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東部連合編
隣接魔法
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「隣接魔法という言葉を知ってるかな?」
「いいえ、知りません」
「ある魔法と類似、近所の魔法の事だ。私ので言うなら、強風魔法と旋回する光操魔法は、どちらも風を利用している」頭を使うまでもなく、身体がついさっきの苦戦を覚えていた。
「はい。それがどうしたんですか?」
「隣接魔法は、効果が似ている魔法というだけで完結させてしまう事も多い。ただ、それは半面でしかない」志筑は一度、言葉を止めた。ここからが、重要だという合図だ。「効果というのは、いわば結果、出力だ。そこに至るまでの、過程や入り口は別にある。そして、出力が似れば、入り口が似るという事になる」
「それは、分かります。似るも何も、同じ人が、同じ杖で…」
「重要なのは、その逆も言えるって事なんだ。同じ人が入力すれば、出力も似通ってくる。つまり、一つ見れたら、他のは推測できるって訳だ」
「その人の個性が魔法にも出るんですか?」私なりに咀嚼してみた。
「そう。脳の使い方が、どうしても偏るからね。もちろん、謁見組にも当てはまる」志筑がハッカキャンディ席を指して言った。続きを聞くまで、誰の事を言ってるか、わからなかった。
「痺れ魔法は手足に使い、日射魔法は、目や傷口に使う」
「太陽で痺れさせるって事ですか」志筑の返答を待つまでもなく、井上独特の時候の挨拶の意味を理解した。
「そう。彼も私と一緒で、自然を利用するから、室内は苦手なんだ」志筑は苦笑する。「じゃあ、ここも…」
「まぁね。それでも、ゲルや地下街よりはマシさ。あれ以上無風な所を知らないから」考える事が多過ぎて、言葉を失った。不利な環境でさえ、十分過ぎる力を出している。今日でこれなら、野外に出た時、どれだけ強いというのか。西への旅は、ずっと自然の中を進む事になる。私だけでなく、志筑や井上だって今回の使命に不可欠な気がしてきた。そして、旅で彼らの実力を見たいと思う自分がいた。
「君の方が場所を選ばず、安定して力を出せるのかもしれない」志筑が言った。
「そういえば聞こえは良いですが、どこでも半人前なだけです」
「そんなことないさ。もっと自信を持っていい。謙虚は向上心に繋がれば良いが、弱気とも裏表だから」
「はい」
「一つを使えば、周りの魔法にも手がのびる。得意な魔法は固まるんだ。受け手からすれば、特に防衛魔法の使い手であれば、利用しない手はないね」志筑はもう一度、繰り返した。
戦いの進展は、食事中か否かに関わらず、逐一報告される。
新聞からの抜粋だったり、将軍が自前で仕入れた情報だったりした。具体性を欠き、ためにならないものが多いけれど、中には、実践的な記事も混じっていた。
「敵に利用されない為に、巨大温室は、芽満別軍によりすでに破壊された」
「湖庵軍の一部が芽満別州東部に合流した」
一報が入る度に、ハッカキャンディを超えて、決闘場に地声で連絡が飛んだ。
順番の実戦練習は継続だ。練習は嫌な報せから僅かばかり気分転換できる機会だから、自分の番が終わった私も、ハッカキャンディの背もたれから身を乗り出して見学した。
勉強という名目で、動きあるものを見てる方が時間を潰す事ができる。潰した先の出口は度外視で、とりあえず、中央戦線を忘れられれば良かった。
白亜に差す光は薄くなり、しまいには影を落とした。夜まで会議堂にいるのはつらくて、夕食の後、そうそうに部屋に帰った。浄御原は、長時間控え室を離れられない体になっており、一緒に席を立った。井上も音を上げて、後ろをついてくる。それ以外は円卓に残るようで、彼彼女らの精神力には、脱帽するしかなかった。
個部屋でも、外との繋がりが欲しくて、ドアノブを回し、風と雑音が入るようにした。壁を背もたれにしながら、のっぽな椅子に腰掛ける。練習で多くを学んだのに、思い出されるのは将軍の口から溢れる暗い報告ばかり。私の見てきた風景が壊され、会ってきた人が戦いの地に飛び込んでいる。
一層のこと、特別部隊に協力する条件に、身内を彩粕に避難させるのを突きつけようと思い立った。
お母さんから未だ連絡がなく、安斉先生と接触できたかわからないが、こちらに呼び出せれば、余計な心配をしなくて済む。アーヤカスが、ミズミア並みに新しいお客様を入れることに敏感だとしても、謁見組の関係者なら話は別だ。
「いいえ、知りません」
「ある魔法と類似、近所の魔法の事だ。私ので言うなら、強風魔法と旋回する光操魔法は、どちらも風を利用している」頭を使うまでもなく、身体がついさっきの苦戦を覚えていた。
「はい。それがどうしたんですか?」
「隣接魔法は、効果が似ている魔法というだけで完結させてしまう事も多い。ただ、それは半面でしかない」志筑は一度、言葉を止めた。ここからが、重要だという合図だ。「効果というのは、いわば結果、出力だ。そこに至るまでの、過程や入り口は別にある。そして、出力が似れば、入り口が似るという事になる」
「それは、分かります。似るも何も、同じ人が、同じ杖で…」
「重要なのは、その逆も言えるって事なんだ。同じ人が入力すれば、出力も似通ってくる。つまり、一つ見れたら、他のは推測できるって訳だ」
「その人の個性が魔法にも出るんですか?」私なりに咀嚼してみた。
「そう。脳の使い方が、どうしても偏るからね。もちろん、謁見組にも当てはまる」志筑がハッカキャンディ席を指して言った。続きを聞くまで、誰の事を言ってるか、わからなかった。
「痺れ魔法は手足に使い、日射魔法は、目や傷口に使う」
「太陽で痺れさせるって事ですか」志筑の返答を待つまでもなく、井上独特の時候の挨拶の意味を理解した。
「そう。彼も私と一緒で、自然を利用するから、室内は苦手なんだ」志筑は苦笑する。「じゃあ、ここも…」
「まぁね。それでも、ゲルや地下街よりはマシさ。あれ以上無風な所を知らないから」考える事が多過ぎて、言葉を失った。不利な環境でさえ、十分過ぎる力を出している。今日でこれなら、野外に出た時、どれだけ強いというのか。西への旅は、ずっと自然の中を進む事になる。私だけでなく、志筑や井上だって今回の使命に不可欠な気がしてきた。そして、旅で彼らの実力を見たいと思う自分がいた。
「君の方が場所を選ばず、安定して力を出せるのかもしれない」志筑が言った。
「そういえば聞こえは良いですが、どこでも半人前なだけです」
「そんなことないさ。もっと自信を持っていい。謙虚は向上心に繋がれば良いが、弱気とも裏表だから」
「はい」
「一つを使えば、周りの魔法にも手がのびる。得意な魔法は固まるんだ。受け手からすれば、特に防衛魔法の使い手であれば、利用しない手はないね」志筑はもう一度、繰り返した。
戦いの進展は、食事中か否かに関わらず、逐一報告される。
新聞からの抜粋だったり、将軍が自前で仕入れた情報だったりした。具体性を欠き、ためにならないものが多いけれど、中には、実践的な記事も混じっていた。
「敵に利用されない為に、巨大温室は、芽満別軍によりすでに破壊された」
「湖庵軍の一部が芽満別州東部に合流した」
一報が入る度に、ハッカキャンディを超えて、決闘場に地声で連絡が飛んだ。
順番の実戦練習は継続だ。練習は嫌な報せから僅かばかり気分転換できる機会だから、自分の番が終わった私も、ハッカキャンディの背もたれから身を乗り出して見学した。
勉強という名目で、動きあるものを見てる方が時間を潰す事ができる。潰した先の出口は度外視で、とりあえず、中央戦線を忘れられれば良かった。
白亜に差す光は薄くなり、しまいには影を落とした。夜まで会議堂にいるのはつらくて、夕食の後、そうそうに部屋に帰った。浄御原は、長時間控え室を離れられない体になっており、一緒に席を立った。井上も音を上げて、後ろをついてくる。それ以外は円卓に残るようで、彼彼女らの精神力には、脱帽するしかなかった。
個部屋でも、外との繋がりが欲しくて、ドアノブを回し、風と雑音が入るようにした。壁を背もたれにしながら、のっぽな椅子に腰掛ける。練習で多くを学んだのに、思い出されるのは将軍の口から溢れる暗い報告ばかり。私の見てきた風景が壊され、会ってきた人が戦いの地に飛び込んでいる。
一層のこと、特別部隊に協力する条件に、身内を彩粕に避難させるのを突きつけようと思い立った。
お母さんから未だ連絡がなく、安斉先生と接触できたかわからないが、こちらに呼び出せれば、余計な心配をしなくて済む。アーヤカスが、ミズミア並みに新しいお客様を入れることに敏感だとしても、謁見組の関係者なら話は別だ。
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