83 / 84
次期国王の俺が伴侶の故郷に行ってみたら秒で重婚宣言されたんだが
第4話:嵐の前の嵐
しおりを挟む
午前十一時、ウォルズ王室の飛行船発着地には、極々少人数のVIPとセイジュとクロイゼンが揃っていた。
その中には、擬態の魔法でいかつい姿に変装しているオルディン国王(本当の姿は幼女)、美しいエルフの女性に化けている王妃(本当の姿は赤ん坊)もあった。
「クロイゼン、言うまでもないことだが、穏便に、セイジュくんの身の安全を第一に行動せよ。人間の国・フレニアは我々にとって未知の地、一瞬たりとも気を緩めるでないぞ」
「承知しております、父上」
「セイジュさんと外国に行くって、ちょっとしたハネムーン、いえ、里帰りね。ちょっと危険かもしれないけど、楽しんできて欲しいわ」
「ありがとうございます、母上」
クロイゼンが両親と話している間、セイジュはきょろきょろと辺りを見渡していた。
「セイジュくん、どしたの?」
そう声を掛けてきたのは、クロイゼンの幼馴染みにして近衛兵長、超絶混血児のアヴィリードだった。バサバサの黒髪は獣のようで、一見人間に見えるが、半分はゴーレム、四分の一は凄まじい数の両生類や爬虫類で成っている、ほぼ不死身の男だ。
「いえ、アヴィさん、クロイゼンが俺にもひとり護衛をつけるって言ってたんですけど、ぱっと見兵士の方がいらっしゃらないので——」
「え?! セイジュくん知らないの?!」
アヴィが大声で言ったのでセイジュは面食らった。が、アヴィはすぐに『納得』、といった表情を顔に浮かべた。
「あいつ、サプライズ好きだからなぁ。俺も一応乗ってみるか」
セイジュが目をぱちくりさせていると、アヴィはこう切り出した。
「このウォルズ王国は、過去に何度か『大戦』って呼ばれる戦争を経験してるけど、セイジュくんは知ってる?」
「えっと、俺はここに来てまだ六年なんで体験してませんが、確か二十万年前だっけ? それくらいの時に、どっかの国の連合軍が攻めてきて、でもウォルズ側が返り討ちにしたっていう話は聞いたことがあります」
「それは一番最近のやつだね。一番古いものだと二百万年前に天界とやりあったこともある。あとは八十万年前にも、天界とウォルズ含む連合軍で大戦争があった」
「天界……?」
あまりの規模の大きさにセイジュはぽかんとしていたが、アヴィは無視して続けた。
「セイジュくんが知ってる二十万年前の大戦、それから八十年万年前の大戦、この二つは両方オルディン様が国王になってからのものだ。その二度の大戦の時、一番強かったのは誰だと思う?」
「おい、アヴィ」
セイジュが考え始める前に、クロイゼンが寄ってきた。
「ネタばらしくらい俺にやらせろ」
——ネタばらし?
セイジュは極めて不吉な予感を覚えた。
クロイゼンが何かを企んでいる時は、大抵サプライズだし、愛情表現だとしても方向性が若干ねじれていることが多いからだ。
——しゅ、出発前から動悸が……
その中には、擬態の魔法でいかつい姿に変装しているオルディン国王(本当の姿は幼女)、美しいエルフの女性に化けている王妃(本当の姿は赤ん坊)もあった。
「クロイゼン、言うまでもないことだが、穏便に、セイジュくんの身の安全を第一に行動せよ。人間の国・フレニアは我々にとって未知の地、一瞬たりとも気を緩めるでないぞ」
「承知しております、父上」
「セイジュさんと外国に行くって、ちょっとしたハネムーン、いえ、里帰りね。ちょっと危険かもしれないけど、楽しんできて欲しいわ」
「ありがとうございます、母上」
クロイゼンが両親と話している間、セイジュはきょろきょろと辺りを見渡していた。
「セイジュくん、どしたの?」
そう声を掛けてきたのは、クロイゼンの幼馴染みにして近衛兵長、超絶混血児のアヴィリードだった。バサバサの黒髪は獣のようで、一見人間に見えるが、半分はゴーレム、四分の一は凄まじい数の両生類や爬虫類で成っている、ほぼ不死身の男だ。
「いえ、アヴィさん、クロイゼンが俺にもひとり護衛をつけるって言ってたんですけど、ぱっと見兵士の方がいらっしゃらないので——」
「え?! セイジュくん知らないの?!」
アヴィが大声で言ったのでセイジュは面食らった。が、アヴィはすぐに『納得』、といった表情を顔に浮かべた。
「あいつ、サプライズ好きだからなぁ。俺も一応乗ってみるか」
セイジュが目をぱちくりさせていると、アヴィはこう切り出した。
「このウォルズ王国は、過去に何度か『大戦』って呼ばれる戦争を経験してるけど、セイジュくんは知ってる?」
「えっと、俺はここに来てまだ六年なんで体験してませんが、確か二十万年前だっけ? それくらいの時に、どっかの国の連合軍が攻めてきて、でもウォルズ側が返り討ちにしたっていう話は聞いたことがあります」
「それは一番最近のやつだね。一番古いものだと二百万年前に天界とやりあったこともある。あとは八十万年前にも、天界とウォルズ含む連合軍で大戦争があった」
「天界……?」
あまりの規模の大きさにセイジュはぽかんとしていたが、アヴィは無視して続けた。
「セイジュくんが知ってる二十万年前の大戦、それから八十年万年前の大戦、この二つは両方オルディン様が国王になってからのものだ。その二度の大戦の時、一番強かったのは誰だと思う?」
「おい、アヴィ」
セイジュが考え始める前に、クロイゼンが寄ってきた。
「ネタばらしくらい俺にやらせろ」
——ネタばらし?
セイジュは極めて不吉な予感を覚えた。
クロイゼンが何かを企んでいる時は、大抵サプライズだし、愛情表現だとしても方向性が若干ねじれていることが多いからだ。
——しゅ、出発前から動悸が……
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる