15 / 39
2 タミネキ村
*捧げ物 1
しおりを挟む
山の麓から三十分ほど登ると、お堂が見えてきた。
辺りも日が昇ったのか明るくなってきている。
とはいえ、木々に覆われている為、薄暗さはある。
村人達は緊張の中を捧げ物の準備をし始めた。
お堂の前に台を置き布を掛けて、持ってきた野菜や魚などを並べていく。
リーンはポーチから結界石を取り出すと、右手に石を持ち、魔力を込める。
ゆっくりと黄色い光を放ち出し、一瞬強く光ると石は光を放ったまま輝いていた。
ソレをお堂の中に納め扉を閉じる。
すると、空気がピーンと張り詰めてきて、冷たい空気が流れ始める。
このような張り詰めた状況が普通なのだ。
「う、上手く…行ったのか…」
村長が不安げに訪ねてくる。
「結界は…」
そう言いかけて、茂みの中から現れた黒い大きな狼の姿を見つける。
「ひ~っっ!」
狼の存在に恐怖で逃げようとする村人達に叫んだ。
「動かないで!」
彼らはその場で硬直する。
ここで逃げたら何のために来たのか分からなくなってしまう。
狼はリーンをじっと見ながら近付き、リーンの周りをぐるりと回ると、村人達の方に近付いて行った。
『呪いの魔法』を受けた村長の息子の方へ寄っていく。
「…ああ…。申し訳なかった…。もう二度と…このような事はしない。どうか、許してくれ…」
涙ぐみ逃げ腰の男に近付き、狼は尻尾でポンと叩く。
「……っ!」
恐怖と驚きに、その場にしゃがみこむ。
そして後の二人にも同じ様に尻尾で叩くと、リーンに近付いて来て、じっと見つめてくる。
「…明日には、呪いは解けるそうだ」
ほっと一息つく村人達。
だが、狼はリーンの周りをぐるぐると回る。
まだ、用事は終わっていないのだろう…。
「…。先に山を降りて下さい。決して後ろを振り向かず…」
村人達は、我先にと山を降りようとする。
「あの、宿に居る連れに、明日には帰ると伝えて下さい」
店の主人が振り向かず手を上げる。
そして、村人達の姿が見えなくなると狼は、お堂の脇にある小道へと入って行った。
付いていくと、そこには山小屋があった。
彼等が使っているのか、傷みは無い。
小屋の入り口で、獣人の姿に代わり中に入ると三匹の狼がいた。
窓からほんのり光が差し込んで、中を照らす。
何も無い、倉庫のような作業部屋のような部屋。
扉が閉められる。
「この間の続きだ」
獣人がそう言う。
「そんな気がしましたよ」
リーンは着ていた上着を脱ぐと、床に落とした。
辺りも日が昇ったのか明るくなってきている。
とはいえ、木々に覆われている為、薄暗さはある。
村人達は緊張の中を捧げ物の準備をし始めた。
お堂の前に台を置き布を掛けて、持ってきた野菜や魚などを並べていく。
リーンはポーチから結界石を取り出すと、右手に石を持ち、魔力を込める。
ゆっくりと黄色い光を放ち出し、一瞬強く光ると石は光を放ったまま輝いていた。
ソレをお堂の中に納め扉を閉じる。
すると、空気がピーンと張り詰めてきて、冷たい空気が流れ始める。
このような張り詰めた状況が普通なのだ。
「う、上手く…行ったのか…」
村長が不安げに訪ねてくる。
「結界は…」
そう言いかけて、茂みの中から現れた黒い大きな狼の姿を見つける。
「ひ~っっ!」
狼の存在に恐怖で逃げようとする村人達に叫んだ。
「動かないで!」
彼らはその場で硬直する。
ここで逃げたら何のために来たのか分からなくなってしまう。
狼はリーンをじっと見ながら近付き、リーンの周りをぐるりと回ると、村人達の方に近付いて行った。
『呪いの魔法』を受けた村長の息子の方へ寄っていく。
「…ああ…。申し訳なかった…。もう二度と…このような事はしない。どうか、許してくれ…」
涙ぐみ逃げ腰の男に近付き、狼は尻尾でポンと叩く。
「……っ!」
恐怖と驚きに、その場にしゃがみこむ。
そして後の二人にも同じ様に尻尾で叩くと、リーンに近付いて来て、じっと見つめてくる。
「…明日には、呪いは解けるそうだ」
ほっと一息つく村人達。
だが、狼はリーンの周りをぐるぐると回る。
まだ、用事は終わっていないのだろう…。
「…。先に山を降りて下さい。決して後ろを振り向かず…」
村人達は、我先にと山を降りようとする。
「あの、宿に居る連れに、明日には帰ると伝えて下さい」
店の主人が振り向かず手を上げる。
そして、村人達の姿が見えなくなると狼は、お堂の脇にある小道へと入って行った。
付いていくと、そこには山小屋があった。
彼等が使っているのか、傷みは無い。
小屋の入り口で、獣人の姿に代わり中に入ると三匹の狼がいた。
窓からほんのり光が差し込んで、中を照らす。
何も無い、倉庫のような作業部屋のような部屋。
扉が閉められる。
「この間の続きだ」
獣人がそう言う。
「そんな気がしましたよ」
リーンは着ていた上着を脱ぐと、床に落とした。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~
ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。
帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか?
国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆
ゆう
BL
森の奥の魔素の強い『森の聖域』に住むリーンは『森の管理者』として『風霊』に呼ばれ、各地で起こる自然災害や、壊れそうな結界の被害を最小限に抑えるため、各地を飛び回っていた。
そんなリーンが出会ったのは、魔力を持っている事を隠されて、魔法を使う事の出来ない剣士で…。
リーンに掛けられた幾つもの魔法が動き出し、発動し始める…。
長い時間の中で出会った、獣人族、水人族、魔女、人族と再開しながら、旅の終わりに向かう…。
長い時間を生きるリーンの最初で最後の恋物語。
⚫水中都市~フールシアの溺愛~
リーンの過去編です。
馬車の中で語った、『水中都市へ行って、帰って来た話』です。
ルーク達には、フールシアとのアレコレは、流石に省いて話してます。
⚫魔女の森~対価~
リーンの過去編です。
かつて一緒に行動を共にして暮らした、獣人のユキに掛けた魔法が消えた。
彼女にあげた、その耳飾りを探して『魔女の森』へ、迷いこむ。その日は『魔女の宴』で…。
魔女達から逃げきれず、捕まってしまうが…。
~旅の途中~ジン~の少し前の話です。
(ジンと、出会った後の話)
⚫神の宿り木~再生~に入ったのに、アリミネ火山~追憶のキース~が意外と長くなってしまった。
でも、これがあったからのキラですからね…。
⚫森の聖域
リーンが眠って目覚める場所の話です。
待ってるルークは…あの子達に囲まれて、気が紛れているのかも…。
⚫名前を呼んで…。(番外編)
ヒナキとユグの話が書きたくなってしまったので、番外編です。
異種族、長寿の二人には、これからも時間が有るから、ゆっくりとね…。
⚫希少種
ぐるっと一周回って来ました。
本当はココに~ジン~の話が、番外編で入った方が良いような気がしたけれど、先に進みます。
*****
*神の宿り木~旅の途中~ジン~の、十数年後の話です。(~ルーク~へ、たどり着くまでの過去の話しです)(~ジン~は完結してます)
こちらも読んで見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる