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保護施設
クロ
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ユーリとチイとラビが小声で話していると、お昼寝をしていた子供達がモゾモゾと動きはじめた。
ゆっくりと身体を起こしてボーッとこちらを見ている。
一人、目を覚ましたみたいだ。
「おっと、おやつの準備をしないと…」
ラビはそう言って、慌てて談話室を出ていった。
チイとユーリは目を覚ました子供の方に行き、座って視線を低くして、まだ眠る子供達を眺めた。
「かわいい…」
ユーリは思わず声に出していた。
ピクピクと動く耳と、ゆらゆらと揺れる尻尾…。
毛布を半分蹴飛ばして、ぼんやりと目を開けて、寝ぼけている姿が、また可愛い…。
その中に一番小さい、まだ産まれて一年にもならないような子供がいた。
黒い三角の耳をピクピクさせて、目覚めたの、辺りをキョロキョロと見回している。
「チイさん。抱っこしても大丈夫?」
ユーリは三つ子達をあやして、抱っこしていた事を思い出し、抱き上げたくなった。
「…そうね。大丈夫だと思うけど、泣きそうになったら代わるわ」
チイの許可をえて、ユーリは子供に近付き、そっと抱き上げると、子供と目が合いユーリは笑いかけた。
「おはよう」
子供は硬直し、じっとユーリを見ている。
知らない人を見て、警戒心を抱いているのだろう。
ユーリはゆっくりと揺らしながら、チイの方を向いた。
「この子の名前は何と言うの?」
「…クロよ」
「クロ。こんにちわ。これから一緒に遊ぼうね」
ユーリはピクピクと動く、黒髪から出ている黒耳を見ながら、思わずニヤけてしまった。
可愛い!可愛い!
たまらないくらい、可愛いよ!
「チイさん。耳に触っても大丈夫かな…」
ユーリは興奮を押さえながら聞く。
「う~ん。警戒が解けてからの方が良いわ」
「はい。」
我慢。我慢。
ユーリはニコニコとクロをあやしていると、クロがそっと小さい手を伸ばしてきた。
「うん?どうしたの」
クロの小さい手が掴んだのは、ユーリの肩から前に流れ出ていた長い黒色の髪の毛。
「フフ。クロと同じ色だよ」
ユーリがそう言うと、クロが微かに笑った気がした。
クロの緊張が解けたのか、ずっしりとユーリの腕の中の重みが増す。
ユーリが嬉しそうにクロを抱えていると、いつの間にか他の子供達も目を覚ましていて、ユーリの回りに座っていた。
まだ少し寝ぼけて、目を擦りながら、クロをあやすユーリの事を見ている。
「こんにちわ。ユーリです。これから一緒に遊んだり、お勉強したりしようね」
ユーリが子供達に挨拶すると、子供達は順番にユーリの頭を撫でて、ラビが準備したおやつの有るテーブルへとかけて行った。
「…。」
今のはどう言うこと?
ユーリがポカンとしているとチイさんが微笑む。
「よろしく。って、言ってたのよ。まだ少し警戒しているけど、第一段階は突破ね」
「…おやつの方が大事ですもんね…」
子供達はイスに座り、ラビに準備されたおやつを黙々と食べている。
そしてチイさんに、ラビと一緒に子供達の事をお願いされた。
年少組は、話をすることが苦手な子が多いので、あんな風に、突然行動に出るけれど、たくさん話をしてあげて、話せるようになってくれると嬉しいと、チイさんは言う。
そうだね。
たくさん物語とか読み聞かせをして、少しづつ、話してくれると嬉しいかも。
ユーリは子供のころ、良く読み聞かせをしてくれたキリトの事を思う。
今度は私が子供達に、絵本の楽しさを教えてあげれると良いな…。
それからチイさんに連れられて調理場に向かった。
調理場には茶色の髪の犬族のユバがいて、夕食の下準備をしていた。
ユバは昼前から来て、年少組の昼ご飯を作り、買い出し、おやつ、夕食の準備をしたら、翌日の朝食を温めれば良いだの物を作って帰るのだと言う。
それを一人で段取りしているのだから凄い。
時々ラビも手伝ったりするが、基本ユバだけだそうだ。
子供達十五人分と、古い建物に住んでいるキリトとラビの分、そしてユバの分と、そこにユーリの分が加わる。
昼と夕食が付くのはユーリにとってもありがたい。
飲み物とか軽食は常に食堂の方に準備してあるので、温める魔道具とか、冷やす魔道具とかの説明を聞き、かなり最新の魔道具が揃っていることに驚いた。
それを感じたのか、チイさんが教えてくれた。
「便利な魔道具はキリトが買ってきているの。貯まっている給料の使い道がわからない。と、言ってね」
「…。」
そう言えばキリトはカザナにいる時も、休日に、もらった給料で、私とジーンの好きなお菓子を買って来たりしていた…。
その辺は変わらないのね…。
ユーリは少しホッとして微笑んだ。
ゆっくりと身体を起こしてボーッとこちらを見ている。
一人、目を覚ましたみたいだ。
「おっと、おやつの準備をしないと…」
ラビはそう言って、慌てて談話室を出ていった。
チイとユーリは目を覚ました子供の方に行き、座って視線を低くして、まだ眠る子供達を眺めた。
「かわいい…」
ユーリは思わず声に出していた。
ピクピクと動く耳と、ゆらゆらと揺れる尻尾…。
毛布を半分蹴飛ばして、ぼんやりと目を開けて、寝ぼけている姿が、また可愛い…。
その中に一番小さい、まだ産まれて一年にもならないような子供がいた。
黒い三角の耳をピクピクさせて、目覚めたの、辺りをキョロキョロと見回している。
「チイさん。抱っこしても大丈夫?」
ユーリは三つ子達をあやして、抱っこしていた事を思い出し、抱き上げたくなった。
「…そうね。大丈夫だと思うけど、泣きそうになったら代わるわ」
チイの許可をえて、ユーリは子供に近付き、そっと抱き上げると、子供と目が合いユーリは笑いかけた。
「おはよう」
子供は硬直し、じっとユーリを見ている。
知らない人を見て、警戒心を抱いているのだろう。
ユーリはゆっくりと揺らしながら、チイの方を向いた。
「この子の名前は何と言うの?」
「…クロよ」
「クロ。こんにちわ。これから一緒に遊ぼうね」
ユーリはピクピクと動く、黒髪から出ている黒耳を見ながら、思わずニヤけてしまった。
可愛い!可愛い!
たまらないくらい、可愛いよ!
「チイさん。耳に触っても大丈夫かな…」
ユーリは興奮を押さえながら聞く。
「う~ん。警戒が解けてからの方が良いわ」
「はい。」
我慢。我慢。
ユーリはニコニコとクロをあやしていると、クロがそっと小さい手を伸ばしてきた。
「うん?どうしたの」
クロの小さい手が掴んだのは、ユーリの肩から前に流れ出ていた長い黒色の髪の毛。
「フフ。クロと同じ色だよ」
ユーリがそう言うと、クロが微かに笑った気がした。
クロの緊張が解けたのか、ずっしりとユーリの腕の中の重みが増す。
ユーリが嬉しそうにクロを抱えていると、いつの間にか他の子供達も目を覚ましていて、ユーリの回りに座っていた。
まだ少し寝ぼけて、目を擦りながら、クロをあやすユーリの事を見ている。
「こんにちわ。ユーリです。これから一緒に遊んだり、お勉強したりしようね」
ユーリが子供達に挨拶すると、子供達は順番にユーリの頭を撫でて、ラビが準備したおやつの有るテーブルへとかけて行った。
「…。」
今のはどう言うこと?
ユーリがポカンとしているとチイさんが微笑む。
「よろしく。って、言ってたのよ。まだ少し警戒しているけど、第一段階は突破ね」
「…おやつの方が大事ですもんね…」
子供達はイスに座り、ラビに準備されたおやつを黙々と食べている。
そしてチイさんに、ラビと一緒に子供達の事をお願いされた。
年少組は、話をすることが苦手な子が多いので、あんな風に、突然行動に出るけれど、たくさん話をしてあげて、話せるようになってくれると嬉しいと、チイさんは言う。
そうだね。
たくさん物語とか読み聞かせをして、少しづつ、話してくれると嬉しいかも。
ユーリは子供のころ、良く読み聞かせをしてくれたキリトの事を思う。
今度は私が子供達に、絵本の楽しさを教えてあげれると良いな…。
それからチイさんに連れられて調理場に向かった。
調理場には茶色の髪の犬族のユバがいて、夕食の下準備をしていた。
ユバは昼前から来て、年少組の昼ご飯を作り、買い出し、おやつ、夕食の準備をしたら、翌日の朝食を温めれば良いだの物を作って帰るのだと言う。
それを一人で段取りしているのだから凄い。
時々ラビも手伝ったりするが、基本ユバだけだそうだ。
子供達十五人分と、古い建物に住んでいるキリトとラビの分、そしてユバの分と、そこにユーリの分が加わる。
昼と夕食が付くのはユーリにとってもありがたい。
飲み物とか軽食は常に食堂の方に準備してあるので、温める魔道具とか、冷やす魔道具とかの説明を聞き、かなり最新の魔道具が揃っていることに驚いた。
それを感じたのか、チイさんが教えてくれた。
「便利な魔道具はキリトが買ってきているの。貯まっている給料の使い道がわからない。と、言ってね」
「…。」
そう言えばキリトはカザナにいる時も、休日に、もらった給料で、私とジーンの好きなお菓子を買って来たりしていた…。
その辺は変わらないのね…。
ユーリは少しホッとして微笑んだ。
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