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プロローグ
*癒しの枝
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風霊が呼んでいる。
風に呼ばれてリーンは港街を目指した。
リーンにいろんな事を教えてくれたジンの命が消えかけている。と。
普段は森の奥深くに住んでいるので、港街までは時間がかかる。
足早に獣道を使い、山を2つ越え、一番近い町に出た。
そこから港街まで馬車を乗り継いで、半日でたどり着く。
久しぶりの強硬突破だ。
フードを被り、漆黒の髪を隠し馬車を降りると、塩の香りと人の賑かさが耳に入る。
山には無い騒めきに、目眩を起こしそうになる。
そこから、迷わず花街にある『春乃館』へと向かう。
大通りから裏道に入ると、さっきまでのざわめきが少し落ち着き、人通りも少なくなる。
夜には逆転してしまうのだが…。
そして、見知った家の裏門から中へ入り、裏口の戸を開け声かけた。
「ジン?ジョイ?誰か居ないの?」
すると見知らぬ若い青年が奥から姿を現す。
「何か用?」
青年はじろじろと、こちらを見る。
「ジンかジョイは?」
「ジョイさんは今、出かけてて…。ジンさんは…」
視線を反らし気まずそうに下を向く。
「部屋にいるの?」
「ああ」
リーンは靴を脱いで家の中へ上がろうとすると、
「待てよ。あんた誰だ?」
青年は行く手を遮る。
「私はリーンだ。ジンに会いに来た」
「あんたが…」
青年は身を引く。
リーンは家の中へ入り、見知ったジンの部屋へ駆け上がった。
扉を開け中へ入ると、少し窶れたジンがベッドの上で壁に寄りかかり、外を眺めていた。
何処となく虚ろで、覇気がない。
「ジン」
「よう。リーン」
弱々しい声にリーンはジンに飛び付き、ぎゅっと抱きしめた。
全てを包み込んでくれた身体の厚みが、筋肉が落ち細くなっている。
「…無理が祟ったみたいだ。…身体を壊しちまった。…お前との約束…。…俺の故郷を…見せてあげれそうにないな…」
ジンは寂しそうに呟く。
「……。」
抱きしめてジンの温もりを感じていると、バタバタと音がしてジョイが部屋に駆け込んで来た。
「リーン!」
リーンは振り向き、微笑む。
「ねぇジョイ。ジンを連れてっていい?彼の故郷へ」
「いいけど、今の身体じゃ…」
ジョイは心配そうにジンを見る。
リーンはジンの頬に手を当た。
「ジン。ここに居れば一年は生きられる。私と旅をすると半分しか生きれないかも知れない」
ジンがリーンの髪を撫でる。
「お前と一緒に居たい」
「ジョイ、鍵閉めて」
リーンはジンをベッドに寝かすとその上に跨がった。
「『フィールド転開』」
淡く二人の周りに複雑な文字の書かれた魔方陣が現れる。
「フィールド。作れたのか」
「作れるようになったんだよ」
リーンは微笑み、ジョイの方を向いて、
「明日、ジンは容態が良くなって、お世話になった方に挨拶に行き、私と一緒にジンの故郷へ向かう。で、良いよね」
「ああ。」
「ちょっと痛いけど我慢して。『癒しの枝』」
魔方陣から細い木の枝が出てきて、ジンの身体の中へと入っていく。
「うっっ…くっっ…あぁぁ…」
ジンが苦痛に顔を歪め叫ぶ。
そして、出てきた枝がジンの中へ全て消えていく。
「キスして。ジン」
ジンの腕がゆっくりと上がり、リーンの首を捕まえ口づける。
そして光が一瞬強くなり、消えていく。
リーンはジンの横に倒れ込み目を閉じる。
「明日…には…回復…する…から…」
そう言って眠りに落ちる。
ジンはゆっくりと身体を起こし、身体を動かす。
今までどうりとは、いかないが自由に動かせている。
そして、隣で眠るリーンの漆黒の髪を撫でた。
「ジョイ。店の事、あとは頼んだ」
「はい。ジンさん」
ジョイの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
そして、二人は旅だつ。
ジンの故郷であるタミネキ村へ。
風に呼ばれてリーンは港街を目指した。
リーンにいろんな事を教えてくれたジンの命が消えかけている。と。
普段は森の奥深くに住んでいるので、港街までは時間がかかる。
足早に獣道を使い、山を2つ越え、一番近い町に出た。
そこから港街まで馬車を乗り継いで、半日でたどり着く。
久しぶりの強硬突破だ。
フードを被り、漆黒の髪を隠し馬車を降りると、塩の香りと人の賑かさが耳に入る。
山には無い騒めきに、目眩を起こしそうになる。
そこから、迷わず花街にある『春乃館』へと向かう。
大通りから裏道に入ると、さっきまでのざわめきが少し落ち着き、人通りも少なくなる。
夜には逆転してしまうのだが…。
そして、見知った家の裏門から中へ入り、裏口の戸を開け声かけた。
「ジン?ジョイ?誰か居ないの?」
すると見知らぬ若い青年が奥から姿を現す。
「何か用?」
青年はじろじろと、こちらを見る。
「ジンかジョイは?」
「ジョイさんは今、出かけてて…。ジンさんは…」
視線を反らし気まずそうに下を向く。
「部屋にいるの?」
「ああ」
リーンは靴を脱いで家の中へ上がろうとすると、
「待てよ。あんた誰だ?」
青年は行く手を遮る。
「私はリーンだ。ジンに会いに来た」
「あんたが…」
青年は身を引く。
リーンは家の中へ入り、見知ったジンの部屋へ駆け上がった。
扉を開け中へ入ると、少し窶れたジンがベッドの上で壁に寄りかかり、外を眺めていた。
何処となく虚ろで、覇気がない。
「ジン」
「よう。リーン」
弱々しい声にリーンはジンに飛び付き、ぎゅっと抱きしめた。
全てを包み込んでくれた身体の厚みが、筋肉が落ち細くなっている。
「…無理が祟ったみたいだ。…身体を壊しちまった。…お前との約束…。…俺の故郷を…見せてあげれそうにないな…」
ジンは寂しそうに呟く。
「……。」
抱きしめてジンの温もりを感じていると、バタバタと音がしてジョイが部屋に駆け込んで来た。
「リーン!」
リーンは振り向き、微笑む。
「ねぇジョイ。ジンを連れてっていい?彼の故郷へ」
「いいけど、今の身体じゃ…」
ジョイは心配そうにジンを見る。
リーンはジンの頬に手を当た。
「ジン。ここに居れば一年は生きられる。私と旅をすると半分しか生きれないかも知れない」
ジンがリーンの髪を撫でる。
「お前と一緒に居たい」
「ジョイ、鍵閉めて」
リーンはジンをベッドに寝かすとその上に跨がった。
「『フィールド転開』」
淡く二人の周りに複雑な文字の書かれた魔方陣が現れる。
「フィールド。作れたのか」
「作れるようになったんだよ」
リーンは微笑み、ジョイの方を向いて、
「明日、ジンは容態が良くなって、お世話になった方に挨拶に行き、私と一緒にジンの故郷へ向かう。で、良いよね」
「ああ。」
「ちょっと痛いけど我慢して。『癒しの枝』」
魔方陣から細い木の枝が出てきて、ジンの身体の中へと入っていく。
「うっっ…くっっ…あぁぁ…」
ジンが苦痛に顔を歪め叫ぶ。
そして、出てきた枝がジンの中へ全て消えていく。
「キスして。ジン」
ジンの腕がゆっくりと上がり、リーンの首を捕まえ口づける。
そして光が一瞬強くなり、消えていく。
リーンはジンの横に倒れ込み目を閉じる。
「明日…には…回復…する…から…」
そう言って眠りに落ちる。
ジンはゆっくりと身体を起こし、身体を動かす。
今までどうりとは、いかないが自由に動かせている。
そして、隣で眠るリーンの漆黒の髪を撫でた。
「ジョイ。店の事、あとは頼んだ」
「はい。ジンさん」
ジョイの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
そして、二人は旅だつ。
ジンの故郷であるタミネキ村へ。
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