聖~ひじり~ ソレを恋と呼ぶならば。⦅完結⦆

ゆう

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黒龍(クロ)との出会い

側に居るために

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 黒龍が車に乗り込んで、聖の家から離れていくと、紅緒が突然言い出した。
「…聖に手を出したのよね」
「…いきなり何の話だ?」
 …やっぱり、気付いているのか?
 昨日、聖の家に降ろしたのは彼女だし、聖の様子と泊まったのだから…察したのだろうが…。
「…私たちは聖の幸せの為だったら、何でもする。聖の事、どう思っているの」
 直球だな…。
「…あんたに、答える事なのか?」
「聖にとって害になる者は排除する。聖が望むなら、気にくわなくても受け入れる」
 排除するって…。
 素直に答えるしか無いのか…。
「…気に入っている。本バカで、甘えん坊で、大切にされていることに気付かない所とか…」
 聖との餌付けのやり取りを思い出して、にやけてしまう。
「甘えん坊?聖が?」
 彼女は不思議そうに首を傾げる。
「…。」
 きっと家族や身内には見せない一面を、俺だけに見せてくれたのだと思うと、ますますにやけてしまう。
「…聖の側に居たいのなら、旧市街から直ぐに引っ越しなさい。今度は貴方が狙われる。それと、一週間に一度は小納谷こなやで手伝いをすること」
 突然、何を言い出すんだ?
「…引っ越しと手伝い?」
「小納谷で手伝いながら、作法と礼儀を学ぶ。聖はちょっと一部の人にとって、有名人だからね。恥をかかさない為に、貴方をしつけるしかないのよ!」
「…有名…なのか?」
「一部の業界ではね。毎年、新年の集まりにしか顔を出さないし、のんびりとした雰囲気が神聖化されている。だから、側に居れば必ず目立ってしまう」
「…。」
 何か大事おおごとになっているのだが…。
「後戻りは出来ないわよ!」
 彼女はイライラと怒鳴り付けてくる。
 手離すつもりもないし、手離したくない。
 彼女の言う通りにすれば、側にいることを認めてくれるのならば、やるしかない。
「…どうして、ソコまで聖の為に出来る?」
 なぜ、ソコまで聖に入れ込むのか…。
「私達は聖に幸せになってもらいたいだけ。…あの聖が心を動かしたのが、たまたま、貴方だったから動くだけ」
 聖の幸せの為に…。
「あんたの言う通りにすれば、側に居れるのか?」
 それが肝心だ。
「まあ、認めさせなければいけない人間が何人もいるけどね」
「あんたは」
「紅緒よ。私的には聖の趣味は悪くないと思っているの。それに、あんなに、はしゃいでいる聖を見たのは久しぶりなの」
 紅緒は楽しそうに笑う。
「後、何人いるんだ」
 認めさせなくてはいけない人物…。
「小納谷の大輔。幼馴染みよ。それと聖の兄の修司しゅうじ。ちなみに私は婚約者。それと妹の紗羅さら。あの子は大丈夫だと思うけど。取りあえず、あの二人に認めさせれば、他はどうにでもなるわ」
「…。」
 そうこう言っている内に小納谷に着いた。
「おせーぞ!」
 いつから待っていたのか、仁王立ちで、大輔が待ち構えていた。
「一緒にお茶をしてきたんだもの。…車から降りて。大輔と一緒に引っ越しよ。私は仕事に行くわ」
 黒龍が彼女の車から降りると、直ぐに出発していった。
「…。旧市街のお前の部屋から荷物を運ぶ。部屋はこっちで勝手に決めさせてもらった。車に乗れ!」
 そう言って大輔が、隣に止めてあった車に乗り込み、黒龍も乗ると、旧市街に向かった。
 俺に拒否権は無いようだ。


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