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4 樹木再生
*名も無き『風霊』
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季節の風を運ぶ『風霊』
私達には大切な可愛い個がいる。
森の奥の魔素の強い『聖域』に住むリーン。
魔力をくれたり、遊んでくれたり、渡りの風霊にも優しいから、皆が大好き。
ただ、魔力が強すぎて、森から出れないのが可愛そうになる。
外にはいろんなモノがあるよ。
いろんな種族が住んでるよ。
立ち寄る度に魔力をもらって、いろんなお話をする。
いずれ外に出て、森を護る旅人になる。
リーンが初めて港街に行ったとき、早々に呼ばれた。
「…『風霊』…」
リーンの腕を捕まえる人族がいる。
「…手を…離して」
嫌がってるリーンの手を離しなさい!
リーンの周りで渦巻いた。
漆黒の髪が巻き上がり、両耳に付けられた金色の耳飾りがキラキラと光る。
男は慌てて手を離した。
「風霊を治めてくれないか。せっかく掃除をしたのに砂が舞う」
声のする方を見ると、建物から、長い髪を片側で束ねた青年が出てきた。
「……。」
リーンを害する者は近付くな…そう渦巻いたままいた。
「『風霊』彼に危害を加えないから…落ち着いてもらえるかな…」
危害を加えない…この人族…風をもってる…青年の方にふわりとまとわりついた。
「『解除』」
何故か、気持ちが落ち着いた。
リーンの身体がふらりと傾き、髪の長い青年が倒れかかった身体を受け止めてくれた。
リーンを助けてくれた人族。
リーンの事を気にかけてくれる人族の一人。
そんな認識だった。
月日が流れると、その認識が変わった。
リーンが初めて心を許した人族…。
とても楽しそうだった。
その人族は、時々、覗きに行っても微笑んで迎えてくれた。
風が使えるため、私達の事が見えていたからだ。
ふらりと覗きに行った時、横たわり赤い血を吐いていた。
こちらに気付くと、
「リーンには内緒」
そう言われた。
私達は言葉で伝えられない…。
相手が読み取ってくれないと伝えられない…。
再びふらりと覗きに行くと、私達に気付いてくれなかった。
側でぐるぐる回っても、視線が合わなかった。
…見えて…ない…。
思わずリーンの元へ飛んだ。
リーンが初めて心を許した人族が…大切な…人族の命が尽きかけている!
リーンは魔力を使って『言葉』をくれた。
混乱して、ぐるぐるして、必死に伝えようとしたからだ。
リーンは森を出て、人族の元に着いた。
…悲しい顔をしていた。
リーンの魔法で動けるようになって、二人で港街を出ていった。
田舎町で楽しそうに笑ってた。
しばらくのんびり暮らすと…。
なのに…何で!
魔方陣で『風霊』の呼び出しが有って、人族が『木霊』で繋がれているの!
リーンが泣いてる…。
別れはもっと先だった筈なのに…。
「核を中心に…魔力の流れを更新せよ…『樹木再生』」
『御神木』だった木が光り、木から伸びてきた枝が人族を呑み込んでいく。
思わず人族に纏わりついた。
泣かないでリーン。
私も一緒に眠るから、この人族は寂しくないよ。
私の姿は見えてないかも知れないけど、この人族の側にいるから…。
「リーン。愛してるよ。ここから見守っているから…」
「ジン!」
そして、私はリーンの大切な人族と一緒に眠りについた。
私達には大切な可愛い個がいる。
森の奥の魔素の強い『聖域』に住むリーン。
魔力をくれたり、遊んでくれたり、渡りの風霊にも優しいから、皆が大好き。
ただ、魔力が強すぎて、森から出れないのが可愛そうになる。
外にはいろんなモノがあるよ。
いろんな種族が住んでるよ。
立ち寄る度に魔力をもらって、いろんなお話をする。
いずれ外に出て、森を護る旅人になる。
リーンが初めて港街に行ったとき、早々に呼ばれた。
「…『風霊』…」
リーンの腕を捕まえる人族がいる。
「…手を…離して」
嫌がってるリーンの手を離しなさい!
リーンの周りで渦巻いた。
漆黒の髪が巻き上がり、両耳に付けられた金色の耳飾りがキラキラと光る。
男は慌てて手を離した。
「風霊を治めてくれないか。せっかく掃除をしたのに砂が舞う」
声のする方を見ると、建物から、長い髪を片側で束ねた青年が出てきた。
「……。」
リーンを害する者は近付くな…そう渦巻いたままいた。
「『風霊』彼に危害を加えないから…落ち着いてもらえるかな…」
危害を加えない…この人族…風をもってる…青年の方にふわりとまとわりついた。
「『解除』」
何故か、気持ちが落ち着いた。
リーンの身体がふらりと傾き、髪の長い青年が倒れかかった身体を受け止めてくれた。
リーンを助けてくれた人族。
リーンの事を気にかけてくれる人族の一人。
そんな認識だった。
月日が流れると、その認識が変わった。
リーンが初めて心を許した人族…。
とても楽しそうだった。
その人族は、時々、覗きに行っても微笑んで迎えてくれた。
風が使えるため、私達の事が見えていたからだ。
ふらりと覗きに行った時、横たわり赤い血を吐いていた。
こちらに気付くと、
「リーンには内緒」
そう言われた。
私達は言葉で伝えられない…。
相手が読み取ってくれないと伝えられない…。
再びふらりと覗きに行くと、私達に気付いてくれなかった。
側でぐるぐる回っても、視線が合わなかった。
…見えて…ない…。
思わずリーンの元へ飛んだ。
リーンが初めて心を許した人族が…大切な…人族の命が尽きかけている!
リーンは魔力を使って『言葉』をくれた。
混乱して、ぐるぐるして、必死に伝えようとしたからだ。
リーンは森を出て、人族の元に着いた。
…悲しい顔をしていた。
リーンの魔法で動けるようになって、二人で港街を出ていった。
田舎町で楽しそうに笑ってた。
しばらくのんびり暮らすと…。
なのに…何で!
魔方陣で『風霊』の呼び出しが有って、人族が『木霊』で繋がれているの!
リーンが泣いてる…。
別れはもっと先だった筈なのに…。
「核を中心に…魔力の流れを更新せよ…『樹木再生』」
『御神木』だった木が光り、木から伸びてきた枝が人族を呑み込んでいく。
思わず人族に纏わりついた。
泣かないでリーン。
私も一緒に眠るから、この人族は寂しくないよ。
私の姿は見えてないかも知れないけど、この人族の側にいるから…。
「リーン。愛してるよ。ここから見守っているから…」
「ジン!」
そして、私はリーンの大切な人族と一緒に眠りについた。
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