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安心…。
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フェイが、魔道具が隠されている木に寄りかかって座り込んでいると、明かりの付いた家の方から人影が…ザザさんが走ってくるのが見えた。
「フェイ?!」
そりゃ…驚くだろうな…。
玄関からではなく、森の方から警報装置を鳴らして来るんだから…。
「…ザザさん。警備隊に連絡を…この近くの魔道具の所に…魔獣が…」
「魔獣だと?!その傷は?!戦闘したのか?!」
「…。」
…もう、歩きたくないくらいに、痛い…。
フェイが苦笑いすると、ザザさんが身体をしゃがませ、傷の無い右側からフェイを両腕に抱き上げた。
…意外と、力持ち…。
動きたくないから、運んでくれるのは助かる…。
フェイは身体の力を少し抜き、ザザさんの方に身を任せた。
温かい…。
…腕の出血…見た目以上にしているのか…?
体温が…下がっている…気がする…。
ザザさんは、なるべく揺れないように、それでいて足早に家の方に向かって行った。
家の中に入ると、フワリと布が浮かんで来て、ソファーの端に敷かれると、フェイはその上に下ろされ、右側の手すり部分に寄りかかった。
左腕から腰にかけて、ジンジンと痛みが増していく…。
ソレより、警備隊へ早く連絡をして欲しい…。
痛みに耐えながら、ザザさんを見ると、壁際に掛けられている絵の一つの上を、指で押して何か作業していた。
「…。」
もしかして、魔道具の通信端末…?
直接警備隊へ連絡している…?
警備隊への連絡が出来るものが、何で、ザザさんの所に有るんだ…?
ザザさんは家の近くの結界の魔道具の所に魔獣が出たと、怒鳴るように話している。
ああ、コレで魔獣は討伐される…。
連絡が付いたのと、緊張していた気が抜けたのと、血の気が下がったのと、痛みに意識が遠くなってきて、安心する匂いに包まれて、フェイは意識を飛ばした。
◇◇◇
次に気が付くと、見慣れたザザさんの家の天井に部屋、大きなベットの上だった。
見ればズタボロに切り裂かれ、血で汚れたた服は脱がされていて、柔かなガウンにくるまれ、傷口には包帯も巻かれていた。
着替えさせてくれたんだ…。
意識を失った状態で、着替えさせるのは大変なんじゃないか…。
フェイは、ちょっと恥ずかしくなって頬を染めた。
それにしても、あれからどれくらい時間が経っているんだ…?
部屋から見える外は暗いまま…。
フェイは身体を起こし、ベットの背もたれに寄りかかって、左腕の状態を見る。
血が滲んだ包帯の下では、聖属性の自己治療能力が機能しているのか、ほんのりと熱を持って白く光っているように見える…。
目の錯覚かも…。
フェイは幼い頃から、他の子供達に比べてキズの治りは早かった。
それが、聖属性を持っているからだと知ったのは、最近の事だ。
この感じだと、キズは直ぐに治りそうだ。
そう思っていると、部屋にザザさんが入ってきた。
「目が覚めたみたいだな」
「うん。着替え、ありがとう」
「…まあ、別に…。治療するのに、都合が悪かっただけだ…」
ザザさんがモゴモゴと小声で何か言っていたが、それよりフェイは魔獣がどうなったかが気になった。
「…ソレより魔獣は!警備隊は」
フェイがそう言うと、ザザさんは苦笑いして教えてくれた。
警備隊へ連絡した後、直ぐにココに…ザザさんの家に集合して、そこから森に向かって、討伐隊が向かって行って、魔獣は討伐されたそうだ。
良かった…。
安心してそう思ったら、お腹がグ~ッと鳴った。
そう言えば、一緒に夕食を食べようと買い物をして、店の前に置いたままだ!
その事をザザさんに伝えると、苦笑いして怒られた。
「家の前まで来ていたなら、一言、声を掛けていけ!」
はい…。すみません…。
俺だって、こんな事になるとは思ってもみなかった…。
「まぁ、良い…。明日、グアンに叱られておけ」
そう言って、部屋を出ていった。
グアンって…警備隊の隊長の事だよね…。
やっぱり知り合いなんだ。
はい…。叱られます…。
多分、明日は今日の事の成り行きや、結界の魔道具の事とかの説明だよな…。
結局、俺の休みは失くなりそうだ…。
フェイがガックリとしていると、いい匂いがしてきて、顔を上げて部屋の入り口を見た。
ザザさんが湯気の上がったスープを、持ち手付きのカップに入れて持ってきてくれたのだ。
再びお腹がグ~ッとなる。
何度も恥ずかしいよな…。
フェイはカップを右手で受け取り、フ~ッと冷まして口をつける。
まだ熱い…。
でも、ほんの少し口に入ったスープを身体が欲しているのがわかる…。
フェイがチビチビとスープを飲んでいると、ザザさんは俺が買ってきた屋台の袋を全部持ってきてくれ、ベットの横に並べて置き、順番に袋の口を開けた。
「何から食べる?」
「…カツサンド…」
いつも売り切れなのに、今日は残ってたんだよね…。
半分くらい飲んだスープの入ったコップを、ザザさんに差し出して受け取ってもらった。
左腕は痛いから、右手でしか持てない…。
ザザさんに、カツサンドが入った袋を差し出され、中からカツサンドを取り出すと、一口噛った。
うん。美味しい…。
冷めても美味しいや…。
ザザさんも同じ様に袋からカツサンドを取り出して、食べ始めた。
時間的には、まだ夜で、お腹が満たされてきたら、眠気が襲ってきた。
「ゆっくりと眠れ…」
フェイはベットの中に潜り込み、ザザさんの方を見た。
ザザさんは微笑みながら、フェイの頭を優しく撫でる。
「目が覚めたら、警備隊の本部まで行くぞ。しっかり回復しておけよ」
「…。」
そうだった…。
食後に飲んだ痛み止めが効いてきたのか、目蓋が閉じていく…。
側にザザさんの気配を感じて、安心してフェイは眠りについていた。
「フェイ?!」
そりゃ…驚くだろうな…。
玄関からではなく、森の方から警報装置を鳴らして来るんだから…。
「…ザザさん。警備隊に連絡を…この近くの魔道具の所に…魔獣が…」
「魔獣だと?!その傷は?!戦闘したのか?!」
「…。」
…もう、歩きたくないくらいに、痛い…。
フェイが苦笑いすると、ザザさんが身体をしゃがませ、傷の無い右側からフェイを両腕に抱き上げた。
…意外と、力持ち…。
動きたくないから、運んでくれるのは助かる…。
フェイは身体の力を少し抜き、ザザさんの方に身を任せた。
温かい…。
…腕の出血…見た目以上にしているのか…?
体温が…下がっている…気がする…。
ザザさんは、なるべく揺れないように、それでいて足早に家の方に向かって行った。
家の中に入ると、フワリと布が浮かんで来て、ソファーの端に敷かれると、フェイはその上に下ろされ、右側の手すり部分に寄りかかった。
左腕から腰にかけて、ジンジンと痛みが増していく…。
ソレより、警備隊へ早く連絡をして欲しい…。
痛みに耐えながら、ザザさんを見ると、壁際に掛けられている絵の一つの上を、指で押して何か作業していた。
「…。」
もしかして、魔道具の通信端末…?
直接警備隊へ連絡している…?
警備隊への連絡が出来るものが、何で、ザザさんの所に有るんだ…?
ザザさんは家の近くの結界の魔道具の所に魔獣が出たと、怒鳴るように話している。
ああ、コレで魔獣は討伐される…。
連絡が付いたのと、緊張していた気が抜けたのと、血の気が下がったのと、痛みに意識が遠くなってきて、安心する匂いに包まれて、フェイは意識を飛ばした。
◇◇◇
次に気が付くと、見慣れたザザさんの家の天井に部屋、大きなベットの上だった。
見ればズタボロに切り裂かれ、血で汚れたた服は脱がされていて、柔かなガウンにくるまれ、傷口には包帯も巻かれていた。
着替えさせてくれたんだ…。
意識を失った状態で、着替えさせるのは大変なんじゃないか…。
フェイは、ちょっと恥ずかしくなって頬を染めた。
それにしても、あれからどれくらい時間が経っているんだ…?
部屋から見える外は暗いまま…。
フェイは身体を起こし、ベットの背もたれに寄りかかって、左腕の状態を見る。
血が滲んだ包帯の下では、聖属性の自己治療能力が機能しているのか、ほんのりと熱を持って白く光っているように見える…。
目の錯覚かも…。
フェイは幼い頃から、他の子供達に比べてキズの治りは早かった。
それが、聖属性を持っているからだと知ったのは、最近の事だ。
この感じだと、キズは直ぐに治りそうだ。
そう思っていると、部屋にザザさんが入ってきた。
「目が覚めたみたいだな」
「うん。着替え、ありがとう」
「…まあ、別に…。治療するのに、都合が悪かっただけだ…」
ザザさんがモゴモゴと小声で何か言っていたが、それよりフェイは魔獣がどうなったかが気になった。
「…ソレより魔獣は!警備隊は」
フェイがそう言うと、ザザさんは苦笑いして教えてくれた。
警備隊へ連絡した後、直ぐにココに…ザザさんの家に集合して、そこから森に向かって、討伐隊が向かって行って、魔獣は討伐されたそうだ。
良かった…。
安心してそう思ったら、お腹がグ~ッと鳴った。
そう言えば、一緒に夕食を食べようと買い物をして、店の前に置いたままだ!
その事をザザさんに伝えると、苦笑いして怒られた。
「家の前まで来ていたなら、一言、声を掛けていけ!」
はい…。すみません…。
俺だって、こんな事になるとは思ってもみなかった…。
「まぁ、良い…。明日、グアンに叱られておけ」
そう言って、部屋を出ていった。
グアンって…警備隊の隊長の事だよね…。
やっぱり知り合いなんだ。
はい…。叱られます…。
多分、明日は今日の事の成り行きや、結界の魔道具の事とかの説明だよな…。
結局、俺の休みは失くなりそうだ…。
フェイがガックリとしていると、いい匂いがしてきて、顔を上げて部屋の入り口を見た。
ザザさんが湯気の上がったスープを、持ち手付きのカップに入れて持ってきてくれたのだ。
再びお腹がグ~ッとなる。
何度も恥ずかしいよな…。
フェイはカップを右手で受け取り、フ~ッと冷まして口をつける。
まだ熱い…。
でも、ほんの少し口に入ったスープを身体が欲しているのがわかる…。
フェイがチビチビとスープを飲んでいると、ザザさんは俺が買ってきた屋台の袋を全部持ってきてくれ、ベットの横に並べて置き、順番に袋の口を開けた。
「何から食べる?」
「…カツサンド…」
いつも売り切れなのに、今日は残ってたんだよね…。
半分くらい飲んだスープの入ったコップを、ザザさんに差し出して受け取ってもらった。
左腕は痛いから、右手でしか持てない…。
ザザさんに、カツサンドが入った袋を差し出され、中からカツサンドを取り出すと、一口噛った。
うん。美味しい…。
冷めても美味しいや…。
ザザさんも同じ様に袋からカツサンドを取り出して、食べ始めた。
時間的には、まだ夜で、お腹が満たされてきたら、眠気が襲ってきた。
「ゆっくりと眠れ…」
フェイはベットの中に潜り込み、ザザさんの方を見た。
ザザさんは微笑みながら、フェイの頭を優しく撫でる。
「目が覚めたら、警備隊の本部まで行くぞ。しっかり回復しておけよ」
「…。」
そうだった…。
食後に飲んだ痛み止めが効いてきたのか、目蓋が閉じていく…。
側にザザさんの気配を感じて、安心してフェイは眠りについていた。
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