上 下
70 / 74
家族

理由

しおりを挟む
 リーンがお父様を連れて何処かに『転移』した。
 呆然とする中、キリトが部屋を出ていって、カズキさん達を呼んできた。
 キリトにとって、慣れた場所での、自分の役割を果たしているのだと、様子を見て少し冷静な自分もいる…。
 カズキさんとアオさんがハンカチを差し出してきたので、ユーリ達は受け取り、弟のキースと妹のニーナも涙をぬぐった。
 そして二人に説明される。
 リーンがお父様を『森の聖域』と呼ばれる『魔素』の濃い場所、リーンが魔力を取り戻した場所に連れていって、治療するらしい。
 ただ、それが一年で済むのか、二年かかるのか、もしくは十年以上かかるかも知れないとの事…。
 なので、お父様に、子供達の元気な姿を見せて、眠りにつかせる為だったと、教えられた。
 でも、三つ子の一人、ミーナは来れない場所にいるため、不在だった。
 そして、お父様が病で亡くなった事にする事。
 いつ目覚めるか分からない状態を、国民に説明するわけにはいかないからだ。
 すべて身内だけの秘密になるので、この後、ささやかな国葬を行い、棺にはお父様の『魔法剣』が納められると言う。
 お父様の『魔法剣』は、お父様の魔力を帯びているので、棺の中は見せず、確かにそこに身体だけが有るのだと、納得させるためだそうだ。
 そこまでの段取りをしての、お父様の療養なのだと…。
 ユーリとジーンは頷き、なんとなくよく分かっていないキースとニーナは首を傾げた。
「後で説明してあげるね」
 ユーリはそう二人に言い、頭を撫でて上げる。
 七歳になったばかりの二人には、まだ少し難しいのかも知れない…。

 落ち着きを取り戻し、ユーリはキリトと一緒に用意された部屋に移動した。
 王都を出たので、ココにはユーリの部屋は無い。
 どっと疲れが出て、ベットに横たわると、キリトが果物と飲み物を持ってきてくれた。
 ユーリは身体を起こし、果物をいくつかついばむと、腹部に痛みを感じた。
 …もしかして…産まれるの…?
 いきなり過ぎない…?
「…キ…リト…」
 ユーリがキリトに声をかけると、キリトは察して慌てて部屋を出て、医師を呼んできてくれた。
 やはり前兆らしい…。
 部屋の中がバタバタと騒がしくなる。
 あらかじめ準備されていたので、慌てることはないが、少し緊張する…。
「…ユーリ。大丈夫だから」
 キリトがそう言って微笑んでくれる。
「うん。がんばる」
 そう言った事までは覚えているが、その後、ユーリは意識を失っていた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます! ※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!! 契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。 ※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。 ※R要素の話には「※」マークを付けています。 ※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。 ※他サイト様でも公開しています

処理中です...