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ふたりの放課後

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 三限終わりの電車に飛び乗り、前の列車に進んだ。帰りは、どこかの遊園地みたいに高い所から落ちる心配もないし、車内も空いていて快適だ。

 ブランコ斜め前の電車停を素通りし、石畳からまだ見ぬ景色を楽しんだ。

 ゆとりができたらできたで、新入生なのに早く帰って良いものか、と不安になる。後れを取り戻すためには、もっと勉強した方が良いのは確かだった。
 自分には行くべきところがあると信じられるからこそ、前を向けた。

 電車が病院に近づくにつれ、ミズミアの風景に見惚れるフリをしながらも、頭の中はハル君で一杯になった。

 彼も、私を待ちわびてくれてたのか、一階の大広間のソファに座っていた。狭い部屋に閉じ込められるのは、うんざりなのかもしれない。
「素人界に帰ったら、動物園廃止に署名しようと思う。こんなの自然の摂理に反するね」と彼は笑った。

 持参した、サンドウィッチとワッフルは、彼の反応が良い。ハル君とランチを分け合いっこするのは、私のちょっとした夢でもあり、嬉しかった。

 大石の授業で友達に褒められた事や志筑の愚痴を話したり、ハル君がこちらの世界のクイズを出してくれたりで、あっという間に時間が過ぎる。彼は概説本の文字だけの頁にも挑戦してるみたいで、マホージュの知識では、私の先を行ってるのは明らかだった。

「フラワープを使わないで本拠地間を移動できるのは、どことどこ?」といったハル君の質問に私は答えられないけれど、逆に「東地区で一番優勝回数の多いチームは?」という私の質問には「ボウシャウ・レッド・ワンズ」と一秒で答えを出された。
 
 房沙総州は湖庵のお隣で、隣人の左内の出身地でもある。知らなきゃ駄目、とハル君にとがめられた。

「玲禾ちゃん」聞き覚えのある声に振り返ると、紗江先生の姿があった。
「お久しぶりです。また来ちゃいました」
「本当よ、何お友達?」
「まぁ、そうです。こちらは、紗江先生。私がミズミアに舞い戻った時に担当してくれたの」紗江さんがどこまで知ってるかわからないから、即座に話しを切り替えた。
「よろしくね」
「はい」
「ミズミアはどう?」私の方に振り向いた。
「ぼちぼちです。今日から学校も始まって」
「ぼちぼち!そっか、良かった、良かった。まぁ、焦らず頑張るのよ。邪魔しちゃったわね。私もお昼にしないと」紗江先生との再会に心が暖かくなった。そして、魔法界の人と会って懐かしい気持ちを覚えるなんて、自分でも信じられなかった。
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