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独占欲
ラビのため息 1
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その日は珍しく、キリ兄が起きて来なかった。
いつもきっちり同じ時間に下りてくるのに、動いた気配が無い。
ラビは寝ぼけている子供達をお越し、食堂に朝食の準備に戻る前、旧館のキリ兄の部屋の前まで来た。
やはり動く気配が無い。
まだ寝ている?
ラビは部屋の扉を叩き、声をかけた。
「キリ兄。起きてる?」
ガタリと中で音がして、動く気配がする。
「…悪い。…すぐに向かう」
中から声が聞こえたので、ラビは急いで食堂に向かう。
学校組の朝食の準備だ。
温めて、更に盛り付けするだけだが、十人分の準備となると、一仕事だ。
…キリ兄…本当に寝ていたのか?
珍しい…。
そう思ったが、子供達が食堂に集合するまでに、準備しないといけないラビは、思考を置いといて、急いだ。
すぐにキリ兄が食堂に来て、朝食の準備をし、学校組を送り出した後、ラビは気がついた。
もしかして、キリ兄…発情期が来ている?
いつもより怠そうで、少し体温が高いような気がする。
このままでは、子供達に影響するかもしれないし、キリ兄が辛いだろう…。
それに、キリ兄…気が付いて無いのか?
ラビは確認のため、難しい顔をして言った。
「…キリ兄、薬飲んでる?」
キリトは不思議そうな顔をして、ハッとして驚いていた。
気がついていなかった!?
子供達の事で忙しかったのは分かるけれど、体調の異変に気がついてよ…。
「薬…飲んでくる…」
キリ兄は、バツの悪そうな顔をして、旧館の自分の部屋へと戻っていった。
ラビは、ため息を付いて、今後の予定を考えた。
キリ兄が発情期になれば、薬を飲んでおとなしくするため、しばらく旧館で事務処理に追われる。
子供達の面倒は見られない。
発情期の余波に当てられて、子供達に影響が出るかも知れないからだ。
と、なれば二、三日は、ユーリちゃんと二人で子供達の事をするとして…。
とりあえずチイさんに報告だけしておくか…。
それと、ユーリちゃんには旧館に近付か無いように、言っておかないと…。
せっかく抑制剤で押さえても、ユーリちゃんの匂いにキリ兄の身体が反応してしまうかもしれない…。
ラビは年少組を起しに向かい、ユーリが出勤してくるのを待っていた。
ユーリが出勤してくると、ユーリは年少組を連れて小川の方に散歩に出かけた。
今後の事を相談するため、子供達とユーリの距離を遠ざけ、キリ兄の所にいくためだ。
旧館に近付くと、旧館の結界が作動していた。
普段は使っていないが、主に秘密の話をしたりするのに外部に音が漏れないようにするのだが…。
ラビは首を傾げて旧館に入り、気がついた。
なんとなくキリ兄の匂いが充満している。
…薬が効いていない?
ラビは不安になりながらキリトの部屋の前まで来ると、それは現実になった。
獣人だから気が付くのかも知れないが、キリ兄の匂いが部屋から漏れだし充満している。
「…キリ兄。薬が効いてないの?」
扉越しにラビがそう聞くと、怠そうな声が聞こえた。
「…ああ」
もう、今さら動けないのだ。
このまま、やり過ごすしか無い…。
…もて余す欲求を発散してしまえば、発情期が収まるのだが…。
「…しばらく、お前も…談話室で…寝ろ…」
「…わかった。食事だけは廊下に置いておくね」
ラビはそう言ってキリトの部屋の前を離れた。
ヤバい!
かなりヤバい状態だ。
今まで忙しさにかまけて、来ていなかった発情期が来て、一気にぶり返しが来て、何とか理性を残しているけど、本当に二、三日で収まるのか…?
キリ兄の身体が持つのか…?
発するオスの匂いが強すぎる…。
結界を張って有るから、旧館から匂いは漏れないだろうけれど…。
…気を付けないと、僕でもクラクラするよ…。
いつもきっちり同じ時間に下りてくるのに、動いた気配が無い。
ラビは寝ぼけている子供達をお越し、食堂に朝食の準備に戻る前、旧館のキリ兄の部屋の前まで来た。
やはり動く気配が無い。
まだ寝ている?
ラビは部屋の扉を叩き、声をかけた。
「キリ兄。起きてる?」
ガタリと中で音がして、動く気配がする。
「…悪い。…すぐに向かう」
中から声が聞こえたので、ラビは急いで食堂に向かう。
学校組の朝食の準備だ。
温めて、更に盛り付けするだけだが、十人分の準備となると、一仕事だ。
…キリ兄…本当に寝ていたのか?
珍しい…。
そう思ったが、子供達が食堂に集合するまでに、準備しないといけないラビは、思考を置いといて、急いだ。
すぐにキリ兄が食堂に来て、朝食の準備をし、学校組を送り出した後、ラビは気がついた。
もしかして、キリ兄…発情期が来ている?
いつもより怠そうで、少し体温が高いような気がする。
このままでは、子供達に影響するかもしれないし、キリ兄が辛いだろう…。
それに、キリ兄…気が付いて無いのか?
ラビは確認のため、難しい顔をして言った。
「…キリ兄、薬飲んでる?」
キリトは不思議そうな顔をして、ハッとして驚いていた。
気がついていなかった!?
子供達の事で忙しかったのは分かるけれど、体調の異変に気がついてよ…。
「薬…飲んでくる…」
キリ兄は、バツの悪そうな顔をして、旧館の自分の部屋へと戻っていった。
ラビは、ため息を付いて、今後の予定を考えた。
キリ兄が発情期になれば、薬を飲んでおとなしくするため、しばらく旧館で事務処理に追われる。
子供達の面倒は見られない。
発情期の余波に当てられて、子供達に影響が出るかも知れないからだ。
と、なれば二、三日は、ユーリちゃんと二人で子供達の事をするとして…。
とりあえずチイさんに報告だけしておくか…。
それと、ユーリちゃんには旧館に近付か無いように、言っておかないと…。
せっかく抑制剤で押さえても、ユーリちゃんの匂いにキリ兄の身体が反応してしまうかもしれない…。
ラビは年少組を起しに向かい、ユーリが出勤してくるのを待っていた。
ユーリが出勤してくると、ユーリは年少組を連れて小川の方に散歩に出かけた。
今後の事を相談するため、子供達とユーリの距離を遠ざけ、キリ兄の所にいくためだ。
旧館に近付くと、旧館の結界が作動していた。
普段は使っていないが、主に秘密の話をしたりするのに外部に音が漏れないようにするのだが…。
ラビは首を傾げて旧館に入り、気がついた。
なんとなくキリ兄の匂いが充満している。
…薬が効いていない?
ラビは不安になりながらキリトの部屋の前まで来ると、それは現実になった。
獣人だから気が付くのかも知れないが、キリ兄の匂いが部屋から漏れだし充満している。
「…キリ兄。薬が効いてないの?」
扉越しにラビがそう聞くと、怠そうな声が聞こえた。
「…ああ」
もう、今さら動けないのだ。
このまま、やり過ごすしか無い…。
…もて余す欲求を発散してしまえば、発情期が収まるのだが…。
「…しばらく、お前も…談話室で…寝ろ…」
「…わかった。食事だけは廊下に置いておくね」
ラビはそう言ってキリトの部屋の前を離れた。
ヤバい!
かなりヤバい状態だ。
今まで忙しさにかまけて、来ていなかった発情期が来て、一気にぶり返しが来て、何とか理性を残しているけど、本当に二、三日で収まるのか…?
キリ兄の身体が持つのか…?
発するオスの匂いが強すぎる…。
結界を張って有るから、旧館から匂いは漏れないだろうけれど…。
…気を付けないと、僕でもクラクラするよ…。
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