神の宿り木~ユーリの初恋~⦅完結⦆

ゆう

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家族

新しい家

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 ユーリのお腹が少し膨れてきた頃、今度はユーリとキリトの家が『転移』してくることになった。
 小屋だけでなく家まで『転移』して建てるの!?
 ユーリはすごく驚いた。
 『転移』する事を前提に建てられる家で、屋根の有る別の場所で、外観を組み立ててしまえば、天候に左右されないと言うことだそうだ。
 内装もほとんど出来上がっていれば、『転移』した後に、細かな修正と、補強、排水の設備を取り付ければ、すく間にでも住める様になるそうだ。
 とは言え、ソレだけの費用は計り知れない…。
 聞けば、カザンナ王国にいるお父様が、お祝いだと費用を出してくれたみたいだ。
 …ありがとう、お父様!
 今は、カザンナ王国に戻れないから、産まれたらキリトと一緒に会いに行くね。

 家が『転移』してくるのは、一つのイベントのように子供達は喜んでいた。
 ただ、前回のような『小屋』ではなく『家』なので、魔方陣の規模も大きく、事前に下準備をしなくてはいけないそうだ。
 前日から家を『転移』する場所に、土魔法を使って強度を付け、地下室を作ってさらに、土魔法で土台を作っていた。
 見ているだけでも面白いので、時間が有ると子供達と見学に行っていた。
 子供達も興味心身に、『あれ何』『地下室作ってるの?』と、訪ねてきた。
 ユーリは分かる範囲で答えてあげ、子供達はニコニコと出来上がって行く、家の土台を見て楽しんでいた。

 家を『転移』させるために、やって来たのは、お父様の側近のジェスさんを含めて五人もカザンナ王国からやって来た。
 お父様…五人の魔方陣で『転移』させてくるなんて、どれだけ大きい家を送って来るつもりなの!?
 ユーリは思わず頭を抱えた。
 土台を作っているとき、ちょっと大きいな…とは思った。
 部屋数が多いのかも…。
 ユーリは冷や汗をかきながら、少し離れて子供達と作業を見ていた。
 五人が位置に付き、『転移』の魔方陣が輝き出す。
 以前よりも大きく光の柱が立ち上がり、光が消えると共に、『家』と言うよりは、小さな『屋敷』が姿を表した。
 驚きに誰もが口を開けて、ポカンと立ち尽くした。
 …お父様。
 有りがたいけど、『家』大きすぎです…。
 
 しばらくして正気に戻った子供達が歓声を上げる。
「「すごい!!」」
「「おっきい、お家!!」」
 今、子供達が住んでいる建物と同じくらいの大きさが有る…。
 外観は、子供の頃、王都へ行く前に過ごしていた、カザナのお父様のお屋敷の縮小のような感じだ。
 ジェスさん達は、『転移』してきた屋敷を魔法で固定して、確認点検をしている。
 それが終わると、お父様の側近のジェスさんが、こちらに声をかけてきた。
「お久しぶりです。ユーリ様。中に入っても大丈夫ですよ」
「「「「うわぁっ!!」」」」
 子供達は嬉しそうに、歓声を上げて屋敷の方にかけて行き、ラビが慌てて追いかけていく。
 そして子供達はジェスさんと一緒に来ていた人達に案内されて、屋敷の中へと入っていった。
 きっと先に頼んで有ったのだろう…。
 そんな子供達の後ろ姿を見送ると、ジェスさんが微笑んだ。
「おめでとうございます。…なんとなく、そんな気はしていましたが、本当に捕まえたのですね」
 名前は出さないけれど、キリトの事よね。
「ありがとう…。捕まえた…のよね」
 チラリとユーリはキリトの方を見る。
「ええ。狼獣人達は、一途ですから、認めてしまうと溺愛されますよ」
 ジェスにそう言われて、ユーリは頬を染める。
「まだ、ちょっと実感無いけど、キリトと、この子と一緒に幸せになるよ」
 ユーリがそう言ってお腹をさすると、ジェスが眼を丸くしてユーリを見てくる。
 えっ…。言ってなかった…?
「…えっと、キリトの子供…と、言うことですよね…」
「そうだよ。聞いてない?」
「…聞いてないです」
 ジェスは頭を抱える。
「…ユーリ様、そちらも…おめでとうございます。ルーク様は、ユーリ様の花嫁衣装を…楽しみに…」
 ジェスはうろたえながらそう言う。
 …お父様には手紙で、キリトとつがいになるから、いずれ一緒に暮らします。と、報告はした。
 その後、妊娠が分かって、チイさんががヒイロさんに伝えると言っていたから、そこからお父様に伝わった筈なんだけど…。
 伝え忘れた?
 ヒイロさんがそんな事をする筈がないから、お父様がジェスさんに伝えなかった?
「…今は動けないから、産まれたら、顔を見せに行くわ。その時に、花嫁衣装を着るからって言っといて」
 …お父様が、故意に聞こえないフリをしたかだ…。
 もう一人孫が増えるんだから、楽しみにしていてくれれば良いのに…。
 ユーリはそう思った。
 

 この時すでに、ユーリの父親であるルークの身体は、魔力不循環が起こっていて、ベットの上で執務を行っていた事など、ジェスが言わない限り、ユーリは知りもしなかった。
 
 
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