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次期国王の俺が伴侶の故郷に行ってみたら秒で重婚宣言されたんだが
第2話:暴れん坊セイジュ
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「セ、セイジュさま! そのような汚い雑巾で窓拭きなどおやめください!! それは我々使用人の仕事で——」
「え、やっちゃダメなんですか? 自分の部屋なのに? 俺は農村の出身ですからこういった作業には慣れていますし、これくらいは自分でできます。わざわざミレヌさんたちの労力を割いてもらうのももったいないですよ」
近々故郷に帰れると決まってから、セイジュは落ち着かないのか片付けや掃除など、王城の家事に精を出しだした。
ミレヌと呼ばれた初老の男性と部屋に数名いた他の使用人、そしてドアから様子を伺っていた使用人たちはセイジュのこの言葉に心を打たれた。
打たれたというより、むしろ泣いたり鼻血を出したり奇声ををあげたりしていた。
——何あのご主人様マジ神!!
——いまだかつて我々使用人にあんなにお優しい方はいなかったわ!
——なんて尊い存在なの?! セイジュさまはアイドルよ!!
——ファンクラブを結成しよう! 有事の際は我々がセイジュさまをお守りするんだ!
廊下から聞こえてくるそんな声にセイジュは、
——俺、なんか変なこと言ったかなあ?
と首をひねっていた。
「セイジュさま」
冷静な声で語りかけてきたのは執事長のミレヌだった。
「お気持ちは有り難いのですが、セイジュさまは近日中に人間の国に発たれる身、今ここで体力を落としてしまっては、万が一ですが体調不良などで里帰りができなくなる可能性がございます」
「えっ! それは困る!!」
「はい、ですから今すぐ雑巾をこちらに。奥のバスルームで身を清め、ゆっくりとお身体を暖めてくださいませんか? これは執事長であるわたくしミレヌと、全ての王宮勤めの者からの嘆願でございます」
「んー、分かりました、ミレヌさん! 俺、シャワー行ってきます!」
セイジュはそれでも興奮が収まらないのか、別の使用人から着替えを受け取りスキップでもしそうな勢いで部屋の奥に消えた。
「流石ですね、ミレヌ執事長!」
エルフの使用人が残されたミレヌにそう声をかけた。
「セイジュさまはかなりその、お優しいのですが頑固と申しますが、意思がお強いですからね、我々では掃除やら片付けやらを止められなかったと思います」
他の使用人からも尊敬の眼差しを受けながら、執事長ミレヌは軽く肩をすくめた。
「私は古株なだけですよ。オルディン国王やクロイゼン王子も、僭越ながら私がお世話に関わらせていただきましたからね。さて皆さん、セイジュさまが戻られてもなるべく安静にされるよう、作戦でも練りましょうか」
細い眼でそう言って歩き出したミレヌに対し、その場にいた全ての使用人が、
——お世話の方向性が違う……
と内心で突っ込んだが、それもむべなるかな、なのである。
「え、やっちゃダメなんですか? 自分の部屋なのに? 俺は農村の出身ですからこういった作業には慣れていますし、これくらいは自分でできます。わざわざミレヌさんたちの労力を割いてもらうのももったいないですよ」
近々故郷に帰れると決まってから、セイジュは落ち着かないのか片付けや掃除など、王城の家事に精を出しだした。
ミレヌと呼ばれた初老の男性と部屋に数名いた他の使用人、そしてドアから様子を伺っていた使用人たちはセイジュのこの言葉に心を打たれた。
打たれたというより、むしろ泣いたり鼻血を出したり奇声ををあげたりしていた。
——何あのご主人様マジ神!!
——いまだかつて我々使用人にあんなにお優しい方はいなかったわ!
——なんて尊い存在なの?! セイジュさまはアイドルよ!!
——ファンクラブを結成しよう! 有事の際は我々がセイジュさまをお守りするんだ!
廊下から聞こえてくるそんな声にセイジュは、
——俺、なんか変なこと言ったかなあ?
と首をひねっていた。
「セイジュさま」
冷静な声で語りかけてきたのは執事長のミレヌだった。
「お気持ちは有り難いのですが、セイジュさまは近日中に人間の国に発たれる身、今ここで体力を落としてしまっては、万が一ですが体調不良などで里帰りができなくなる可能性がございます」
「えっ! それは困る!!」
「はい、ですから今すぐ雑巾をこちらに。奥のバスルームで身を清め、ゆっくりとお身体を暖めてくださいませんか? これは執事長であるわたくしミレヌと、全ての王宮勤めの者からの嘆願でございます」
「んー、分かりました、ミレヌさん! 俺、シャワー行ってきます!」
セイジュはそれでも興奮が収まらないのか、別の使用人から着替えを受け取りスキップでもしそうな勢いで部屋の奥に消えた。
「流石ですね、ミレヌ執事長!」
エルフの使用人が残されたミレヌにそう声をかけた。
「セイジュさまはかなりその、お優しいのですが頑固と申しますが、意思がお強いですからね、我々では掃除やら片付けやらを止められなかったと思います」
他の使用人からも尊敬の眼差しを受けながら、執事長ミレヌは軽く肩をすくめた。
「私は古株なだけですよ。オルディン国王やクロイゼン王子も、僭越ながら私がお世話に関わらせていただきましたからね。さて皆さん、セイジュさまが戻られてもなるべく安静にされるよう、作戦でも練りましょうか」
細い眼でそう言って歩き出したミレヌに対し、その場にいた全ての使用人が、
——お世話の方向性が違う……
と内心で突っ込んだが、それもむべなるかな、なのである。
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