神の宿り木~旅の途中~ジン~

ゆう

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 人のざわめく声にリーンは目を覚ました。
 村の半分近くの人達が集まって来ていた。
「俺達は、ほとんど魔力をもってない。だけど、少しでも力になるのなら、使ってくれ」
 そう言って、魔方陣の外側に集まっていた。
 リーンは身体を起こし再び木に触れる。
「ジン。みんな来てくれたよ」
 そう言って魔力を注ぎ始めた。
 スバルが順番に木に触れさせ、廃墟の中に作った休憩所へ休ませる。
 そして、その思いを受け取ったのか、昼過ぎに木々がざわめき動き出し、葉をつけ始めた。
「魔力が満ちた。みんな一度離れて」
 そう言って魔方陣の外へ出させる。
 そして、村人と獣人たちの見守るなか、『御神木』は本来の姿を取り戻し、青々と葉を茂らせた。
「大地と水と空と。この地域を守る新たなる『御神木』として名をさずける。ジンフリークス」
 …これは、ジンの正式名。
 スバルに聞いた、ジンがここで暮らしていた頃の名前…。
 そう告げると、核となったジンそっくりの『木霊』が、姿を表し微笑んで消えていく。
「この大地を守護せよ」
 再び魔方陣が強く光り、『御神木』に吸い寄せられて消えていく。
 葉が茂り、止まっていた小風が動き出す。
 辺りを柔らかい風が通り過ぎる。
「終った…のか…」
 気付けば時折揺れていた地震は収まり、木葉が風に揺られてカサカサと静寂な音を奏でる。
「この地域の新たなる『御神木』として、このジンフリークスが守護してくれる。いずれ大地も風も元に戻っていく。この木を村で守って下さい。この木が有る限り、ずっとここは護られる…」
 リーンが『御神木』に寄りかかる。
「そして、ジンも…ここにいる…」
 そう言ったリーンの身体が傾き、側にいたロキが受け止めた。
 ぐったりとロキに身体を預けたまま動かない。
 意識を失ってしまったのだ。
「リーンはこちらで預かる」
 ロキはリーンを両腕に抱き抱え、山へと帰っていった。


 三日後。
 リーンは療養所を訪れた。
「荷物、持ってきてくれて、ありがとう」
「もう、大丈夫なのか?」
「うん」
 スバルは庭を眺め、苦笑いする。
「…。地震も収まったし、風も吹き始めた。改めて風が止まっていた事に気付かないなんて、どうかしてたよ」
「…まだ、終っていない」
 そう言われて、スバルは神妙な顔つきでリーンを見る。
 リーンはポーチとフード付きのマントを羽織り、療養所の外に向かう。
「切られた『御神木』は町の方に、運ばれて行ったんですよね」
「ああ、その後の事はわからない」
「ちょっと返してもらって来ます」
 そう言って『移動』を使って姿を消した。

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