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1 出会い
*ジョックストラップ
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目が覚めると、見知らぬ部屋に寝かされていた。
身体を起こし辺りを見回すと、木造の座敷部屋。
その中央に敷かれた、布団の中にいた。
荷物は枕元に置いてあり、ほっとする。
さっきまでの息苦しさは無い。
塩の香りもそれほどキツくなく、心地良い。
人の気配がして、戸が開いた。
「あっ。目が覚めたみたいだね」
淡い金髪のスラッとした体型の青年がニコニコと部屋に入ってきて、枕元に座る。
「俺、ジョイ。名前は?」
「リーン。ここは何処?…確か港街に着いて、目眩がして…知らない人に腕捕まれて…風霊を呼んだ所までは…覚えているんだけど…」
「さっきの竜巻だね」
そう言ってジョイは笑う。
「ここは、春乃館。リーンは意識を失って、ジンさんに抱えられて来たんだよ。ねぇ、お腹空いてない?」
「特には…」
「だったらお風呂が先だね」
そう言って、ジョイは立ち上がる。
「あの…状況がよくわからないんだけど…」
「今のままだと目立つんだよね。身体も服も綺麗にしておかないと、浮いてる」
「……。」
確かに身体はベタベタはしている。
潮風に当たったからだろうか。
「いいから、おいで。ここのお風呂、大きいし気持ちいいよ」
…うん。このベッタリとした感じの汗をを拭いたい。
リーンは立ち上がり、ジョイについて風呂場へと向かった。
「何これ」
「うん?下着だよ」
リーンは下着と言われた小さな布切れを持ち上げる。
お風呂は岩風呂で、一度に五人ぐらい入っても余裕が有りそうなくらい広くて、心地良かった。
風呂から上がり着ていた服がなく、どうしたらと困っていたら籠を差し出されたのだが…。
「…。」
「これエロくてお客さん受け良いんだよ」
「…。」
戸惑うリーンに明るく声をかけてくる。
「履き方はね、こんな感じ」
その下着を着けたジョイがクルリと回る。
「…。」
前だけが小さな布で覆われていて、あとは紐…で、お尻を上げ、後ろは剥き出し…になっている。
「リーンの服は洗濯に出しちゃったから、下着はこれしかないよ。それとも履かないでいる?」
「…。」
ジョイは丈の長い若草色の服に袖に腕を通し、前で掛け合わせ、太めの紐で腰縛る。
着替えは荷物の中にあるが、履かずにジョイが着てる服を…歩くたび裾がはだけるあの服を着る勇気はない。
これしか無いのなら、履きましょう。
ため息と共に下着に足を通す。
「で、服はこれ」
と、ジョイと同じ形の淡い青紫色の服を、肩にかけてくる。
確か、リマ商会の人達が着物…と言っていたような気がする。
あきらめの境地で渡された服を着て、腰紐ではだけないように縛る。
少し歩くと歩き馴れないのもあるのか、膝辺りまで捲れ上がり、小股で歩くしかない。
「足元がスースーする」
「こっちに座って。前髪、長いからちょっと切るね。て、いうか、髪の毛サラサラ」
リーンは言われたとうりに椅子に座ると、ジョイが膝の上に紙を置いてハサミでカットし始めた。
「いつもどうしてるの?」
「邪魔になったら適当に切ってた」
「もったいない」
カットし終わると、さっきとは別の部屋に連れていかれた。
そこには、爽やかな顔立ちのちょっと色気のある、くすんだ金髪を横で束ねた長髪の青年が、ソファーに座り本を呼んでいた。
着ている花紺色の着物が金髪を浮かび上がらせ、独特の雰囲気を出している。
あの時、声をかけてきた人。
「ジンさん!この子、このまま店だし出きるよ!」
店だし?
何の話をしているのかが分からない。
とりあえず、確認しておかなくては、いけないことがある。
「風呂まで使わせてもらって今さらだけど、今の状況を教えてほしい。とりあえず、ここ何処?」
「ジョイ。説明してないのか」
青年は呆れて本を閉じ、テーブルの上に置いた。
「ここは、『春乃館』。さっき、男に何処かへ連れて行かれそうになって倒れたから店に連れてきた。で、ここに居る。ここでは着物の方が違和感ないから着替えてもらった。…そう言えば名前、まだ聞いてなかったな。俺はジン。この館の…年長者かな」
ジンは少し首をかしげ、チラリとジョイを見る。
「私はリーン。旅行者だ。初めて港街に来て、この湿度と潮風に気持ち悪くなってしまったんだ。助けてくれてありがとう。」
「この後の予定は?」
「宿を探して、港街を見て回りたいな。と、思ってるんだけど」
そう。宿探しからだ。
「…まだ宿が決まっていないなら、しばらくここにいれば良い。どれくらい滞在する予定なんだ?」
泊めてくれるのは、ありがたいけど…。
「まだ決めてない」
ジンは少し考えて。
「…なら、ここに居る間、店を手伝ってくれないか?お客さんに料理や飲み物出したり、部屋を掃除したりなんだが…人手が足りなくてな」
「ここって、旅館なの?」
ジンはジョイと目を合わせ、肩をすくめ言う。
「春を売る店だよ」
「春?」
「身体を売って、お金をもらう店だよ」
「…。」
ようやく彼らが言っていた意味がわかった。
だけどあの下着で、お客さんが喜ぶ?
それが謎だけど。
「手伝いはするけど、店にはでないよ」
「ああ。それでいい」
ジンが笑う。
そうそう、本来の目的を忘れてしまいそうだ。
「できたら…時間がある時に、港街を案内してくれると嬉しいんだけど」
「案内してやるよ」
話はまとまり、しばらくの間ここでお世話になることにした。
その時はまだ、未知の体験をする事になるとは思いもしなかった。
身体を起こし辺りを見回すと、木造の座敷部屋。
その中央に敷かれた、布団の中にいた。
荷物は枕元に置いてあり、ほっとする。
さっきまでの息苦しさは無い。
塩の香りもそれほどキツくなく、心地良い。
人の気配がして、戸が開いた。
「あっ。目が覚めたみたいだね」
淡い金髪のスラッとした体型の青年がニコニコと部屋に入ってきて、枕元に座る。
「俺、ジョイ。名前は?」
「リーン。ここは何処?…確か港街に着いて、目眩がして…知らない人に腕捕まれて…風霊を呼んだ所までは…覚えているんだけど…」
「さっきの竜巻だね」
そう言ってジョイは笑う。
「ここは、春乃館。リーンは意識を失って、ジンさんに抱えられて来たんだよ。ねぇ、お腹空いてない?」
「特には…」
「だったらお風呂が先だね」
そう言って、ジョイは立ち上がる。
「あの…状況がよくわからないんだけど…」
「今のままだと目立つんだよね。身体も服も綺麗にしておかないと、浮いてる」
「……。」
確かに身体はベタベタはしている。
潮風に当たったからだろうか。
「いいから、おいで。ここのお風呂、大きいし気持ちいいよ」
…うん。このベッタリとした感じの汗をを拭いたい。
リーンは立ち上がり、ジョイについて風呂場へと向かった。
「何これ」
「うん?下着だよ」
リーンは下着と言われた小さな布切れを持ち上げる。
お風呂は岩風呂で、一度に五人ぐらい入っても余裕が有りそうなくらい広くて、心地良かった。
風呂から上がり着ていた服がなく、どうしたらと困っていたら籠を差し出されたのだが…。
「…。」
「これエロくてお客さん受け良いんだよ」
「…。」
戸惑うリーンに明るく声をかけてくる。
「履き方はね、こんな感じ」
その下着を着けたジョイがクルリと回る。
「…。」
前だけが小さな布で覆われていて、あとは紐…で、お尻を上げ、後ろは剥き出し…になっている。
「リーンの服は洗濯に出しちゃったから、下着はこれしかないよ。それとも履かないでいる?」
「…。」
ジョイは丈の長い若草色の服に袖に腕を通し、前で掛け合わせ、太めの紐で腰縛る。
着替えは荷物の中にあるが、履かずにジョイが着てる服を…歩くたび裾がはだけるあの服を着る勇気はない。
これしか無いのなら、履きましょう。
ため息と共に下着に足を通す。
「で、服はこれ」
と、ジョイと同じ形の淡い青紫色の服を、肩にかけてくる。
確か、リマ商会の人達が着物…と言っていたような気がする。
あきらめの境地で渡された服を着て、腰紐ではだけないように縛る。
少し歩くと歩き馴れないのもあるのか、膝辺りまで捲れ上がり、小股で歩くしかない。
「足元がスースーする」
「こっちに座って。前髪、長いからちょっと切るね。て、いうか、髪の毛サラサラ」
リーンは言われたとうりに椅子に座ると、ジョイが膝の上に紙を置いてハサミでカットし始めた。
「いつもどうしてるの?」
「邪魔になったら適当に切ってた」
「もったいない」
カットし終わると、さっきとは別の部屋に連れていかれた。
そこには、爽やかな顔立ちのちょっと色気のある、くすんだ金髪を横で束ねた長髪の青年が、ソファーに座り本を呼んでいた。
着ている花紺色の着物が金髪を浮かび上がらせ、独特の雰囲気を出している。
あの時、声をかけてきた人。
「ジンさん!この子、このまま店だし出きるよ!」
店だし?
何の話をしているのかが分からない。
とりあえず、確認しておかなくては、いけないことがある。
「風呂まで使わせてもらって今さらだけど、今の状況を教えてほしい。とりあえず、ここ何処?」
「ジョイ。説明してないのか」
青年は呆れて本を閉じ、テーブルの上に置いた。
「ここは、『春乃館』。さっき、男に何処かへ連れて行かれそうになって倒れたから店に連れてきた。で、ここに居る。ここでは着物の方が違和感ないから着替えてもらった。…そう言えば名前、まだ聞いてなかったな。俺はジン。この館の…年長者かな」
ジンは少し首をかしげ、チラリとジョイを見る。
「私はリーン。旅行者だ。初めて港街に来て、この湿度と潮風に気持ち悪くなってしまったんだ。助けてくれてありがとう。」
「この後の予定は?」
「宿を探して、港街を見て回りたいな。と、思ってるんだけど」
そう。宿探しからだ。
「…まだ宿が決まっていないなら、しばらくここにいれば良い。どれくらい滞在する予定なんだ?」
泊めてくれるのは、ありがたいけど…。
「まだ決めてない」
ジンは少し考えて。
「…なら、ここに居る間、店を手伝ってくれないか?お客さんに料理や飲み物出したり、部屋を掃除したりなんだが…人手が足りなくてな」
「ここって、旅館なの?」
ジンはジョイと目を合わせ、肩をすくめ言う。
「春を売る店だよ」
「春?」
「身体を売って、お金をもらう店だよ」
「…。」
ようやく彼らが言っていた意味がわかった。
だけどあの下着で、お客さんが喜ぶ?
それが謎だけど。
「手伝いはするけど、店にはでないよ」
「ああ。それでいい」
ジンが笑う。
そうそう、本来の目的を忘れてしまいそうだ。
「できたら…時間がある時に、港街を案内してくれると嬉しいんだけど」
「案内してやるよ」
話はまとまり、しばらくの間ここでお世話になることにした。
その時はまだ、未知の体験をする事になるとは思いもしなかった。
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