59 / 242
ふたりの放課後
しおりを挟む
三限終わりの電車に飛び乗り、前の列車に進んだ。帰りは、どこかの遊園地みたいに高い所から落ちる心配もないし、車内も空いていて快適だ。
ブランコ斜め前の電車停を素通りし、石畳からまだ見ぬ景色を楽しんだ。
ゆとりができたらできたで、新入生なのに早く帰って良いものか、と不安になる。後れを取り戻すためには、もっと勉強した方が良いのは確かだった。
自分には行くべきところがあると信じられるからこそ、前を向けた。
電車が病院に近づくにつれ、ミズミアの風景に見惚れるフリをしながらも、頭の中はハル君で一杯になった。
彼も、私を待ちわびてくれてたのか、一階の大広間のソファに座っていた。狭い部屋に閉じ込められるのは、うんざりなのかもしれない。
「素人界に帰ったら、動物園廃止に署名しようと思う。こんなの自然の摂理に反するね」と彼は笑った。
持参した、サンドウィッチとワッフルは、彼の反応が良い。ハル君とランチを分け合いっこするのは、私のちょっとした夢でもあり、嬉しかった。
大石の授業で友達に褒められた事や志筑の愚痴を話したり、ハル君がこちらの世界のクイズを出してくれたりで、あっという間に時間が過ぎる。彼は概説本の文字だけの頁にも挑戦してるみたいで、マホージュの知識では、私の先を行ってるのは明らかだった。
「フラワープを使わないで本拠地間を移動できるのは、どことどこ?」といったハル君の質問に私は答えられないけれど、逆に「東地区で一番優勝回数の多いチームは?」という私の質問には「ボウシャウ・レッド・ワンズ」と一秒で答えを出された。
房沙総州は湖庵のお隣で、隣人の左内の出身地でもある。知らなきゃ駄目、とハル君にとがめられた。
「玲禾ちゃん」聞き覚えのある声に振り返ると、紗江先生の姿があった。
「お久しぶりです。また来ちゃいました」
「本当よ、何お友達?」
「まぁ、そうです。こちらは、紗江先生。私がミズミアに舞い戻った時に担当してくれたの」紗江さんがどこまで知ってるかわからないから、即座に話しを切り替えた。
「よろしくね」
「はい」
「ミズミアはどう?」私の方に振り向いた。
「ぼちぼちです。今日から学校も始まって」
「ぼちぼち!そっか、良かった、良かった。まぁ、焦らず頑張るのよ。邪魔しちゃったわね。私もお昼にしないと」紗江先生との再会に心が暖かくなった。そして、魔法界の人と会って懐かしい気持ちを覚えるなんて、自分でも信じられなかった。
ブランコ斜め前の電車停を素通りし、石畳からまだ見ぬ景色を楽しんだ。
ゆとりができたらできたで、新入生なのに早く帰って良いものか、と不安になる。後れを取り戻すためには、もっと勉強した方が良いのは確かだった。
自分には行くべきところがあると信じられるからこそ、前を向けた。
電車が病院に近づくにつれ、ミズミアの風景に見惚れるフリをしながらも、頭の中はハル君で一杯になった。
彼も、私を待ちわびてくれてたのか、一階の大広間のソファに座っていた。狭い部屋に閉じ込められるのは、うんざりなのかもしれない。
「素人界に帰ったら、動物園廃止に署名しようと思う。こんなの自然の摂理に反するね」と彼は笑った。
持参した、サンドウィッチとワッフルは、彼の反応が良い。ハル君とランチを分け合いっこするのは、私のちょっとした夢でもあり、嬉しかった。
大石の授業で友達に褒められた事や志筑の愚痴を話したり、ハル君がこちらの世界のクイズを出してくれたりで、あっという間に時間が過ぎる。彼は概説本の文字だけの頁にも挑戦してるみたいで、マホージュの知識では、私の先を行ってるのは明らかだった。
「フラワープを使わないで本拠地間を移動できるのは、どことどこ?」といったハル君の質問に私は答えられないけれど、逆に「東地区で一番優勝回数の多いチームは?」という私の質問には「ボウシャウ・レッド・ワンズ」と一秒で答えを出された。
房沙総州は湖庵のお隣で、隣人の左内の出身地でもある。知らなきゃ駄目、とハル君にとがめられた。
「玲禾ちゃん」聞き覚えのある声に振り返ると、紗江先生の姿があった。
「お久しぶりです。また来ちゃいました」
「本当よ、何お友達?」
「まぁ、そうです。こちらは、紗江先生。私がミズミアに舞い戻った時に担当してくれたの」紗江さんがどこまで知ってるかわからないから、即座に話しを切り替えた。
「よろしくね」
「はい」
「ミズミアはどう?」私の方に振り向いた。
「ぼちぼちです。今日から学校も始まって」
「ぼちぼち!そっか、良かった、良かった。まぁ、焦らず頑張るのよ。邪魔しちゃったわね。私もお昼にしないと」紗江先生との再会に心が暖かくなった。そして、魔法界の人と会って懐かしい気持ちを覚えるなんて、自分でも信じられなかった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
望月かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる