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二人の春
ダブルベッド
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それから程なくして、クロは給料で、ダブルベッドを買ってきた。
部屋の半分を占めるような大きさに、目を丸くする。
「ちょっとずつしか買えない」
そう言って、ダブルベッドのマットの上にシングルの布団を敷く。
それを見た、大輔にため息をつかれ、聖の兄、修司には激怒され、紅緒と沙羅には、キャアキャアと騒がれた。
聖のベッドで眠るときは、いつもクロが抱えてくれて眠っていたから、腕がいたくならないか、心配していたので、大きいベッドが欲しかったのは欲しかったが…。
…一緒に寝るから…大きいベッド。
聖は頬を染めた。
…家族には、バレているみたいだ。
クロと一緒に眠っていることを…。
チラチラと雪が降る寒い日。
クロは次の給料で、ダブルベッドの敷布団を買ってきた。
「高すぎる…」
クロはぶつぶつと呟きながら、敷布団を敷いていた。
「掛け布団は?」
聖が問いかけると、
「いいんだよ。二枚使えば」
クロのその答えに笑ってしまった。
その頃には、部屋の仕切りも変えていた。
今までは、玄関から四つ繋がっていた部屋の、奥二つを聖が使っていた。
今度は、奥が聖の部屋で、隣を居間にして、次の部屋をクロの部屋にした。
真ん中の居間から、左右の部屋に入れるように、間取りを変えた。
これならば、また、急に入ってこられても、奥の部屋にまでは来ないだろう。
…見られていたなんて、知らなかった…。
クロに教えてもらい、赤面した。
一度、口付けしているのを、沙羅に見られた事は有るけれど…。
庭の桜が咲くころ。
クロは次の給料で、ダブルベッドの掛け布団を買ってきた。
「毛布も、いるかな…」
「今から暖かくなるから、大丈夫だよ」
「そうだな。寒くなるまでに買えばいいか」
それまでは、掛け布団二枚と、毛布も二枚。
それでも寒いときは、毛布をもう一枚下に敷いて、一緒に丸まって眠っていた。
体温を互いに分け与えることで暖かくて、毛布が無くても、ぐっすりと眠れていた。
時折肌寒いが、庭が新緑で染まる頃。
「着替えを入れておくのが、欲しかったんだよな」
と、クロが次の給料で小さなタンスを買い、クロがこの家から通うようになった。
今までだって、ほとんどココから通っているようなものだったけれど…。
クロの使っていた部屋は、小納谷で働いている人が、家族で使うことになったからだ。
何度か行ったけれど、広い部屋に、ポツンとベッドと机が置いてあるだけの、何もない殺風景な部屋だった。
クロは寝に帰るだけだから…と、言っていた。
クロが、タンスを買ったのは、着替えを入れて置く物が、欲しかったからだそうだ。
今までは、部屋が広かったから、たたんでそのまま置いてあったそうで、洋服はハンガーに掛けたまま、ハンガーラックに吊るしていたそうだ。
前の部屋から少ない荷物とハンガーラックをクロの部屋へ運んで来ると、
「これで少しは部屋らしくなったか?」
と、呟いていた。
ダブルベッドを置いた時点で、そこはクロの部屋になっていて、徐々に生活感が出てくるのが、聖は嬉しかった。
側いにるのが当たり前のように思えて、ドキドキして、嬉しくなって言葉にする。
「…好きだよ…クロ…」
まだ、言葉にするのは照れ臭くて、小声になってしまう。
クロは微笑んで、
「好きだよ、聖」
そう、返してくれる。
…これが、幸せ…って、事なのかな…。
…クロが側にいて、一緒に笑って、一緒に遊びに行って、一緒にご飯を食べて、一緒に眠って…。
…クロの手を近くに感じて、まだ知らない自分を引き出してくれる…存在…。
…僕の…特別な人。
部屋の半分を占めるような大きさに、目を丸くする。
「ちょっとずつしか買えない」
そう言って、ダブルベッドのマットの上にシングルの布団を敷く。
それを見た、大輔にため息をつかれ、聖の兄、修司には激怒され、紅緒と沙羅には、キャアキャアと騒がれた。
聖のベッドで眠るときは、いつもクロが抱えてくれて眠っていたから、腕がいたくならないか、心配していたので、大きいベッドが欲しかったのは欲しかったが…。
…一緒に寝るから…大きいベッド。
聖は頬を染めた。
…家族には、バレているみたいだ。
クロと一緒に眠っていることを…。
チラチラと雪が降る寒い日。
クロは次の給料で、ダブルベッドの敷布団を買ってきた。
「高すぎる…」
クロはぶつぶつと呟きながら、敷布団を敷いていた。
「掛け布団は?」
聖が問いかけると、
「いいんだよ。二枚使えば」
クロのその答えに笑ってしまった。
その頃には、部屋の仕切りも変えていた。
今までは、玄関から四つ繋がっていた部屋の、奥二つを聖が使っていた。
今度は、奥が聖の部屋で、隣を居間にして、次の部屋をクロの部屋にした。
真ん中の居間から、左右の部屋に入れるように、間取りを変えた。
これならば、また、急に入ってこられても、奥の部屋にまでは来ないだろう。
…見られていたなんて、知らなかった…。
クロに教えてもらい、赤面した。
一度、口付けしているのを、沙羅に見られた事は有るけれど…。
庭の桜が咲くころ。
クロは次の給料で、ダブルベッドの掛け布団を買ってきた。
「毛布も、いるかな…」
「今から暖かくなるから、大丈夫だよ」
「そうだな。寒くなるまでに買えばいいか」
それまでは、掛け布団二枚と、毛布も二枚。
それでも寒いときは、毛布をもう一枚下に敷いて、一緒に丸まって眠っていた。
体温を互いに分け与えることで暖かくて、毛布が無くても、ぐっすりと眠れていた。
時折肌寒いが、庭が新緑で染まる頃。
「着替えを入れておくのが、欲しかったんだよな」
と、クロが次の給料で小さなタンスを買い、クロがこの家から通うようになった。
今までだって、ほとんどココから通っているようなものだったけれど…。
クロの使っていた部屋は、小納谷で働いている人が、家族で使うことになったからだ。
何度か行ったけれど、広い部屋に、ポツンとベッドと机が置いてあるだけの、何もない殺風景な部屋だった。
クロは寝に帰るだけだから…と、言っていた。
クロが、タンスを買ったのは、着替えを入れて置く物が、欲しかったからだそうだ。
今までは、部屋が広かったから、たたんでそのまま置いてあったそうで、洋服はハンガーに掛けたまま、ハンガーラックに吊るしていたそうだ。
前の部屋から少ない荷物とハンガーラックをクロの部屋へ運んで来ると、
「これで少しは部屋らしくなったか?」
と、呟いていた。
ダブルベッドを置いた時点で、そこはクロの部屋になっていて、徐々に生活感が出てくるのが、聖は嬉しかった。
側いにるのが当たり前のように思えて、ドキドキして、嬉しくなって言葉にする。
「…好きだよ…クロ…」
まだ、言葉にするのは照れ臭くて、小声になってしまう。
クロは微笑んで、
「好きだよ、聖」
そう、返してくれる。
…これが、幸せ…って、事なのかな…。
…クロが側にいて、一緒に笑って、一緒に遊びに行って、一緒にご飯を食べて、一緒に眠って…。
…クロの手を近くに感じて、まだ知らない自分を引き出してくれる…存在…。
…僕の…特別な人。
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