格納庫に向かうカイトの背中を見ていた。
…忘れてしまいそうになるけれど、ハズキさんも、連合軍の一員なんだよね…。
いつか、ハズキさんにも招集がかかって、連合軍に行かなくてはいけない日が来るのかも知れない…。
そう思うと、胸がズキズキした。
いつも屋敷にいるハズキさんがいない…。
そんな日は来て欲しくないと思ってしまった。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
切なくて、恋しくて〜zielstrebige Liebe〜
水無瀬 蒼
BL
カフェオーナーである松倉湊斗(まつくらみなと)は高校生の頃から1人の人をずっと思い続けている。その相手は横家大輝(よこやだいき)で、大輝は大学を中退してドイツへサッカー留学をしていた。その後湊斗は一度も会っていないし、連絡もない。それでも、引退を決めたら迎えに来るという言葉を信じてずっと待っている。
そんなある誕生日、お店の常連であるファッションデザイナーの吉澤優馬(よしざわゆうま)に告白されーー
-------------------------------
松倉湊斗(まつくらみなと) 27歳
カフェ・ルーシェのオーナー
横家大輝(よこやだいき) 27歳
サッカー選手
吉澤優馬(よしざわゆうま) 31歳
ファッションデザイナー
-------------------------------
2024.12.21~

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる