先読み~あなたが一緒じゃなければ眠れない~⦅完結⦆

ゆう

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日常

爆風

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 翌日、朝食が終わり、後片付けをしていると、ハズキが声をかけてきた。
「昨日言ってた、家庭菜園をする場所、決まったからね」
「…。」
「来週には、畑用の土を持ってきてくれるって」
 ハズキはニコニコと笑って言う。
 来週って…。
 段取り早すぎ…。
「でね、場所を見てもらいたいんだ」
 アヤトはタメ息をついて、食器を片付けるのを止めた。
 『終わったら』と言うと、ずっとココで片付けるアヤトを待っているのが目に見えたからだ。
「分かった」
 アヤトはエプロンを外し、調理場から食堂へと出て、ハズキと一緒に外に向かった。
 
 
 屋敷の敷地内の広い庭は、所々に木々が生えているだけで、特に何もない。
 かつては綺麗に整備され、この屋敷の庭園にでもなっていただろう、な残りの道は存在するが、本当に何もなかった。
 枯れた木々や生け垣は、有るだけで寂しく思えたので、住人の手をかりて、少しずつ撤去していったからでもある。
 そして、ちょうど屋敷の側面、ハズキ達の部屋がある前に来ると、地面に木で引っ掻いたような後が付いていた。
「この辺」
 ハズキはニコニコとしながら言う。
「僕の部屋の真横だし、木の影にもならないし、日当たりは良好だと思うよ」
「…。」
 確かに側に植えてある木からは、少し離れているので、影にはならない。
 特に何もない、平坦な場所だ。
「水はね、今度、ライガが休みの時に、水道管をこっちにも付けてくれるって。水撒きしたり、手を洗ったりするのに必要でしょう」
「…うん」
 と、言うことは、蛇口を付けて、排水溝も考えなくてはいけない。
 大仕事になりそうだ。
 今度、甘いものを準備しておこう。
 ハズキと二人でココに植えるものは何が良いかと話していると、大きな地響きのような音が響いてきて、暴風のような風が吹き荒れ屋敷を揺らした。
 なっ何?!
 アヤトは風に飛ばされないように身を構え、それと同時に暖かいハズキの腕に包まれた。
 こんな時だけど、ドキドキする…。
 風が治まり、ハズキがアヤトからは離れ、少し寂しいな…と、思いながらも、さっきの音は何の音なのかと、辺りを見回すが、何も起こった様子はない…。
「上だよ…」
 ハズキにそう言われて空を見上げると、遠くの方で煙をあげて落下してくる物体がいくつも見えた。
 あれは何…?
 アヤトとハズキは呆然と空を見上げていた。
「ハズキ。何が起こった!」
 その声に振り向くと、カイトが二階の部屋から身を乗り出し聞いてくる。
 ハズキが上空を指差し言う。
「…飛行船が…爆発した…」
 飛行船…。 
 カイトは空を見上げ、呆然と見ていて、何かを思い出したように悪態を付いて、部屋に戻った。
 どうしたんだろう…。
 いつも冷静なカイトさんが、落ち着きなかった。
 …もしかして、飛行船に誰か知ってる人が乗っていたのか?
「緊急召集がかかるかも知れない」
 ハズキがポソリと言う。
 緊急召集は、連合軍で何か起こった場合、人手不足を補うため休暇中でも連絡が来て、連合軍に向かわなくてはならない…。
 アヤトがココで働きだして、今までに緊急招集は数回だ。
 一年に一回程度。
 それだけ何事もなく、平穏な日々が続いていると言うこと…。
 しばらくすると庭の奥に有る、小型飛行船の格納庫に向かうカイトの姿が見えた。
 やっぱり招集がかかったのだろう…。
 アヤトがハズキをチラリと見ると、先ほどのニコニコした表情とは違い、真剣な心配そうな顔をして、格納庫に向かうカイトの背中を見ていた。
 …忘れてしまいそうになるけれど、ハズキさんも、連合軍の一員なんだよね…。
 いつか、ハズキさんにも招集がかかって、連合軍に行かなくてはいけない日が来るのかも知れない…。
 そう思うと、胸がズキズキした。
 いつも屋敷にいるハズキさんがいない…。
 そんな日は来て欲しくないと思ってしまった。





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