神の宿り木~旅の途中~ジン~

ゆう

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1 出会い

*そして…

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 あの『満月の夜』の後からが大変だった。
 あの覗き部屋の映像が、途中から放映されていたらしい。
 『目』は、消えていたはずなのに…。
 後からジョイを問い詰めると、正気をなくした辺り…ジンと繋がって…「もっと…」て、言い出したときから…映し出されていたそうで…。
 ソレまでは此方に気付かれないくらい、ぼんやりとボヤけた映像が…流れていたそうで…。
 こっちも『目』と『耳』の存在を忘れて、ジンを求めていたわけで…。
 知らない人に見られていたなんて…恥ずかしくて仕方がない…。
 そして何故か『夏乃館』のお姉さん達が、「おめでとう」って、お祝い持ってきたり…何で?
 港のおじさんが、魚を差し入れしてくれたり…だから何で?
 差し入れラッシュが続いた。
 ジンに何故か聞くも「もらっとけよ」と、言われるだけ。
 あれから港街では絡まれる事は無く、お客さんにも触られる事は無くなった。

 長雨が続いている。
 リーンは窓辺に置かれた椅子に座り、山の方を眺めていた。
 森の事が気になりだしていたからだ。
 森を離れてから随分と時間がたっている。
 人族と余り関わら無いように暮らしてきたから、ココは楽しくて離れがたかった。
 まだ『風霊』は呼びに来ない。
 だけど呼ばれてからでは、距離が離れすぎている。
「どうした?」
「…。」
 部屋に入ってきたジンは、リーンの顔を引き寄せ口付ける。
 ボーッとしていたリーンは、何が起こっているのか分からず、されるがままに受け入れていた。
 唇が離れ、ようやく何をしていたかに気付く。
 どうしよう…。
 ジンとキスするのに抵抗が無くなってしまった。
「…そろそろ森に、…帰らないと…」
「そうだったな…」
 リーンは寂しそうにジンを見る。
「呼ばれてる『夏乃館』の『新月』が終わったら、帰るよ」
「そうか…」

 『夏乃館』の『新月』のイベントは、彼女らの趣味らしく、また、女装に近い恥ずかしい格好をさせられ、ジンと繋がるという…。
 見せ物じゃないって!
 恥ずかしい思いをした。
 それも、お客さんは女性の方ばかりだったそうで…。
 
 雨はまだ、山に降り続いてる。


「また来いよ。一年に一度位でもいいから…。薬草や山菜持って。サービスしてやるから」
 乗り合い馬車に乗って隣町に向かう、リーンの見送りに来たジン達は笑顔で送ってくれる。
「それは、契約?」
「違う。約束。…そう言えば、あの下着、気に入ったんだって?今も履いているのか?」
 そう言ってお尻を撫でてくる。
 ジンが触ってくるのに慣れてしまうなんて…。
「…違う。ジョイが…」
 下をうつ向き頬を染める。
「着替え…全部これに変えてしまってから…仕方なく…」
「イイ仕事するな。ジョイ!」
 ジンはジョイに笑顔を向けると、ジョイもニヤリと笑う。
「お前に似合いそうなの集めとくよ。だから、また来い」
 名残惜しいけど、『またおいで』と約束をくれる。
「…薬草とかは売りに来るから…」
「じぁな、リーン」
 リーンは馬車に乗り、隣町へ向けて馬車が動き出す。
 短い間だったけど濃厚な日々だった。
 また来るよ。
 リーンは港街に別れを告げた。
 

 それから一年に一度は『春乃館』を訪ねて行くようになり、その時の満月だけは、ジンは客を取らず、リーンと『魔力の交合』をするのだった。
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