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養い子
ダグラス
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キリトはユーリと一緒に、市場の古着屋に来ていた。
いつもはチイさんかラビと一緒に来るのだが、グオルクに来て、市場が有ることを知らないユーリを連れて行ってあげて。と、チイさんとラビに言われて連れてきていた。
ユーリは古着屋で夢中になって、子供達の服を選んでいる。
そんな楽しそうな姿を見て、何故か口元が緩み、選び終わるまで待とうかと思ったが、時間が惜しいので、店主に言って、向かい側の古本屋の方に向かった。
ラビ一人で年少組を見るくらいは出来るが、学校組の子供達が帰ってくると、とっても一人では無理なので、子供達が帰ってくる前には戻らないといけないからだ。
昔から市場に来る、古本屋の中で一番大きい店が、子供用の本をたくさん持って来ていて、古本だけでなく新しい本も有るので、いつもそこで選んでいる。
何か新しい本は有るだろうか…。
キリトは古本屋の店頭で、新しい本を手に取りペラペラと中身を見ていた。
子供達が好きそうな絵本なのかを確認するめだ。
何冊か選んでいると、服を選び終わったユーリがやって来たので、本も好きなのを選ぶように言った。
年少組に絵本を読むのは、ユーリとラビが多いのだから、好きなのを選んでもらった方が良いかと思ったからだ。
ユーリは店の奥に入って行き、楽しそうに本を手に取って見ていた。
しばらくして、キリトがふとユーリの方を見ると、ユーリが知らない人族の男と話をしていた。
ここの店員だろうか?
キリトの中にモヤモヤとした、何かが現れた。
なんだこれは?
そう思っていると、ユーリが楽しそうに、その男と話し出した。
モヤモヤは大きくなるだけで、それが何かは誰も教えてくれない。
キリトはいても立っても居られなくて、選んだ本をもってユーリに近付いて行った。
「誰だ。ソイツは」
そう言った自分の声が、相手を牽制しているような怒気を含んだ声をしていたことに驚いた。
相手の男は驚いて苦笑いし、一歩下がる。
「…ジーンの友人よ」
ユーリにそう言われたが、キリトは警戒を解けなかった。
「アル。何やってる」
奥から体格の良い、熊族の男が姿を現し、キリトを見てユーリを見て、小柄な男を見るとため息を付いた。
「キリトさん、すみません。何かアルが…」
「違うの!」
ユーリが慌てて口を挟む。
「久しぶりに会って、人族の本を頼めば入手出来るか話をしていただけで」
「…いいえ。一緒に来ているお客さんは、番の可能性が有るので、話しかけないよう言って言っていたのですが…」
「えっ!?」
ユーリが頬を染めて狼狽えている。
「ユーリは番ではないぞ」
キリトがそう言うと、熊族のダグラスと細身の男は驚いて声を上げる。
「「えっ!?」」
そして二人は顔を見合せボソボソと何か話している。
「でもなあ…キリトさんの…」
「…ですよね…」
何を話しているのか分からないが、そろそろ次の店を見に行きたい。
「ユーリ。本は決まったか」
キリトがそう言うと、ユーリは頬を染めて慌てて手にした本をキリトに差し出す。
「おい、ダグラス。会計」
キリトはユーリの差し出した本と、自分のもっていた本をダグラスの方に差し出すと、ダグラスは苦笑いして、キリトと一緒に奥へと入っていった。
ダグラスは会計をしながらキリトに言ってくる。
「安心してください。あの子、アルは、俺のですから」
「…。」
キリトはそう言われて、少し安心したのと、モヤモヤが少し小さくなった事に気が付いた。
「…そんなあからさまに嫉妬しなくても、彼女はキリトさんしか見てない気がしますけどね…」
…嫉妬…。
そうか、このモヤモヤは、ユーリと知らない男が楽しそうに話をしていて、俺はいい気分がしなかったのか…。
ダグラスに、ほんの少しの間だけで、そんな事が分かるほど、俺の態度は、あからさまだったのだろうか。
「誰にも取られたくないなら、さっさと番にしてしまった方が良いですよ。特にグオルクでは女性体、ましてや人族となれば、狙われやすくなりますからね」
ダグラスにそう言われて、ハッと気が付く。
そうだ。
この市場に連れてきて、回りからの視線が増えたことを。
ユーリは気が付いていないかもしれないが、いろんな地域から集まるこの市場には、ユーリがグオルクの役所で働く者だと知らない者が多い…。
ユーリが狙われたら…。
キリトはぶるりと震えた。
かといって、子供達の物ばかり買ったから、もう少し市場を見せてやりたい。
「…どうしたら良い…」
キリトは無意識に口に出していた。
「…手でも繋いで歩けば、番だと思われて、ある程度は諦めてくれますよ」
ダグラスはそう言って微笑む。
楽しんでいるな…。
キリトは、ため息をついてお金を払うと、買った本を持ってユーリのもとへ向かった。
いつもはチイさんかラビと一緒に来るのだが、グオルクに来て、市場が有ることを知らないユーリを連れて行ってあげて。と、チイさんとラビに言われて連れてきていた。
ユーリは古着屋で夢中になって、子供達の服を選んでいる。
そんな楽しそうな姿を見て、何故か口元が緩み、選び終わるまで待とうかと思ったが、時間が惜しいので、店主に言って、向かい側の古本屋の方に向かった。
ラビ一人で年少組を見るくらいは出来るが、学校組の子供達が帰ってくると、とっても一人では無理なので、子供達が帰ってくる前には戻らないといけないからだ。
昔から市場に来る、古本屋の中で一番大きい店が、子供用の本をたくさん持って来ていて、古本だけでなく新しい本も有るので、いつもそこで選んでいる。
何か新しい本は有るだろうか…。
キリトは古本屋の店頭で、新しい本を手に取りペラペラと中身を見ていた。
子供達が好きそうな絵本なのかを確認するめだ。
何冊か選んでいると、服を選び終わったユーリがやって来たので、本も好きなのを選ぶように言った。
年少組に絵本を読むのは、ユーリとラビが多いのだから、好きなのを選んでもらった方が良いかと思ったからだ。
ユーリは店の奥に入って行き、楽しそうに本を手に取って見ていた。
しばらくして、キリトがふとユーリの方を見ると、ユーリが知らない人族の男と話をしていた。
ここの店員だろうか?
キリトの中にモヤモヤとした、何かが現れた。
なんだこれは?
そう思っていると、ユーリが楽しそうに、その男と話し出した。
モヤモヤは大きくなるだけで、それが何かは誰も教えてくれない。
キリトはいても立っても居られなくて、選んだ本をもってユーリに近付いて行った。
「誰だ。ソイツは」
そう言った自分の声が、相手を牽制しているような怒気を含んだ声をしていたことに驚いた。
相手の男は驚いて苦笑いし、一歩下がる。
「…ジーンの友人よ」
ユーリにそう言われたが、キリトは警戒を解けなかった。
「アル。何やってる」
奥から体格の良い、熊族の男が姿を現し、キリトを見てユーリを見て、小柄な男を見るとため息を付いた。
「キリトさん、すみません。何かアルが…」
「違うの!」
ユーリが慌てて口を挟む。
「久しぶりに会って、人族の本を頼めば入手出来るか話をしていただけで」
「…いいえ。一緒に来ているお客さんは、番の可能性が有るので、話しかけないよう言って言っていたのですが…」
「えっ!?」
ユーリが頬を染めて狼狽えている。
「ユーリは番ではないぞ」
キリトがそう言うと、熊族のダグラスと細身の男は驚いて声を上げる。
「「えっ!?」」
そして二人は顔を見合せボソボソと何か話している。
「でもなあ…キリトさんの…」
「…ですよね…」
何を話しているのか分からないが、そろそろ次の店を見に行きたい。
「ユーリ。本は決まったか」
キリトがそう言うと、ユーリは頬を染めて慌てて手にした本をキリトに差し出す。
「おい、ダグラス。会計」
キリトはユーリの差し出した本と、自分のもっていた本をダグラスの方に差し出すと、ダグラスは苦笑いして、キリトと一緒に奥へと入っていった。
ダグラスは会計をしながらキリトに言ってくる。
「安心してください。あの子、アルは、俺のですから」
「…。」
キリトはそう言われて、少し安心したのと、モヤモヤが少し小さくなった事に気が付いた。
「…そんなあからさまに嫉妬しなくても、彼女はキリトさんしか見てない気がしますけどね…」
…嫉妬…。
そうか、このモヤモヤは、ユーリと知らない男が楽しそうに話をしていて、俺はいい気分がしなかったのか…。
ダグラスに、ほんの少しの間だけで、そんな事が分かるほど、俺の態度は、あからさまだったのだろうか。
「誰にも取られたくないなら、さっさと番にしてしまった方が良いですよ。特にグオルクでは女性体、ましてや人族となれば、狙われやすくなりますからね」
ダグラスにそう言われて、ハッと気が付く。
そうだ。
この市場に連れてきて、回りからの視線が増えたことを。
ユーリは気が付いていないかもしれないが、いろんな地域から集まるこの市場には、ユーリがグオルクの役所で働く者だと知らない者が多い…。
ユーリが狙われたら…。
キリトはぶるりと震えた。
かといって、子供達の物ばかり買ったから、もう少し市場を見せてやりたい。
「…どうしたら良い…」
キリトは無意識に口に出していた。
「…手でも繋いで歩けば、番だと思われて、ある程度は諦めてくれますよ」
ダグラスはそう言って微笑む。
楽しんでいるな…。
キリトは、ため息をついてお金を払うと、買った本を持ってユーリのもとへ向かった。
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