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治療 ~ザザ~
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夕食の準備をしようとしていたザザは、警備用の魔道具が侵入者を感知し警報が鳴り、現地の魔道具から送られてきた映像に、木に寄りかかるフェイが映っていたので慌てて家を飛び出した。
何で裏山にいる!?
ザザは現場に駆けつけて、ぐったりと木に寄り掛かっているフェイを見たとき、血の気が引いた。
「フェイ?!」
疲れたような、顔色の悪いフェイが言う。
「…ザザさん。警備隊に連絡を…この近くの魔道具の所に…魔獣が…」
暗闇に、よく見ればフェイの左側の服が裂けているのが見えた。
「魔獣だと?!その傷は?!戦闘したのか?!」
眼を凝らし、服が切り裂かれ下から血が滲み出ているのがハッキリと見えた。
早く家に連れていって治療をしないと!
「…。」
ザザは身体をしゃがませ、傷の無い右側からフェイを両腕に抱き上げた。
思ったより軽い…。
ちゃんと飯食ってるのか?
ザザがそう思うと、フェイが身体の力を少し抜き、ザザの方に寄り掛かってきた。
体温が下がっている…。
ザザは、なるべく揺れないように、それでいて足早に家の方に向かった。
家の中に入ると、風魔法でフワリと布を浮かせ、ソファーの端に敷き、フェイをその上に下ろし、右側の手すり部分に寄りかからせた。
明るいところで見ると、フェイの傷は、左腕から腰にかけて広範囲にある…。
早く治療しなくてはいけないが、まだ意識はあるのでソレほど重傷ではないはずだ。
ザザは壁際に掛けられた、魔道具の通信端末を作動させ、警備隊へと連絡した。
猫族の警備隊、隊長のグアンは、級友であり、俺の作る短剣を使っているお得意様だ。
怒鳴るようにして魔獣を討伐するよう伝える。
こっちはさっさとフェイの治療をしたい!
直ぐに討伐の手配をすると言ったので、ザザは通信を切った。
ザザがフェイの側に戻ってくると、フェイは意識を失っていた。
ザザは傷の状態を見るため、空間魔法でナイフを取り出し、傷に触れないように注意して、フェイの服の袖口から肩に向かって服を切り裂いた。
そしてそっと服を捲ると、無惨に切り裂かれた腕から血が滴り落ちてくる。
ココではまずいな…。
ザザは服で傷口を押さえると、フェイの身体を下に敷いた布ごと抱き起こし、風呂場に向かった。
風呂場の扉を風魔法で開けて、布を下に敷いて、傷口を上にフェイをその上に寝かせると、再び服を捲り傷口をさらした。
そして水魔法を使って拳大くらいの水の珠を作り、聖魔法を流し込んで、フェイの血で汚れた傷口を洗い消毒し始めた。
苦痛にか、フェイの小さな呻き声が聞こえる。
濁った水を捨て、再び水の珠を作り、傷口を何度も消毒する。
傷口が綺麗になったところで、風魔法で引き寄せていたガーゼで押さえ、次の治療にかかった。
脇腹から太股にかけても切り裂かれていたので、フェイの腰に付けていた短剣と投げナイフのベルトを外す。
かろうじて、それらが有った場所は傷を負ってなかったが、投げナイフのベルトが切れかかっていた。
後で直しておこう…。
脇側の服をナイフで再び切り、傷口を露見させる。
こっちもかなり切り裂かれている…。
再び同じ様に水の珠を出して、傷口を消毒し、ガーゼで押さえた。
後は太股の真ん中から下の方…。
ザザはナイフで、ズボンの上から傷口に向かって切り開き、思わず手を止めた。
「…。」
黒のビキニタイプの下着だ…。
フェイに似合っているが…今は治療だ!
ザザは頭を切り替えて再び水の珠を出して、傷口を消毒し始めるが、どうしても視線がフェイの下着に向いてしまう。
治療!治療!治療!
ザザは、そう唱えながら消毒していた。
治療が終わる頃、家の玄関先が騒がしくなってきた。
警備隊の討伐隊が到着したようだ。
「ザザ!」
俺を呼ぶ、警備隊の隊長グアンの声が聞こえた。
フェイのこんな姿を誰にも見せたくない…。
ザザはフェイの側を離れ、風呂場から顔を出して叫んだ。
「庭と玄関ホールは使って良い!早く討伐してこい!」
ザザの声が届き、グアンが風呂場にやってくる。
「そのつもりだ」
そしてグアンが、何かを気にして辺りを見回す。
「…ところで、狼族のフェイが来てないか?お前の所に行くと言って出たそうだが…。店の前に荷物が置いてあった。あと、屋台で買った食事も一緒にな…」
店の前に荷物だと!
ザザは顔を歪める。
なんとも言えない複雑な心境だ。
「…今、治療中だ。魔獣を見つけたのはフェイだ」
グアンは一瞬驚いて、直ぐに冷静な顔に戻して返事した。
「…わかった」
そう言って、グアンは玄関に向かい、何人か引き連れて山の中へと入って行った。
「…。」
ザザの中にモヤモヤとしたものが残る…。
フェイのヤツ…ココまで来ていたのなら、声ぐらいかけてから行けよな!
ザザはちょっと不貞腐れ、フェイの治療の続きを始めた。
血で滲んだガーゼを取り替え、包帯を巻き、腰はテープで止め、傷口に触れないように治療のために切り裂いた服を脱がし始めた。
フェイの身体をお越し右袖を腕から抜き、上半身を裸にすると、ピンと立った胸の突起が目についた。
「…。」
怪我人!怪我人!
ザザはドキドキしながら、フェイのズボンをずり下ろし、身体を横たえさせると、そっとズボンを脱がした。
大人になりきっていない細い色白の身体を見ながら、これは治療!治療!治療!と、ひたすらに唱え続けた。
身体に付いた血を水魔法で洗い流し、脱衣場にあるガウンを風魔法で引き寄せ、眠るフェイになんとか着せるとホッとタメ息が出た。
怪我人だと分かっているけれど、フェイの身体から眼が離せなかった…。
「…。」
ザザはベットへフェイを運び、血で汚れた服を始末して、風呂場を洗い流した。
そしてフェイの投げナイフのベルトと短剣を持って談話室に行くと、テーブルの上にフェイの鞄と屋台で買い物をした袋が置いてあった。
グアンが置いておいてくれたのだろう…。
「はぁ…」
ザザは大きなタメ息を付く。
人の気も知らないで…。
フェイには、しっかりと注意しておかないとな…。
何で裏山にいる!?
ザザは現場に駆けつけて、ぐったりと木に寄り掛かっているフェイを見たとき、血の気が引いた。
「フェイ?!」
疲れたような、顔色の悪いフェイが言う。
「…ザザさん。警備隊に連絡を…この近くの魔道具の所に…魔獣が…」
暗闇に、よく見ればフェイの左側の服が裂けているのが見えた。
「魔獣だと?!その傷は?!戦闘したのか?!」
眼を凝らし、服が切り裂かれ下から血が滲み出ているのがハッキリと見えた。
早く家に連れていって治療をしないと!
「…。」
ザザは身体をしゃがませ、傷の無い右側からフェイを両腕に抱き上げた。
思ったより軽い…。
ちゃんと飯食ってるのか?
ザザがそう思うと、フェイが身体の力を少し抜き、ザザの方に寄り掛かってきた。
体温が下がっている…。
ザザは、なるべく揺れないように、それでいて足早に家の方に向かった。
家の中に入ると、風魔法でフワリと布を浮かせ、ソファーの端に敷き、フェイをその上に下ろし、右側の手すり部分に寄りかからせた。
明るいところで見ると、フェイの傷は、左腕から腰にかけて広範囲にある…。
早く治療しなくてはいけないが、まだ意識はあるのでソレほど重傷ではないはずだ。
ザザは壁際に掛けられた、魔道具の通信端末を作動させ、警備隊へと連絡した。
猫族の警備隊、隊長のグアンは、級友であり、俺の作る短剣を使っているお得意様だ。
怒鳴るようにして魔獣を討伐するよう伝える。
こっちはさっさとフェイの治療をしたい!
直ぐに討伐の手配をすると言ったので、ザザは通信を切った。
ザザがフェイの側に戻ってくると、フェイは意識を失っていた。
ザザは傷の状態を見るため、空間魔法でナイフを取り出し、傷に触れないように注意して、フェイの服の袖口から肩に向かって服を切り裂いた。
そしてそっと服を捲ると、無惨に切り裂かれた腕から血が滴り落ちてくる。
ココではまずいな…。
ザザは服で傷口を押さえると、フェイの身体を下に敷いた布ごと抱き起こし、風呂場に向かった。
風呂場の扉を風魔法で開けて、布を下に敷いて、傷口を上にフェイをその上に寝かせると、再び服を捲り傷口をさらした。
そして水魔法を使って拳大くらいの水の珠を作り、聖魔法を流し込んで、フェイの血で汚れた傷口を洗い消毒し始めた。
苦痛にか、フェイの小さな呻き声が聞こえる。
濁った水を捨て、再び水の珠を作り、傷口を何度も消毒する。
傷口が綺麗になったところで、風魔法で引き寄せていたガーゼで押さえ、次の治療にかかった。
脇腹から太股にかけても切り裂かれていたので、フェイの腰に付けていた短剣と投げナイフのベルトを外す。
かろうじて、それらが有った場所は傷を負ってなかったが、投げナイフのベルトが切れかかっていた。
後で直しておこう…。
脇側の服をナイフで再び切り、傷口を露見させる。
こっちもかなり切り裂かれている…。
再び同じ様に水の珠を出して、傷口を消毒し、ガーゼで押さえた。
後は太股の真ん中から下の方…。
ザザはナイフで、ズボンの上から傷口に向かって切り開き、思わず手を止めた。
「…。」
黒のビキニタイプの下着だ…。
フェイに似合っているが…今は治療だ!
ザザは頭を切り替えて再び水の珠を出して、傷口を消毒し始めるが、どうしても視線がフェイの下着に向いてしまう。
治療!治療!治療!
ザザは、そう唱えながら消毒していた。
治療が終わる頃、家の玄関先が騒がしくなってきた。
警備隊の討伐隊が到着したようだ。
「ザザ!」
俺を呼ぶ、警備隊の隊長グアンの声が聞こえた。
フェイのこんな姿を誰にも見せたくない…。
ザザはフェイの側を離れ、風呂場から顔を出して叫んだ。
「庭と玄関ホールは使って良い!早く討伐してこい!」
ザザの声が届き、グアンが風呂場にやってくる。
「そのつもりだ」
そしてグアンが、何かを気にして辺りを見回す。
「…ところで、狼族のフェイが来てないか?お前の所に行くと言って出たそうだが…。店の前に荷物が置いてあった。あと、屋台で買った食事も一緒にな…」
店の前に荷物だと!
ザザは顔を歪める。
なんとも言えない複雑な心境だ。
「…今、治療中だ。魔獣を見つけたのはフェイだ」
グアンは一瞬驚いて、直ぐに冷静な顔に戻して返事した。
「…わかった」
そう言って、グアンは玄関に向かい、何人か引き連れて山の中へと入って行った。
「…。」
ザザの中にモヤモヤとしたものが残る…。
フェイのヤツ…ココまで来ていたのなら、声ぐらいかけてから行けよな!
ザザはちょっと不貞腐れ、フェイの治療の続きを始めた。
血で滲んだガーゼを取り替え、包帯を巻き、腰はテープで止め、傷口に触れないように治療のために切り裂いた服を脱がし始めた。
フェイの身体をお越し右袖を腕から抜き、上半身を裸にすると、ピンと立った胸の突起が目についた。
「…。」
怪我人!怪我人!
ザザはドキドキしながら、フェイのズボンをずり下ろし、身体を横たえさせると、そっとズボンを脱がした。
大人になりきっていない細い色白の身体を見ながら、これは治療!治療!治療!と、ひたすらに唱え続けた。
身体に付いた血を水魔法で洗い流し、脱衣場にあるガウンを風魔法で引き寄せ、眠るフェイになんとか着せるとホッとタメ息が出た。
怪我人だと分かっているけれど、フェイの身体から眼が離せなかった…。
「…。」
ザザはベットへフェイを運び、血で汚れた服を始末して、風呂場を洗い流した。
そしてフェイの投げナイフのベルトと短剣を持って談話室に行くと、テーブルの上にフェイの鞄と屋台で買い物をした袋が置いてあった。
グアンが置いておいてくれたのだろう…。
「はぁ…」
ザザは大きなタメ息を付く。
人の気も知らないで…。
フェイには、しっかりと注意しておかないとな…。
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