神の宿り木~旅の途中~ジン~

ゆう

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5 欠片 ~カケラ~

*休息 1

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 夜どうし歩き、ヤマツカ町にたどり着いた。
 さすがに足が痛い。
 朝日が登り始め、町が見え始めた頃、キリトは擬態して人族の姿になり服を着た。
 リマ商会にたどり着いた時には、朝の始業前だった。
「マーク、来てるかな…」
 
「お帰りリーン。無事に帰ってきてほっとしてるよ」
 リマ商会のオヤジさんはそう言って出迎えてくれた。
「それにしても、一晩で増えたね。その子達は?」
 リーンは苦笑いするしかなかった。
 ええ、増えました。
 拾ったのは一人だけど、小さいのが五人増えました。
「捕まっていた、獣人の子供達。ちょっと世話を頼みたいんだけど、マークはまだ来てない?」
「もうすぐ出勤してくるよ。」
 マークは豹の獣人で、擬態してここに何年も暮らしている。
 魔力も一般的には持っていて、リマ商会では、キレイ好きな事もあり掃除や家事代行などをしている。
「おはようございます。あれ、リーンさん」
 マークが出勤してきた。
 癖毛の金茶色の髪がふわふわ浮いていて、金色の瞳で愛想のいい笑顔を向けてくる。
「マーク。今日の仕事は?」
「イワニおばさんの家の家事代行です」
「それは、別の者に行かせよう。今日は、リーンの世話をしてくれ」
「よろしくマーク。まだ、寝てるけど獣人の子供がいるんだ。お風呂に入れて食事をさせて上げて欲しいんだよ」
「えっ、本当ですか!」
 マークがそっと袋の中を覗く。
「かわいい~」
 二匹が、すぴすぴと寝息をたてている。
「俺の部屋に連れて行きますね。で、この人は?」
「彼はキリト。一緒に風呂に入れて着替えさせて。首輪着けてあるから、悪さはしないよ。安心して」
 そう言って笑った。
「分かりました」
「あ、そこにも三匹いるから」
 キリトの袋を指さす。
 マークはリーンから子獣達を受け取り、キリトを連れて部屋を出ていった。
「マークって、荷馬車を扱える?」
「ああ、ここに来たとき一番最初に覚えさせた」
「じゃ、『宿り木』はマークに運んでもらうね。あの子獣達の事もあるし、獣人どうしの方が言いような気がして…」
 人族に捕まっていたのだから、人族では警戒する。
 同じ獣人どうしなら、安心するだろう。
 マークは面倒見もいいし、子獣達も警戒心を解いてくれるはず。
「そのように手配する。ついでに里帰りでもさせるか。確かタミネキ村の近くに居たと言っていたからな…。」
 オヤジさんはそう言って、マークの代理の手配をし始めた。
「ありがとう」

 リーンは『宿り木』を乗せた幌付ほろつきの荷馬車に乗り、子獣達が乗れるように『風霊』にお願いして木を左右に動かし、崩れないように縛った。
 中央にスペースを作り、横になる。
 …疲れた…。
 リーンはそのまま目を閉じ、眠ってしまった。
 夜どうし歩いて眠いのと、疲れがどっと押し寄せてきたからだ。

 昼過ぎには目覚め、マークの部屋に行くと子獣達はだばだばのTシャツを着て、お昼寝中だった。
 マークはリーンに食事を用意し、留守番を頼んできた。
「近くの古着屋で、子獣の服を買って来るよ」
「それなら、キリトも連れていって着替え買ってきて。後でお金は請求してもらえば良いから」
 今、着てる服しかないから、洗濯も出来ない。
 マークが複雑そうな顔をしてチラリとキリトを見る。
「…首輪。ちゃんと機能してるよね…」
「?ああ、拒絶すれば首が絞まるようにしてあるけど…」
「…。」
「何かあった?」
「…拒絶しきれなかった…」
 マークは頬を染めて答える。
「…。それより留守番してるから、服を買ってきてね」
 リーンは話を反らし、買い物を促す。
「はい…。行ってきます…」
 マークはキリトを連れて買い物に行き、幾つもの服と、道中のおやつを買って帰ってきた。

 そして、タミネキ村に向かった。


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