聖～ひじり～ ソレを恋と呼ぶならば。⦅完結⦆

出会って一年が過ぎていた

月見酒 1 *

　雲の間から顔を覗かせた、美しい満月の光が庭を照らしていた。
　長い廊下の戸口から、庭を眺めれる事ができるこの場所は、お気に入りの場所。
　あえて電気を灯さず、月明かりを楽しむ。
　静かな一人だけの時間。
　この静寂を聖ひじりは気に入っていた。
　ときおり風が吹き、木々の木の葉かサラサラと音を立てて、風情を楽しませてくれる。
　聖は庭先に腰を下ろして、甘めの果汁酒を小さなグラスに入れて、月を眺めながら飲んでいた。
　二十歳の誕生日に、「飲みやすいよ」紅ちゃんからもらった杏の果汁酒。
　ぼーっと、この庭を眺めるのは日課だったが、今日は、空も月も綺麗で、台所からお酒を持ち出したのだ。
　一人で飲むのは勿体ない。
　そんなことを思っていると玄関横から庭へ入る柵が、ギーッと、音を立てて動いた。
　ジャリッと砂利を踏む音が響き、クロが近付いてきて、笑みが浮かぶ。
「…聖」
「クロも飲む？」
　そう、笑い掛けてグラスを持ち上げる。
「…ああ。」
　クロは聖に近付いてきて、当たり前のように聖の左横に座り、もう一つ用意していたグラスに果汁酒を注ぐ。
　…なんとなく用意していた。
　今までは、自分の分だけで、誰かが来ても、グラスを取りに行っていたのだが…。
　クロが出入りするようになってからは、つい、もう一つ、来るか来ないか分からない、クロの分も準備するようになってしまった。
　きっと以前の自分とは、少し変わったのだろう…。
　クロにグラスを渡すと、何気なくグラスを月に掲かかげ、ソレを一気に飲み干し、顔をしかめる。
「…甘い…」
　その顔を見て、思わず笑ってしまう。
　クロはグラスを、お酒の入ったビンが置いてある、小さなテーブルの上に置き、月を見上げた。
「ここから見る月は綺麗だな…」
「周りに明かりが無いから、余計に輝いて見えるのかも…」
　聖は残りを飲み干し、グラスをテーブルに置く。
「今日は特に、空気が澄んでいて、綺麗に見える」
　そう答えると、クロの手が左頬に触れ、クロの方を見ると、顔が近付いて来て、唇が塞ふさがれた。
　軽く触れただけの唇が離れると、クロは聖にのし掛かって来て、身体が押し倒され、再び唇が触れてくる。
　今度は深く、舌が侵入してきて、口内をかき回され、身体が熱くなってきて、寝巻き浴衣の上から胸の突起を摘ままれ、ピクンと身体が反応する。
　布越しに捏こね回され、硬くなって、腰に熱が溜たまりだし、クロに腰を押し付けてしまった。
「…あぁ…」
　無意識に腰を押し付けてしまい、恥ずかしくて顔が赤くなる。
　唇が離され、寝巻き浴衣の胸がはだけられ、今度は直接胸の突起に舌が触れ、硬くなった所に甘噛みされ声を上げてしまう。
　寝巻き浴衣の裾がはだけられ、男の手が下着を着けない聖の、勃たち上がりかけた起立を握にぎり、擦こすり始めた。
「…はぁ…あぁ…」
　身体が熱くて、気持ち良くて、何も考えられない…。
　先端が擦こすられ、むずむずして、腰が揺れる。
「あっ…やっ…っ…」
　聖の身体が上を向いたとき、満月の輝く月が目に入る。
「…あぁ……」
　じっと月に見つめられている様な気がして、思わず目を背けた。
　そして、今の状況を思い出して、赤面する。
　いつ、誰が来てもおかしくない状況なのに、庭先で行為に更けるなんて…。
　聖はクロの顔を胸から引き離す。
「…月が…見てる…」
「…。部屋で続きをするか？」
　…止めれるわけか無い。
　止められても、この火照った身体を鎮められない…。
「…うん…」
　聖はクロの後ろ首に手を回すと、軽く唇が触れ、先端部分を強く何度も擦られ、ビクンと腰が跳ねる。
「あっ…ああぁ…!!」
　快楽を覚えた聖は、あっさりとクロの手の中に放ち、力が抜け、クロの首後ろに捕まっていた手がほどける。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
　太股に感じるクロの高ぶりに、ドキドキして、再び勃たち上がり始めたのを感じた。
　聖が放った白濁は内股に塗られ、クロに抱え上げられ、奥の部屋へと入っていった。
　ベッドの上掛けをめくり上げ、寝かせられると、クロはおもむろに服を脱ぎ、体格のいい筋肉質を惜し気もなくさらし、覆おおい被かぶさってくる。
　唇が触れ、はたけられた寝巻き浴衣が、肩から引き下ろされ、色白い肌を露出させる。
「…クロ…」
　聖はクロを引き寄せ、身を任せた。