神の宿り木~旅の途中~ジン~

ゆう

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3 狼の里

*切り株

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「ここだ」
 ロキに案内されて来たのは、村からはだいぶ奥地にある場所だった。
 人の気配はなく、二階部分が崩れた廃墟が一軒、草や藪に覆われている。
 直径が2メートル以上ある切り株が、廃墟の家の近くにあった。
 リーンが切り株に触れる。
 木の生命力がわずかに感じるだけ…。
「これかもしれない。結界石が弱まるのも、子ども達が聞いた音も…」
 地震、魔力の弱い村。育たない作物。
 この『御神木ごしんぼく』の力が弱くなって、大地に与えるエネルギーが『御神木ごしんぼく』の維持に使われて、外へ流れ出ていない。
 だから、小風も呼べなくなり、風が止まろうとしている。
「…どうすればいい」
「…わからない。…こんなの初めてだ。エネルギーがつきる前に…、何か考えないと…」
 この地域の生命力が失くなる。
 森が枯れ、狼の里も、タミネキ村も朽ちてしまう。
 それだけではない。
 山の水源が止まるかもしれない。
 止まればその先の街にまで、影響を及ぼす。
 リーンは少し考えて、困ったときの助け船を思い出す。
「『記憶の図書館』へ、行ってくる。あそこになら何か有るかもしれない」
 膨大な資料は有るが、短時間で何処まで探せるか…。
「この『御神木ごしんぼく』の様子、誰かに監視してもらえる?」
「ああ。見張らせる。今以上にエネルギーが弱りだしたら伝令を」
 二人は元来た道を戻って行く。
「何処か、身体を横たえれる場所はないか?あそこは身体を置いて行かなくてはいけない。…私は、動けなくなる」
 『記憶の図書館』は精神だけが入れる場所。
 身体が在るとは入れない…。
「ならば、俺の家へ」

 再び狼の里に戻り、ロキの家に行く。
 里のリーダーとはいえ、普通の民家で暮らしているらしく、並んでいる住宅の一つに入っていった。
 部屋の中はシンプルな造りで、広い居間にはテーブルやソファーが置かれていて、布で仕切られた奥の寝室に案内される。
 二人が余裕で寝れるくらいの大きいベッド。
「私が、使ってもいいのか?」
「かまわない。俺は何処でも寝れる」
 リーンはベッドに座り靴をぬぐ。
「夜明け前に、起こして欲しい。…あそこは時間の感覚が無くなってしまうから。一日に一度は戻ってこないと…戻れなくなってしまう」
「分かった」
 リーンはベッドに横たわり目を閉じた。


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