12 / 23
第12話:Relationship
しおりを挟む
結局俺はその夜、三津屋アキラの家に泊まることとなった。
理由は単純すぎて涙が出るが、アキラ宅で三回目に至った際、俺が失神してしまったせいだ。
「マジでエロくてかわいかったよ」
翌朝、聖なる性獣アキラさんはそう言ったが、俺の邪推か夢かもしれないけど、寝顔を見られていたような感覚があった。
でも……。
どうなんだろう、俺はアキラの何になったんだろう?
セフレ兼バンドメンバー?
だけどそれはタクトに否定されたはずだ。
あと昨夜の『嬉しい』云々の発言も気になる……。
一回り大きいアキラのシャツを借りてアキラの手料理の朝食を食うことになって、ってこの一文だけで高一の俺が聞いたら涙による脱水症状で死ぬと思うけど、それはともかく、ベーコンエッグと分厚いトースト二枚、色味のいいブロッコリーとスライスされたトマト、サニーレタスがワンプレートに載った、『え、これなんですか? どこかのホテルのモーニングですか?』みたいな食事を出された俺は正直驚いていた。
「あ、なんか嫌いなもんあった?」
「え、え、そんなことは!! アキラ、料理めちゃ上手いんだね!! 正直意外!!」
「その程度で上手いと言われましても~。まあ食えよ」
「は、ははぁ! いただかせていただきます!」
両手の手のひらをバチンと音が鳴るほど合わせて食べ始めたアキラは俺の前に座り、何やら俺ががっついてトーストに食いついてるのをしたり顔でガン見してくる。
「な、何?」
「いや、他人に自分の料理食ってもらうの久々でさ、おまえ美味そうに食うから嬉しくて」
出た、『嬉しくて』。
俺の邪推は、昨日の夜からずっと、快感で頭が半分以上飛んでる状態でも発展していっていた。
極々短絡的な推理。三津屋アキラは今まできちんと愛情を確認できる性行為をしたことがなかった、とか。あるいはあえてそれを理解できなかったけど、俺の反応っていうかストーカーぶりが防御壁を瓦解させた、とか、まあ、色々。
「そういや結斗、単語決めた?」
「単語?」
「おーい忘れんなよ。バンド名、三人で一つずつ英単語持ち寄って合体させようって昨日言ったろ?」
「……今言われてなんとなく思い出したけど、そのあと数時間交尾した挙げ句失神した人間にその記憶を想起せよというのは酷ではないでしょうか」
「じゃあ今考えろよ。俺は『REAL』、これを入れたい。形容詞だから、いちばん最初かな?」
ふむ、と、俺は最後に取っておいたブロッコリーを口に含み考えてみた。
タクトが持ってくる単語にもよるけど……
「俺は何か、武器系入れたい」
「武器系?」
「うん、例えば、タイムボムとか、レーザーとか、リボルバーとか」
「へぇ、結構過激なんだな、ユウちゃんてば」
「過激……かもしれない……」
「へ? ジョークで言ったんだけど」
「い、いや、三津屋アキラのストーカーとしては相当過激派だという自覚はあるし——」
「結斗」
アキラは熱のこもった声で言うと、立ち上がって向かいに座る俺の顎をくいっと上げて力強く口づけ、なかなか解放してくれなかった。
「んーんーんんー!!」
流石に直前に食ったものが逆流しそうになったので抵抗の声をあげると、アキラはどこか名残惜しげに俺の顎から手を離した。
「あのさぁ、すっげえ恥ずかしい話していい?」
再び着座したアキラがちょっと遠くを見つめるような表情で言う。
「え、何? 笑い飛ばしていい系?」
「どうだろうな」
「それって俺なんかが聞いていいの?」
「他の誰にも言ってない。おまえになら話せるかなって、昨日から思ってた」
え、ちょ、なんか圧が、圧が来るんだけど。
三津屋アキラが他の誰にも言っていないことを、この俺に?
「俺、交際経験ねえんだわ」
————?
——えっ
——どぇぇええええええ?!?!?!?!
処理速度が! 脳の神経が! 思考回路にふ、不具合が! 深刻なエラーが発生しましたあああああああああああああああああああ!
「俺は好きだと思った奴としてきたけど、なんか求められるものが違うんだよな。上手く言えねえんだけど。で、ああ結局俺はこいつのこと本当に好きじゃなかったんだなって後から悟るタイプでさ。でもおまえは違う。と思う。俺もさ、なんかすげえ恥ずかしかったよ、おまえみたいに、ずっと俺みたいな奴を何年も想ってくれてる人がいるなんて。だからすげえ嬉しかったし、しかもおまえめっちゃかわいいし、感度良好だし、もっと調教したいし、おっと、セックスの話になってる。だから、その、タクトとのバンド活動と同時進行で、そのー」
少し頬が桜色になっている三津屋アキラは、この時ばかりは「聖なる性獣」でも「スーパードラマー」でもなく、ひとりの男・三津屋アキラだった。
「なんつーか、あー、俺の恋人になってください、須賀結斗くん」
俺は死んだ。本気でそう思った。
理由は単純すぎて涙が出るが、アキラ宅で三回目に至った際、俺が失神してしまったせいだ。
「マジでエロくてかわいかったよ」
翌朝、聖なる性獣アキラさんはそう言ったが、俺の邪推か夢かもしれないけど、寝顔を見られていたような感覚があった。
でも……。
どうなんだろう、俺はアキラの何になったんだろう?
セフレ兼バンドメンバー?
だけどそれはタクトに否定されたはずだ。
あと昨夜の『嬉しい』云々の発言も気になる……。
一回り大きいアキラのシャツを借りてアキラの手料理の朝食を食うことになって、ってこの一文だけで高一の俺が聞いたら涙による脱水症状で死ぬと思うけど、それはともかく、ベーコンエッグと分厚いトースト二枚、色味のいいブロッコリーとスライスされたトマト、サニーレタスがワンプレートに載った、『え、これなんですか? どこかのホテルのモーニングですか?』みたいな食事を出された俺は正直驚いていた。
「あ、なんか嫌いなもんあった?」
「え、え、そんなことは!! アキラ、料理めちゃ上手いんだね!! 正直意外!!」
「その程度で上手いと言われましても~。まあ食えよ」
「は、ははぁ! いただかせていただきます!」
両手の手のひらをバチンと音が鳴るほど合わせて食べ始めたアキラは俺の前に座り、何やら俺ががっついてトーストに食いついてるのをしたり顔でガン見してくる。
「な、何?」
「いや、他人に自分の料理食ってもらうの久々でさ、おまえ美味そうに食うから嬉しくて」
出た、『嬉しくて』。
俺の邪推は、昨日の夜からずっと、快感で頭が半分以上飛んでる状態でも発展していっていた。
極々短絡的な推理。三津屋アキラは今まできちんと愛情を確認できる性行為をしたことがなかった、とか。あるいはあえてそれを理解できなかったけど、俺の反応っていうかストーカーぶりが防御壁を瓦解させた、とか、まあ、色々。
「そういや結斗、単語決めた?」
「単語?」
「おーい忘れんなよ。バンド名、三人で一つずつ英単語持ち寄って合体させようって昨日言ったろ?」
「……今言われてなんとなく思い出したけど、そのあと数時間交尾した挙げ句失神した人間にその記憶を想起せよというのは酷ではないでしょうか」
「じゃあ今考えろよ。俺は『REAL』、これを入れたい。形容詞だから、いちばん最初かな?」
ふむ、と、俺は最後に取っておいたブロッコリーを口に含み考えてみた。
タクトが持ってくる単語にもよるけど……
「俺は何か、武器系入れたい」
「武器系?」
「うん、例えば、タイムボムとか、レーザーとか、リボルバーとか」
「へぇ、結構過激なんだな、ユウちゃんてば」
「過激……かもしれない……」
「へ? ジョークで言ったんだけど」
「い、いや、三津屋アキラのストーカーとしては相当過激派だという自覚はあるし——」
「結斗」
アキラは熱のこもった声で言うと、立ち上がって向かいに座る俺の顎をくいっと上げて力強く口づけ、なかなか解放してくれなかった。
「んーんーんんー!!」
流石に直前に食ったものが逆流しそうになったので抵抗の声をあげると、アキラはどこか名残惜しげに俺の顎から手を離した。
「あのさぁ、すっげえ恥ずかしい話していい?」
再び着座したアキラがちょっと遠くを見つめるような表情で言う。
「え、何? 笑い飛ばしていい系?」
「どうだろうな」
「それって俺なんかが聞いていいの?」
「他の誰にも言ってない。おまえになら話せるかなって、昨日から思ってた」
え、ちょ、なんか圧が、圧が来るんだけど。
三津屋アキラが他の誰にも言っていないことを、この俺に?
「俺、交際経験ねえんだわ」
————?
——えっ
——どぇぇええええええ?!?!?!?!
処理速度が! 脳の神経が! 思考回路にふ、不具合が! 深刻なエラーが発生しましたあああああああああああああああああああ!
「俺は好きだと思った奴としてきたけど、なんか求められるものが違うんだよな。上手く言えねえんだけど。で、ああ結局俺はこいつのこと本当に好きじゃなかったんだなって後から悟るタイプでさ。でもおまえは違う。と思う。俺もさ、なんかすげえ恥ずかしかったよ、おまえみたいに、ずっと俺みたいな奴を何年も想ってくれてる人がいるなんて。だからすげえ嬉しかったし、しかもおまえめっちゃかわいいし、感度良好だし、もっと調教したいし、おっと、セックスの話になってる。だから、その、タクトとのバンド活動と同時進行で、そのー」
少し頬が桜色になっている三津屋アキラは、この時ばかりは「聖なる性獣」でも「スーパードラマー」でもなく、ひとりの男・三津屋アキラだった。
「なんつーか、あー、俺の恋人になってください、須賀結斗くん」
俺は死んだ。本気でそう思った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
俺☆彼 [♡♡俺の彼氏が突然エロ玩具のレビューの仕事持ってきて、散々実験台にされまくる件♡♡]
ピンクくらげ
BL
ドエッチな短編エロストーリーが約200話!
ヘタレイケメンマサト(隠れドS)と押弱真面目青年ユウヤ(隠れドM)がおりなすラブイチャドエロコメディ♡
売れないwebライターのマサトがある日、エロ玩具レビューの仕事を受けおってきて、、。押しに弱い敏感ボディのユウヤ君が実験台にされて、どんどんエッチな体験をしちゃいます☆
その他にも、、妄想、凌辱、コスプレ、玩具、媚薬など、全ての性癖を網羅したストーリーが盛り沢山!
****
攻め、天然へたれイケメン
受け、しっかりものだが、押しに弱いかわいこちゃん
な成人済みカップル♡
ストーリー無いんで、頭すっからかんにしてお読み下さい♡
性癖全開でエロをどんどん量産していきます♡
手軽に何度も読みたくなる、愛あるドエロを目指してます☆
pixivランクイン小説が盛り沢山♡
よろしくお願いします。
僕は肉便器 ~皮をめくってなかをさわって~ 【童貞新入社員はこうして開発されました】
ヤミイ
BL
新入社員として、とある企業に就職した僕。希望に胸を膨らませる僕だったが、あろうことか、教育係として目の前に現れたのは、1年前、野外で僕を襲い、官能の淵に引きずり込んだあの男だった。そして始まる、毎日のように夜のオフィスで淫獣に弄ばれる、僕の爛れた日々…。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
爽やか優等生の生徒会長は全校生徒の中出しオナホール
おさかな
BL
とある男子高校の生徒会長、南陽己(みなみはるき)は爽やかで柔和な顔立ちの美少年生徒会長だが、校内では特注のエロ制服を身に纏う全校生徒のためのオナホールだった。
ロックに沼り音に溺れFXXKに堕ちる少年群(旧「ロック音塊中毒少年群」):TBP side
十鳥ゆげ
BL
※拙作「ロックに沼り音に溺れFXXKに堕ちる少年群:RGF side(https://www.alphapolis.co.jp/novel/85032732/586898397)」の続編的な、「TBP side」ですが、どちらを先に読んでも良いように書いております※ニアミスはしております※
悲惨な家庭環境で育った青年、谷津いおい(やつ・いおい)は、今はカルト的人気を誇るバンド、The Blue Print(ざ・ぶるー・ぷりんと)(以下「ブルプリ」)のフロントマンとして多くのファンを持っていた。
いおいは、「男性のミュージシャンと肉体関係を持つと相手の音色が自分の中に入ってくる」という自らの特異体質に気付き、好みの音を見つけると、その美しさで次々と『音を引きずり込んで』いた。
しかし、ひとりだけ、いおいがいくら口説いても乗ってこない男がいた。
「おまえ、演技は上手いけど嘘は下手だね」
そんな風に子供扱いされながらも、いおいはそのミュージシャンと交友を続けていた。
一方で「ブルプリ」のギターを担当する神谷隼士(かみや・しゅんじ)は真剣にいおいを想って身体を重ねていたが、いおい本人は神谷を『ペット』と認識している。
——いくら身体が汚れても、オレの才は汚れない。
そう信じて身体を売って生きてきたいおいは、唯一落とせなかったミュージシャンとどう関係を発展させていくのか? 一方で、そんないおいの一番近くに居る神谷は彼をどう見守るのか——?
◇◆◇
【修正】「第二部でRGF sideと合流」→もうニアミスしとったわ……(思わず地元の言葉が出よった)
音楽用語・バンド用語などが多く、読みにくいかもしれませんが、それらはコメントや何らかの方法でお知らせいただければ修正などの対策を練りたいと考えています。個人的に、物語としてはもう一本の某長編より練ってあるので、是非ご一読を!
そして淫乱ビッチな谷津いおい様カルトをリアルに以下略!!!
潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話
ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。
悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。
本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ!
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる