神の宿り木~旅の途中~ジン~

ゆう

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5 欠片 ~カケラ~

*休息 2

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 荷馬車に『宿り木』を乗せ、子獣達とキリト、マークと共に静かな林道を移動していた。
 昼過ぎにヤマツカ町を出たので、明るい内にタミネキ村にたどり着く予定だ。
 子獣達は、はしゃぎ疲れて今は眠っている。
 町から出るまでは獣の姿で荷馬車に乗り、町が見えなくなると獣人の姿になって、古着屋で買ってきた服を着て、時々荷馬車から降りて走り回っていた。
 
 タミネキ村の入り口に差し掛かると、獣人のロキが待っていた。
 マークが荷馬車を停めると、ロキは近付いてきて、
「『風霊』に聞いた」
 そう言って、微笑んだ。
「お久しぶりです。ロキさん」
「マークか」
 マークは昔、しばらくの間たったが狼の里で暮らしていた。
 種族は違うが、子獣達の世話をしていたらしい。
 荷馬車から子獣達が顔を出して、ロキをじっと見ている。
「この子獣は?」
さらわれて町に居たのを連れてきた」
 と、簡単に事訳を話す。
「あとロキ。アレ、教育してくれないか。ずっとハグレだったみたいで、一般常識としつけがなってなくて…」
 ロキがチラリと、キリトを見る。
「群れに入れるか?」
「それは本人次第。しばらく預かって…マナーとかも教えて欲しい」
「…わかった」
 ロキは子獣とキリトの方を向いて、
「おい、そこのチビ達連れて降りてこい。お前は、村へ入れない。俺の里の方へ行くぞ」
 キリトが荷馬車から降りると、子獣達も恐々降りてきて、キリトの背中に隠れている。
「よろしく」
 そう言って荷馬車を走らせ、リーンはマークと共に村へ入り、療養所のスバルのもとへ行った。

 あれから…ジンが『宿り木』として『御神木』になってから、五日がたっていた。

「ほとんど傷んでいて、これだけしか集められなかった」
 スバルは荷馬車に積まれた『宿り木』を目にして唖然としていた。
「どうやって…」
「…それは聞かないで欲しい…」
 リーンは微笑んだ。
「この木で作れる大きさでいいんです。『御神木』ジンフリークスの側にほこらを作って欲しい。そこに結界石を納めれば、すべての魔法は完了する」
 これで、この地域は枯れることなく魔力の循環が行われ、護られる。
「わかった」
『宿り木』を村人達に託し、新たなほこらを作るようお願いする。

 『宿り木』を降ろした荷馬車は療養所に置かせてもらい、狼の里へマークと共に向かった。
「リーンさん。子獣達をロキさんの所で預かってもらうんですか?」
「ああ、その方が良いと思って…。キリトがいるから子獣達も不安はないだろうし…」
 子獣達がキリトに懐いているのは確か。
「…。」
「なに?離れがたい?」
 リーンは笑う。
 半日だけど、子獣の面倒をみていて寂しく思うのかもしてない。
「子獣達に聞いて、一緒に町に戻りたい子がいたら連れていっても良いんだよ。ただ、擬態出来ないと外には出れないし、人族の中で生活するルールも教えていかないといけない。」
 人族の中に紛れるため、擬態が必修だ。
 だから、子獣が町にいることはない。
「…。」
「仕事もあるだろうし、獣人の長屋の者達にも協力してもらって、育てていくことになるだろうけど…」
「…うん。…わかった」
 マークはしょんぼりして、リーンの後を着いていく。
「まずは、子獣達に聞いてからだよ」




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